4.マジカファイト VS ヒロキ③
ヤマト編
カードバトル決着です!
突如フィールドに出現した【レインボー・ゴッド・スライム】に会場のギャラリー達も混乱を隠せない。
「レアリティ Lのカードなんて初めて見たぞ!」
「なんであんなカードをヤマトが持ってるんだ!?」
「偽造カードじゃないのか?」
「いや、偽造カードじゃマシンにセットした時点で使えないだろう」
「ということは……あのカードは本物なのか!?」
「とにかくすげえ!ひょっとしたら逆転出来るんじゃないか!?」
ギャラリー達が様々な意見を言いながら興奮している。
現在の盤面を整理すると、僕のライフポイントは残り1ポイントで敗北にリーチが掛かっている状況だ。
……ということは、このターンでヒロキを倒してしまわないと次のターンで敗北する可能性はかなり高い。
これから使うのは今まで慣れ親しんだ【スライムデッキ】とは違う。
昨日父ちゃんから受け取った何枚かのカードを入れて組み上げた、言わば【新スライムデッキ】だ。
どう仕留めるか……暫く意識を集中し、勝利への道筋を模索する。
「よし!【レインボーゴッドスライム】のスキル【神の究極召喚】を使用!このスキルは自分のデッキの山札から好きなスライム系統のモンスターを1体だけノーコストで召喚出来る!」
「そんなチートみたいなスキル有りかよ!?……だが、もうお前のデッキにはろくなスライムが残っていないはずだ!」
もう僕のデッキにろくなスライムが残っていないって?
……勝手に決めつけるなよ。
僕が召喚するのは、昨日父ちゃんからもらったカードの内の1枚だ。
「僕が召喚するのは……【ゴールデン・エンペラー・スライム】だ!」
僕が宣言した瞬間、フィールドに黄金の光が瞬きだし、中央に魔法陣が発動する。
その魔法陣の中から頭に王冠を載せた巨大な黄金のスライムが出現する。
【ゴールデン・エンペラー・スライム】 レアリティ UR バトルポイント 22000
「う、URだと!?一体お前のデッキはどうなってるんだ!?」
新たに出現したスライムの王とも言うべき巨大モンスターにヒロキが驚嘆している。
最早周囲の目も憚らず思いのままに怒鳴り散らしている状態だ。
昨日、父ちゃんからもらったカードは他にもある。
全て今まで僕が見たことも無かった様な強力なカードだった。
何でこんな強力なカードを入手出来たのか父ちゃんに聞いてもいつも通りの笑顔を浮かべながら「今は言えない」とはぐらかされた。
いきなりこんな強力なカードをデッキに組み込むのは少しズルい気がして最初は躊躇していた。
このバトルでもデッキには組み込んでいたけどギリギリまで使うのは迷っていたんだ。
だけど、やっぱり今までの僕の【スライムデッキ】ではヒロキの【魔獣デッキ】には勝てなくて……
負けたくないという気持ちがその迷いを払拭してしまった。
やっぱり僕は……マジカファイトで勝ちたいんだ!!!
「【ゴールデン・エンペラー・スライム】のスキル【王の威光】を使用!このスキルを使用したターン、フィールドのモンスターの攻撃回数を全て1回増やすことが出来る!」
「何ぃ!?そ、それじゃあ……」
これから起こる事態に気付いたヒロキが青ざめている。
「まずは【ゴールデン・エンペラー・スライム】で【ジェノサイドグリズリー】と【群生狼】へ攻撃だ!」
宣言と同時に【ゴールデン・エンペラー・スライム】が【ジェノサイドグリズリー】と【群生狼】へ向かって極太の黄金の光線を放つ。
2体のモンスターは為すすべもなく光線に呑まれ、跡形もなく消滅した。
これでフィールドに残るモンスターは1匹もいなくなった。
「ああああ!これじゃあ俺の……」
「続いて【ルーンスライム】で相手プレイヤーへダイレクトアタックだ!スキル【王の威光】の効果で2回攻撃を行う!」
【ルーンスライム】がヒロキに飛び掛かり2回体当たりを見舞う。
これでヒロキのライフポイントは残り1ポイントとなる。
「俺の……負けじゃねえかよ!!!!」
「最後に【レインボー・ゴッド・スライム】でヒロキへダイレクトアタック!」
【レインボー・ゴッド・スライム】の羽根が輝き出し、上空へ向かって虹色の光線を放つ。
上空へ放たれた光線は幾重にも枝分かれし、虹色の光線の雨となってヒロキへ降り注ぐ。
「ちくしょぉぉぉぉ!!!!」
この瞬間ヒロキのライフポイントが0ポイントなり、僕の勝利が確定した。
「……ふう、さすがに疲れたな」
僕は額の汗を拭い天井を見上げる。
「ヒロキ君のライフポイントが0ポイントとなったので、このファイトはヤマト君の勝利!!!」
ジャッジ役の店長さんが高らかに宣言する。
すると会場中のギャラリー達から歓声が上がり始める。
「すげえ!本当に勝っちまいやがった!」
「しかも、何だあのデッキは?見た事ないぞ!」
「とにかく!この店で敵無しだったヒロキを破ったんだ、すげえなあいつ!」
それを聞いてまた僕は勝てたんだと、実感が湧いてくる。
僕はヒロキの所へ向かう。
ヒロキは敗北のショックからか半ば放心状態だ。
「あの……ヒロキ?大丈夫かい?」
「……ん?ああ、俺は負けたんだな」
「いやいや、ギリギリだったよ。今までの僕の【スライムデッキ】だったら完敗だったろうね」
「ちくしょう、やっぱり悔しいな。ていうかお前のデッキは一体何なんだ?どこから入手して来たんだ?」
「う~ん、まあ僕も父ちゃんからもらったとしか……」
「ああ、お前の親父も冒険者だったな。ということはどこかのダンジョンで入手してきたのか?それなら文句も言えないな」
ヒロキも冒険者の父親が入手してきたカードをメインに使用している。
そのためヤマトの【新スライムデッキ】が父親から融通されたカードで作成されているという事に関しては抵抗感は無いらしい。
「ありがとうね、このファイトは何て言うか……すごく楽しかった!」
「ちっ!何かお前と話すと調子が狂うぜ!まあ俺もこれだけ白熱したファイトは久しぶりだったな」
「うん!また一緒にファイトしようね!」
「はん!次は負けないからな!……ああ、約束のカードパックだ、受け取ってくれるか?」
ヒロキはこのファイトに勝ったら渡す約束だった優勝賞品の3パックを差し出してきた。
「いやいや受け取れないよ!」
「それは困るぞ、約束は約束だからよ!」
「うーん……わかった、じゃあ受け取らせてもらうよ」
「ああ、ほらよ!」
ヒロキのあまりの剣幕に根負けしてパックを受け取ることにした。
「はあ、さすがに俺も疲れたぜ。帰って一休みしたら関東大会用にデッキを調整するか……じゃあなヤマト!さっきも言ったが今度のファイトは絶対負けないからな!」
「うん!ヒロキも関東大会頑張ってね!」
そんなやり取りを交わした後に、ヒロキは店を出て行った。
その後に店中のギャラリーや店長達にもみくちゃにされ質問攻めにあった事は言うまでも無いだろう。
このデッキは何なのか?
一体どこで入手してきたのか?
様々な質問から始まり、カードを見せてくれ、写真を撮らせてくれ、挙句の果てにはカードをトレードして欲しいと、本当に断るのが大変だった。
店長に至っては、目玉が飛び出るくらいの価格を提示され、頼むから売って欲しいと頭を下げられまくってしまった。
まあ、全力で断ったけどね。
それらの対応を全て終え、無事に家に辿り着いた時には既に夜になっていた。
色んな意味で濃く長い、そしてとてつもなく疲れた1日だったな……
もうすぐ父ちゃんが仕事から帰って来る。
父ちゃんがくれたカードが大活躍して無事にファイトに勝利出来た事を早く報告したいな。
父ちゃん早く帰って来ないかなぁ。
……こうして後に【スライムマスター】と呼ばれるカードファイター、石動 ヤマトの伝説は静かに幕を開けたのだった。
ファイト決着!
描いてて物凄く楽しかったです!
次回更新分からヤマトの父親が登場。
どうしてあんな強力なカードを入手出来たのかを描いていきます。
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