第1章13.アルコールの仕業
やっと、美羽が笑ってくれて部屋の空気が少し明るくなった。
本当は・・本当は、すぐにでも美羽の全部を自分のモノにしたかったが、
かなり苦しい選択だったが、なによりも欲しいモノは美羽の心だったから
長期戦でいくしかないと思った。
俺ってこんなタイプじゃなかったのに・・。
思わず苦笑する。
そこに、どどどどどん!と大きなノックがあり、鍵のかかっていなかった
扉が背後で勢いよく開いた。
「りんっ!」
現れたのは啓介と二宮だった。
「てるちゃんっ!」
俺には見せた事のない満面の笑みで、二宮と抱き合う美羽。
えっ俺にはあんなに積極的に手を回してくれなかったのに・・。
二宮にでさえ、嫉妬してしまう。
俺、こんなんで長期戦でいけるのかな・・・。
そこからは、二宮の質問攻めが始まった。
なんと、美羽の兄は最近海外で注目されている若手インテリアデザイナーの
UMIだという。モデル並みの容姿で、女性にもファンが多い。
「え?じゃあ、お兄さんの名前は“はやし うみ”っていうのか?」
「うん。羽の海って書いて“うみ”って読むの。であたしが“みう”だから
なんか冗談みたいな兄妹だよね」
て事は!以前この部屋で見た『はやし うみ さま』っていうあの手紙は
間違いじゃなかったのか!!
あそこで疑問に思ってたら、もっと早く美羽を会えたかもしれないのに・・・。
お兄さんは、怪我も治り仕事に復帰する事になったので、美羽だけ帰ってきたのだという。
でも、かなりのシスコンだと言うお兄さんは、なかなか美羽を帰してくれなかったんだとか・・。
これからはアルバイトを探すつもりだという美羽に、啓介がサークルには顔を
出すように、気の利いた事を言ってくれ、用事の無い水曜日は必ず行くと
約束させられていた。
それ以外にも、俺とは個人的に会って欲しいけど・・まずは今日みたいに啓介や
二宮にじゃなく、まず俺に連絡してくれるように、俺を信用してもらわなきゃな。
そう頭の中で、これからの俺と美羽の事を計画していた俺をよそに、帰国祝いを
サークル仲間でしよう!という話になっていた。
「でも・・皆さん、忙しいでしょう?」
また小龍包みたいな感じになった美羽が、申し訳無さそうに言う。
どうやら困ったり戸惑っている時に、少し頬を膨らませ口を引き締め、
眉間にシワを寄せるみたいだ。
また小龍包みたいだって言ったら今度は怒るかな。俺にはそれさえも愛しいんだけど。
美羽は皆が自分の為に集まる事を心配してるけど、皆美羽が帰ってくる事を楽しみに
待っていたから、全員喜んで集まるだろうけど。
美羽はそこまで好かれていると思ってはいないようだ。
それを二宮が上手に説明し、美羽を納得させ(少々無理矢理ではあったけど)
次の水曜日にサークル棟に来る事になった。
「じゃあ、そろそろ帰るわ。もう遅いし。また連絡するからね」
俺はかなり名残惜しかったが、さすがに、美羽も疲れが出たのか、小さな欠伸が
出たのでしぶしぶ切り上げる事にした。
部屋を出てドアが閉まりそうになったその時。
「香月さん、酔ってるみたいだから、気をつけてね」
美羽の心配そうな声の後に、ドアが閉まり、カチャリと鍵のかかる音がした。
え!?確かに・・ここに来る前ちょっと飲んだけど・・
もしかして、全部酒の所為にされた!?!?
ここから、想像以上の彼女のニブさに翻弄される事になる。
今日は、ほんの幕開けのようなもんだった--------------------。
超絶ニブニブな天然ちゃんを書いてみたかった。
決死の告白で、1章は一応終わりです。
さて。次は片想いに苦しむ2章。の、予定。