表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/24

第2章5.変化への戸惑い side美羽

美羽視点です。

あれは、台湾から帰国した日。


あたしを抱きしめた力強い腕。

自分のモノではないぬくもりと、息遣いと、あの人の香りと、そしてそれに

混じって少しのお酒の匂いを感じた。




--------------------------------------------------------




台湾に行ったのは、お兄ちゃんの事故の知らせが入ったから。

両親を小さな頃に亡くしているあたしにとって、お兄ちゃんはかけがえのない

存在だったから、ずっとお兄ちゃんの傍にいる覚悟で、日本を飛び出した。



短大に入学して、初めて親友と呼べる友達が出来た。

それまでは、お兄ちゃんと較べられたり、お兄ちゃん目当てであたしに近づこうと

する女の子や、その子を好きな男の子がうまくいかない事をあたしに八つ当たり

したりしたので、

同年代の子との交流に、あたしは心を閉ざすようになった。

それを、お兄ちゃんに話そうとは思わなかった。

だって、あたしにとってもお兄ちゃんは特別だったから。


較べられて悔しかったけれど、お兄ちゃんの妹である事が誇らしかったから。

そんな子達よりも、ずっとずっとお兄ちゃんが大事だったから、あたしは

無理に友達を作ろうとしなくなった。



だから、入学早々、屈託無くあたしに話し掛け、最近有名になったお兄ちゃんの

事を知っても、態度が変わらない輝ちゃんの存在は、驚いたし嬉しかった。

初めて、学校帰りの寄り道が楽しいと思った。


それでも、やっぱりお兄ちゃんは特別な存在だった。

だから、楽しい学生生活を捨ててでも、お兄ちゃんの元に行こうと決めた。


あの頃、あたしはまだ自分の話がうまく出来なかった。

それまで、あたしの事に興味を持ってくれる存在は夏美叔母さんとお兄ちゃん位。

「トモダチ」に自分に興味を持たれるなんて、初めてだったから何を話せば

良いか分からず、輝ちゃんと親しくなってからも専ら聞き役だった。


輝ちゃんにも、日本を発つ事をうまく話す事が出来なかった。


あの時、本気で怒ってくれて、本気でぶつかってきてくれて、本気で心配してくれて、

輝ちゃんに、今までの話をいっぱいした。泣きながら、今まで胸に溜めてきた

事をいっぱいいっぱい話したんだ。




でも





このキモチは、どう話したらいいかわからない・・・。


あの日、帰国した日の夜の出来事を。



なんで、彼はここに来たんだろう?

なんで、あんなに焦ってたんだろう?


・・・なんで、あたしを抱きしめたんだろう?


なんで、手の平にキスしたんだろう?



なんで、なんで好きだなんて言ったんだろう?



「もしかしたら」なんて考えたくない。

そんなの、違う。あり得ない。だって、香月さんには大人っぽい綺麗でお金持ちの

彼女が居る。

送別会の日に、「柊はあたしと一緒に過ごすから、そっちには行かないわ」

そう、伝えに来たあの人が。

「あなたの送別会だから行った方がいいって、言ったのよ?でも、彼は行きたくないって言ったのよ、なら仕方ないわよね?」

そう、彼女は言ったのだ。

香月さんに嫌われてる事は知ってた。部室を追い出された日も、すぐに誤解は

解けたけれど、でもあの時、香月さんはあたしを汚いモノでも見るような目で

見てた。



胸がぎゅうっと痛くなる。


そんな目で見られるのなんて、慣れてるはずなのに。

なんで思い出しただけで苦しくなるんだろう。


香月さんとは、あのギクシャクした状態のままで別れた。


だから、だからあの日の夜の事が信じられないのだ。


少し香ったお酒の匂い。


きっと、酔っ払ってるんだと思った。



でもあれから香月さんの行動が何だか変だ。


電話やメールがよく来るようになった。

聞いても特に用事があるわけでは無い。居場所や何をしてるか聞かれるだけだった。

まるでお兄ちゃんみたいだ。


でも、当たり前だけど彼はお兄ちゃんなんかでは無くって。



考えすぎて・・・熱が出た。



1人でベッドで眠っていると、枕元で携帯が振動し、着信を知らせた。


画面を見ると、『香月さん』という文字が見えた。



ど、どうしよう!?どうしよう!?


焦って通話ボタンを押す。


「も、もしもし」


どうしよう、なんか声が裏返ってる気がする。


「今、どこに居る?」


「家です」


「今から会えるか?」


ええ!?ど、どうしよう・・。


「何かあったんですか?」


「少し話がしたくて」


熱が出て寝てるなんて言うのも何か言いにくいし・・


「あ。じゃあ、もうパジャマなんでこのまま電話でお願いします」


「そっか・・・長くなりそうだから、今日はいいよ。」


「あ、そうですか。じゃあおやすみなさい」


?やっぱり、わからない・・。


「ちょっと待って!もしもし??」

「あ、はい??」

「次、いつ会える?」

「え?」

「会いたいんだ」


一気に顔が熱くなった気がした。


「えぇっと・・・あ!再来週の火曜日なら」


香月さんは「そんなに先!?」とか言ってたけど・・・・

なんで・・なんで、会いたいんだろう??

わからない事だらけで、頭から湯気が出そう。


その後、タイミングよくかかってきたお兄ちゃんからの電話に、思わず

「お兄ちゃん~~~!」と泣いてしまった。


「どうした!?美羽、辛いのか??」


お兄ちゃんは声だけで分かるくらい、慌てていた。

そりゃいきなり泣き出したら慌てるよね。でもその時は、本当に、キモチが

ぐしゃぐしゃで、熱くて苦しかったんだ。


「仕事終わったんだ。もう少ししてから帰ろうと思ってたけど、後処理したら

すぐ帰るから!待ってろ。な?」


そう言って、それからもあたしが落ち着くまで沢山色んな話をしてくれたお兄ちゃん。

やっぱり優しいなぁ。あたしにとっては、お兄ちゃんはいつまで経っても

パパでもありママでもある、本当に特別な存在だ。

少ししたら、すっかり落ち着いて眠る事が出来た。


まさか、数日後に本当に完全帰国するとは思っていなかったけれど・・。






ちょっとは意識し始めてる・・・らしい!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ