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そこに祝福は存在せず

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 私が生まれて初めて聞いた声は、誕生を祝福するものではなく――狂気に満ちた、悲鳴であった。

 

 私という赤子の容貌は、本来生まれて来るべき種族のものとは大きく異なっていたらしい。

 薄橙色と淡い桃色の肌を持ち、顔には瞳が二つと口が一つ、そして鼻が一つに穴二つ。耳が二つに腕二本、そして足も同じく二本――両親の姿を見る限り、私が本来生まれて来るべき形はそういうもののようだった。


 だとすれば、確かに私は異形だろう。

 顔には四つの眼球を持ち、口腔部が両頬に一つずつ孔を空けている。肌は骸骨と見紛う程に白く、本来の倍生えた四肢からはそれぞれに烏賊のような触手がでろりと伸びていた。


 本来見えぬ筈の己の姿を正しく知覚していたことも、恐らくは異形の一つに入るだろう。どこから見ているのかは己自身でさえ不明だが、私は確かに己の姿を何処からか俯瞰していたのだから。


 分娩室(と言うらしい)場所には、未だ阿鼻叫喚が響いている。無感情にそれをぼうと聞き続けていると、不意に発狂していた医者の一人が銀に輝く刃を持った。

 

 ――――何故、生まれるまで気付けなかったのか。

 これは、奇形児どころの話では無い。彼らは紛れも無い人の子で、誕生を祝福されるべきものだが――こいつは、こいつだけは生まれるべきでは無かった――――


 医者は凡そ、このようなことを口にしていたと思う。

 そうして、振り下ろされた刃――私はそれを触手で容易く受け止め、逆に医者の額に突き立てた。


 直後、悲鳴は更に大きくなる。いい加減その声も耳障りになってきたので、私はその場の全てを殺した。


 そうして、しんと周りが静かになる。死を思わせるその静寂は、奇妙な程に心地が良かった。

 私は亡骸達を一瞥してから、折れそうになる首を触手で支えつつ外に足を踏み出した。


 道中、邪魔なものは全て殺した。同じ場で生まれた兄弟達も、それを守った大人達も。

 私は何で、これからどこへ向かうのだろう。詳しいことは何一つ分かっていないが、確かなことが一つある。


 ――――私は、殺す為に生まれた化物だ――――

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