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7.引継ぎ中の危機

タクマ編


 次の日、予定通り新たな担当階層の引き継ぎを行うために、田中主任とダンジョンを訪れていた。


 「田中主任、今日はよろしくお願いします」

 「うん、こちらこそよろしくね」


 今回引継ぎを担当してくれる田中主任と挨拶を交わす。

 僕よりも年齢は少し下だが、新卒で入社した冒険者歴10年以上の叩き上げのため、冒険者としては遥かに先輩にあたる。


 「今日からは地下3階層に行くよ。何日か一緒に潜ってみて石動さんが慣れてくれたらシフトに組み込んで本格的に担当してもらうから」



 地下3階層は今まで担当していた地下1階層とは違い、スライム以外のモンスターも出現するため難易度はいくらか上がる。


 しかし、その分会社が主力で扱う薬草や鉱石も採取可能なため、そこを担当するということは会社からある程度の信頼を得ているということを表す。

 

 2人はそれぞれの装備品を確認し、地下3階層へ向かう。

 途中にスライムが何匹か出現したが2人で手際良く処理し、魔石は田中主任、【マジカ】は僕のアイテムボックスに入れた。


 そうこうしている内にすぐに地下3階層に到着する。


 「それじゃあ今から採取ポイントに向かおうか。あっ、先に言っとくけどこの階層には立入禁止区域があるから、絶対に入らないように。場所は後で詳しく教えるけど、僕の後ろについて来てくれたらまず大丈夫だから」


 他にもいくつか注意事項を確認した後に採取ポイントへ向かう。

 この階層で採取可能なのは【赤蛍石】【緑仙草】とそれぞれ人々の生活品に加工される原材料で、花菱商事の扱う商品の中でも使用量はかなりの割合を誇る。


 また、出現するモンスターから取れる魔石はスライムの魔石よりも大きく、質も良いため価値も高い。

 田中主任ほどのベテランが担当していたことからもこの階層を担当するということの重要性がわかるだろう。


 「田中主任は次はどちらの階層を担当されるんですか?」

 「ああ、僕は次は地下6階層かな?白井課長から引き継ぐ予定だよ」

 「地下6階層ですか!?すごいなぁ、大出世じゃないですか!ひょっとして昇進なんてしちゃったりなんかして?」

 「まあ一応係長の内示を受けてるかな。来月の人事異動で発表されるみたいだね」


 この【水晶の洞窟】は地下7階が最深部だ。

 地下7階はボスフロアのため、事実上地下6階層が採取可能なフロアでは最下層となる。

 その地下6階層を任されるということは会社から絶大な信頼を寄せられているということだ。


 地下6階層で採取可能な【金剛石】や【翠硝花】は最先端の半導体や宇宙事業にまで使用されているとても希少な原材料だ。

 当然、取引価格も莫大な額になるため、代々エース級の冒険者が担当してきた。

 現に前任の白井課長は会社に所属する中でトップクラスの実績と実力を誇る実力者として有名だった。


 重要な役割りを任されるということはそれだけ収入も上がる。

  

 ……いつか僕もそんな重要な場所を任されたいな。


 家族を養うためいつか自分も出世し、高収入を得ようと心に誓うのだった。


 その後、順調に採取ポイントを回り引き継ぎを済ませていく2人。

 

 【赤蛍石】や【緑仙草】もノルマ分採取し、一度帰社しようかと話していたその時、視界の端に何やら金色の物体が見えた。


 ……ん?あれはまさか!?【ゴールデンスライム】!?


 【ゴールデンスライム】とは、ダンジョンに極々稀に出現すると言われている幻のモンスターだ。

 滅多に遭遇できない超希少モンスターで、倒せば大量の経験値と黄金の魔石を入手出来ると言われている。

 この黄金の魔石は、あらゆる分野の産業に莫大なエネルギーをもたらすため、世界中の企業が血眼になって探している。

 またその【マジカ】はその数の少なさから世界中のプレイヤーやコレクターが欲しているため、1枚数百万円で取引されることも珍しくない。


 あいつを倒せば……家族は安泰だ!

 一心不乱に駆け出し、いつしかその足は立入禁止区域に向かっていた。


 「そっちは駄目だ!止まるんだぁ!」


 田中主任が必死に叫ぶが、耳には届かない。

 制止の声を無視しながら立入禁止区域のラインを越えてしまう。

 そしてとうとう金色の光を放つスライムに追い付いた。


 やっぱり【ゴールデンスライム】だ!これで……!


 必死の形相でダガーナイフを振り上げた瞬間……


 脆くなっていたであろう足場を踏み抜いてしまい地面が崩落してしまった。


 ……しまった!


 僕は【ゴールデンスライム】諸共、奈落の底へ落下を始めてしまった。

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