第1章2.第一印象
「で?親睦会とか言ってた当の本人はドコ行った?」
短期学部の子達が合流する事になったため、急遽行う事になった親睦会だが、
メンバーを増やす事も、親睦会の事も、部長の権限でゴリ押しした部長である
啓介がいない。
「啓ちゃんなら、短期学部の校舎に迎えに行ったわ」
サークルのメンバーの1人、建人の彼女である、那智が
面白い事になりそうだ。といわんばかりの笑顔で言う。
「・・オマエなぁ、面白がってるだろ」
「あたしだけじゃないわよ。全員ね。あー、アンタは嫌そうね。
啓介の変わりようがさ、原因が何かなぁってね。楽しみじゃない」
「あぁ・・。向こうの部長がタイプらしい」
「へぇ!!益々楽しみ♪」
あ~俺は楽しみじゃねぇ!ここは癒しの空間だったのに・・。一体どんな
ヤツらに、この空間を壊されるのか・・・。
その時、廊下から啓介のやけに明るい声が聞こえてきた。
「輝美ちゃん、コッチだよ。サークル棟で一番広い部屋なんだ。
設備も色々揃ってるから、過ごしやすいと思うよ」
どうやら、啓介の思い人は「てるみ」というらしい。
「じゃあ、皆を紹介するからね」
部屋のドアが開けられた。
「お邪魔しまーす」
ん???ふたり?
たった、2人?
しかも、2人ともやけに化粧気がなく、予想外だった。
そうだ、俺の予想では、きゃーきゃー煩い、あほっぽい軽い派手な、いかにも
「ジョシダイセー」な感じの子達がわんさか来るんだと思ってた。
一気に気が抜ける。
「あら?短期学部の映画サークルって、2人だけなの?」
「うん、まーそういうこと」
那智の質問に、啓介が答える。
「少人数だし、馴染みやすいだろ。もっと早く馴染むには~~紹介しなきゃな!」
コイツ・・この張り切りようは・・・。
どっちだろう。啓介の思い人「てるみちゃん」は。
1人は・・身長163cmくらいか?少し襟足の長い栗色のショートヘアだ。
化粧は薄いが、目鼻立ちがはっきりした、爽やかな感じのボーイッシュな美人だ。
うん、コッチだな。
悪いけど、もう1人は・・白くて丸くて小さい。顔立ちも、目は二重だけど大きくもない。
鼻も口もこじんまりしてて・・・なんというか・・・・うん。とにかく白くて
丸くて小さい。
ぬいぐるみのウサギみたいだ。
そう考えてる間、啓介は皆を紹介していた。
「左から、体格のいい短髪が建人で、170のデカ女が那智。建人の彼女。
で、眼鏡が智也で、ガイジンみたいな顔が沙羅。智也の彼女ね。
あ、日本語大丈夫だよ。ハーフなんだ。
で、一重の鋭い目してる黒髪ストレートが東で、これまた黒髪ストレートが
東の彼女の舞。
で、黒髪の天パでやけにキレーな顔してるのが柊。ここの副部長。
で、俺が部長の斎賀啓介。智也と眼鏡キャラかぶってるけど、俺は色素薄いから
眼も髪も茶色。
ウチはこんな感じかな?」
と、一気に8人を覚えなければならない2人に、外見の特徴を言いつつ分かりやすく
紹介する。
「あたしは二宮輝美です。皆にはてるちゃんって呼ばれてます。皆さん先輩ですよね?
てるちゃんって呼んでください」
やっぱり。ボーイッシュな方がハキハキと自己紹介する。
皆口々に「よろしくーー」なんて言ってる。
「林美羽です。名字から“りん”って呼ばれます」
それだけ言ってウサギはぺこりと頭を下げた。
なぜか女性陣に囲まれ、「りんちゃんよろしくねー!」と、なでたり抱きしめられたり
している。
あー何かに似てるなー。なんだっけ。
「やーーん!ふにふにしてる~♪」と、那智が彼女のほっぺたをむにむに触りだした。
いきなりの親しげなスキンシップに、彼女は固まってしまっている。
「色白いし、マシュマロみたい~!」
あぁ、そうだ!マシュマロだ。