6.石動家の食卓
タクマ編
あの後、順調に残りのノルマ分の薬草を採取した後、会社に戻っていた。
「お疲れ様、本日分のノルマ達成ですね。もうかなり慣れたんじゃないんですか?」
採取した薬草や魔石を入庫し報告を終えた僕に事務の女性が声を労いの言葉を掛けてくれた。
さっきも言った通り、僕はこの【株式会社 花菱商事】に入社して半年ほどになる。
元々違う業種で働いていたが、前にいた会社が倒産してしまい転職したのだ。
この会社に入社するまで戦闘などしたことが無かった僕だったが、家族を養うために冒険者の職を選んだというわけだ。
「いやいや、僕なんてまだまだですよ。入社して半年、まだ研修期間も終えてない初心者ですから」
「そうかなぁ、石動さん真面目だし筋も良いから直ぐに出世できそうだけどな……あっ、そういえば松本課長が呼んでましたよ?」
「松本課長が?一体何の用だろう?」
……何かやらかしたことあったかな?
首を傾げながら課長の席へ向かう。
「ああ、ご苦労様。石動君もここに来て半年か、だいぶ慣れてきてくれたみたいで何よりだよ」
「ありがとうございます。皆さんのおかげで何とか頑張れてます」
「今日来てもらったのは、そろそろ研修期間も終わりにしてもっと先の階層も担当してもらおうかと思っていてね」
「本当ですか?ありがとうございます!是非よろしくお願いします!」
階層が深くなれば出現する採取出来る薬草や鉱石も増える。
当然、モンスターも強くなり危険度は増すがその分収入も増える。
家族を養うために冒険者に転職した僕にとっては願ってもない話だった。
「早速明日から担当階層の引き継ぎに田中主任と向かってもらうからね。今日は早めに帰って明日に備えると良い」
「はい、わかりました!それでは今日は失礼します!」
業務を全て終えた後は帰宅の途に着いた。
家では愛する家族が待っている。
「おかえりなさい!ねえねえ新しいカードはゲット出来た!?」
家に帰った瞬間に息子が目を輝かせながら玄関まで走ってくる。
一人息子のヤマトだ。
今は小学校6年生、最近は【マジカ】のバトルにどっぷりとはまってしまっている。
「ただいま。今日はこんなカードを手に入れたぞ」
今日の仕事でゲットしたばかりの【超粘体化】のカードを見せる。
「やった!レアカードだ!父ちゃんありがとう!ねえねえ母ちゃん見て見て!」
ヤマトが満面の笑みでカードを受け取る。
この笑顔を見る度に疲れが吹き飛ぶ。
この仕事をやっていて良かったと思える瞬間だった。
「あらあら良かったわねぇ。お疲れ様あなた。先にお風呂に入っちゃったら?準備出来てるわよ?」
「ああ、そうだね。汗もかいたし先にお風呂に入ってこようかな」
妻のカズハに促されるまま、お風呂に入り1日の疲れを癒す。
「ふおおおお!最高の湯加減だな全く!」
ダンジョン労働での疲れが癒されていくのを実感する。
サラリーマン冒険者をやってて最高の瞬間の1つだ。
お風呂から上がると食事の支度がされていた。
「ふー、生き返ったな。おっ、今日は唐揚げか。美味しそうだな」
「私がお母さんと一緒に作ったんだから美味しいに決まってるでしょ?」
娘のイズミだ。
最近生意気盛りの小学校4年生だ。
我が家は僕、カズハ、ヤマト、イズミの4人家族となっている。
これから何かと入り用になるため、少しでも収入を増やそうと冒険者になったのだ。
「ところで母さん、今度別の階層を担当することになったよ、明日から引き継ぎだって」
「そうなの?それじゃあやっと研修期間も終わりね」
「へえ!じゃあまた新しい【マジカ】も手に入るのかな!?」
「やだ、お兄ちゃんたらまた【マジカ】の事ばかり!」
「あはは、そうだね。モンスターも強くなるだろうからカードの種類も増えるんじゃないか?」
「やったね!でも父ちゃん気をつけてね、モンスターが強くなるってことは危険も増えるからね、無理は禁物だよ」
「ヤマトの言う通り、無理だけはしないでね。よし、それじゃあ明日のお弁当は張り切って作っちゃおうかな?」
「やったね、いつもありがとう母さん」
「いえいえ、お父さんもいつもお疲れ様」
「ちょっと子供の前であまりラブラブしないでよ!」
「そうだぜ父ちゃん、勘弁してくれよ!」
「あはは、ごめんごめん」
こうして、家の幸せな団欒は過ぎていく。
さて、明日に備えて早く寝るか。
家族のために明日も頑張るぞ。
明日の新階層での引継ぎに備えて今日は早めに寝ることにした。
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