表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/24

第1章3.一ヶ月

短期大学の子達2人が合流して、もうすぐ1ヶ月になる。


物怖じしない性格の二宮は、すぐに打ち解けたし、林は・・少し戸惑っていたよう

だったけど、小さいもの好きの那智にあっという間に皆の真ん中に引きずっていかれ、

それ以来、いつのまにか輪の中心にいる。そんな感じになっていた。


2人とも、軽い感じではなく、これだけ揃ってるイケメン(自分で言うなって?

でも周りの評価なんだから仕方ない)に、媚びるようなところは見せなかった。


那智たち3人以外では、どちらかというと「女」の嫌な面をずっと見てきた

俺としては、これは嬉しい誤算だった。

いや、嬉しいというか・・とにかくほっとした。

大学の中でも、かなりの気に入りの場所であるこの部屋の居心地が悪くなったのでは

たまったものではないからだ。


ただ・・・


「さ。じゃあ。今日は何見る?」

二宮の隣を陣取って、啓介が明るい声を出す。


これが問題だ。


別に、何を見るかが問題なんじゃない。好みのジャンルはあるけど、別にホラーが

苦手だとか、外国のコメディ映画は解せない。とかそんなのは無い。


座る場所が問題だ。


比較的豪華な設備が備えられているこの部屋は、大型のスクリーンを半円で囲むように

2~3人がけのソファがいくつか置かれている。


恋人同士である3組は、勿論それぞれ一緒に座るが、遺された俺と啓介は今まで

1人でひとつのソファを悠々と使っていた。


それが今では・・・二宮が目的で2人をこのサークルに引きずり込んだ啓介は、

最初林と一緒に座ろうとしていた二宮と、「柊とじゃ、ソファが狭い!」と

文句を言い、男女のペアで座るよう言い出したのだ。

勿論、『部長命令』だ。


そうなると必然的に俺の隣には・・・林だ。


まぁ、啓介がそう言い出すのは予想してたから、やっぱりな。という感じで、

小さくため息をついた。

すると・・・

「すみません」

申し訳なさそうに、隣にいる林が謝ってきた。少し強張った表情をしている。

あ、ため息、聞こえたかな・・。

「いや、そーゆー意味じゃなくて」


すると、不思議そうに俺の目を見てくる。


そういえば、コイツとまともに目を合わせたのは初めてかもしれない。


丸い目で、じっと見てる。


なんだか、少し落ち着かない気分になってきた。

とにかく、ちゃんと説明しなきゃ。


「あ・・啓介が、二宮狙いだって分かるからさ。そう言い出すだろうなって

思ってたんだよ。だから、林がここ座るだろうなって、思ってたんだ。

実際そうなったから、単純な啓介が可笑しかっただけ」


「そうですか。」


納得したのか、林は俺からすっと視線をはずした。


なんだか・・少し寂しい気がした。

なぜか分からないけれど、さっき少し嫌な思いをさせただろう、そんな空気も

変えたい、そしてもう一度丸い目をこっちに向けさせたいような、そんな感覚になった。

周りは何を見ようか少し騒がしい位に盛り上がってる中、林の沈黙が苦しくて

なんでも良いから話して欲しいと、気がついたら林に問いかけていた。

「サークル・・2人でって珍しいね」


「えっ?」


丸い目が、もう一度こちらを向く。


自分の方にまた意識を向けてくれた事に、なぜだか少し満足を覚える。


林は、皆の輪の中にいても、どこか一線を引いてるというか、そんなところがあった。

何かと自分をアピールしてくるような女ばかり見てきた俺には、初めて見るタイプの

女だった。

二宮も、決して媚びたり自分に注目させる為にわざと大きな声で語尾をのばして

話すとか、そんな事をするタイプではなかったが、それでも自分の主張ははっきりし、

良い意味で印象に残る女性だった。


「サークルは・・入ってなかったです」


林って、なんでちょっと引いた感じを受けるんだろう?

その事が急に気になって、考えていたところに、これまた意外な答えが返ってきた。


「え?啓介が、短大側のサークルと合併するって話だったんだけど?」


「・・・いえ。輝ちゃんがよくレディースデーの水曜日に映画に行ってたんです。

啓介先輩が、それを知って誘ったんだと思います」


「あー・・・そうなんだ」


ここでも啓介にやられた!

こんな理由でもつけない限り、きっと大学側でも入会希望が出ただろうしな。

でもこれで2人だけがここにやって来た理由がわかった。


「林は?」


「え?」


「二宮は水曜日によく映画に行ってたんだろう?それは分かったけど、林は?

なんでここに来る羽目に?あんま、来たかったって感じにも見えなかったけど?」



「・・・・・・・・わ、私は・・」


戸惑いながら林が口を開いた時、



「よしっ、決まった。じゃ、建人、カーテン閉めてくれよ」


啓介の言葉で、会話が途切れた。


どこか、ほっとしたように見える林。



そうだ・・コイツ、全然自分の話をしないんだ。



ふとそこに気付いてしまった俺は、実は結構前からコイツが気になっていたのかも

しれない。

でも、この時はそんな事までは気付けなかった。


ただ、だから一線引いた感じに見えんのかなぁって、それだけだった。


林が隣に座って映画を見て、その後お茶しながら皆と雑談するようになって1ヶ月。

林が隣に居る事が、嫌というよりむしろ『しっくり』してる事は、大した問題じゃ

ないと思ってた

マシュマロ、侵略開始。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ