悪は罪無き者の肩に
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「自分の未来を見てはならない」。それが、私が生まれ育った村の戒律である。
私の生まれた村は、所謂「占術師」の村だ。
占術――要するに占いだが、この村のそれが持つ精度はは最早未来予知と言っても差し支えない。
代々受け継がれて来たその技を求め、時には政財界の大物さえ訪れる秘境――それが、この村だ。
私も技を受け継ぐ後継者の一人として、日々修行を積んで来た。その中でいつも口酸っぱく言い聞かせられたのが「自分の未来を見てはならない」ということである。
その理由は、聞いても教えて貰えなかった。ただ「駄目だ」と言うばかりで、明確な理由を教えて貰ったことはない。
そんな言い聞かせをされ続け、村への不満が溜まっていたせいだろうか。私は好奇心に負け、自分の未来を占ってしまったのだ。
……そこで見たものは、酷く残酷なものだった。
燃え上がる炎と、上がる血飛沫。無数の死が溢れるその最中で、楽しげに笑う声が幾つか。
私は笑う声の中に居て……その身体は幾人かの友人達と共に、欲望の捌け口とされていた。
あまりに凄惨なその光景に自失していた私は、母の声で意識を取り戻す。私は自分の行いが村の禁であることも忘れ、咄嗟に母へと詰め寄った。
母は怒ることもなく、ただ「見てしまったのか」と憐れむような視線を私に向け――そして、静かにぽつぽつと事情を語り始める。
私達はかつて、遠い国で起きた「魔女狩り」の生き残りなのだと言う。仲間達の多くが私の見た未来と同じ目に逢い、死んでいくのを見捨てて逃げた何人かの末裔なのだと。
遠くない未来、この地でも同じことが起きる。私達は彼女らを見捨てた罪を背負い、そこで死ぬべきなのだ。
だから、自身の未来を見ることを禁とした。未来を知った若者が、責任を逃れようとしないように――それが、母の主張だった。
その言葉に対し、私は慟哭にも近い声で返答する。
「――――ふざけるな!!」
私達に罪は無い。無論、逃げた人達にも。
罪があるのは常に「奪う者」の方で、「奪われた者」が背負うべき罪などない――私は、母にそう怒鳴って一人家を飛び出した。
きっと、今話しても通じない。私の言葉は彼女らの、生き残った罪悪感に押し潰されてしまうだろう。
私は森の中に潜み、一人計画を練り始めた。
皆を、残酷な未来から――そして何より、悲痛な罪悪感から救い出す為の。




