31.マジカファイト VS アキラ ②
ヤマト編
石動ヤマトと鳳凰寺アキラの【マジカファイト】の1ターン目が終わった頃、会場の一角では鳳凰寺アキラの懐刀である四天王達がファイトを見守っていた。
「……へえ、さすがヤマト君、なかなか良い勝負をしているじゃないか、これはひょっとしたら番狂わせが起こる何てことが本当にあるかもねぇ」
「き、貴様!この期に及んでまだそんな事をほざくか!やはりこの場で即座に処分してくれるわ!」
ジンが呟いた言葉に激高したミランが飛び掛かろうとしたが……
「待てい!アキラ様がファイト中だぞ!双方自重するが良い!」
フドウが即座に制する。
ファイト前のやり取りとは真逆の構図だ。
「だが、フドウ!……こいつはアキラ様の事を侮辱しておるのだぞ!」
「ふん、そいつの言う事なんぞ聞き流しておけば良いのだ、我々はアキラ様の事を信じていればそれで良い」
フドウは腕を組みながらどっしりと会場を見据えている。
「それに……アキラ様はまだまだ本気では無いだろう」
「へえ……それは一体どういう事だい?」
「簡単な事だ……アキラ様はまだ【聖獣デッキ】本来の性能を引き出していない」
「……まさか!?」
「ああ、アキラ様はまだあのカードを使ってはいないだろう?アキラ様があのカードを場に出した時が、【聖獣デッキ】の真の力が発揮される時だ」
フドウは唯々アキラを信じるのみ。
それが四天王としての責務だと理解している。
その眼が捉える会場では、更なる熱いファイトが繰り広げられようとしていた……
◆◆◆◆
アキラとの【マジカファイト】、何とか1ターン目を終えた時点では幾分かのリードを奪えてはいると思う。
1ターン目後攻終了時点
アキラ 手札 4枚 ライフポイント 5 マジックポイント 2
フィールド
【グロウシルフィード】 レアリティ N バトルポイント 2000
ヤマト 手札 4枚 ライフポイント 3 マジックポイント 4
フィールド
【レインボー・ゴッド・スライム】 レアリティ L バトルポイント 20000
【シルバー・クイーン・スライム】 レアリティ UR バトルポイント 14000
こちらのフィールドには切り札の【レインボー・ゴッド・スライム】、そしてURモンスターである【シルバー・クイーン・スライム】を召喚出来ている。
ライフポイントが3ポイントとなっている点は気になるが、多少のリスクは織り込み済みだ。
このままガンガン進んで行くのが正解だと信じるしかない。
「さてと……次は僕のターンだね。1枚ドロー!」
2ターン目が始まり、アキラが山札から1枚カードをドローする。
ドローしたカードを見たアキラが笑みを浮かべる。
……これは、意中のカードを引き当てたな。
「さあ、このターンから僕の本気を見せるとしようか」
「今までは本気じゃなかったってわけ?」
「残念ながらそうなるかな。このターンで【聖獣デッキ】の真の姿を見せてあげるよ」
アキラは自信ありげにとてつもなく不穏な事を口走っている。
間違いなく何かを仕掛けて来るに違いないが……
大丈夫、こちらのフィールドにも強力なモンスターを揃えている。
何をされようとそう簡単に突破される事はないだろう。
「……準備は良いかい?それじゃあ僕の勝利までの道のりを歩もうか!まずはマジックポイントを2ポイント消費して魔法カード【聖王の号令】を使用、このカードの効果は自分の山札から好きなカードを2枚手札に加える事が出来る!」
「そんな反則みたいなカードまであるのかよ!?」
「僕が選択するカードは、【聖獣の行進】と……【聖王の神域】の2枚だ!」
アキラが選択した2枚のカード、明らかに他のカードとは違う。
間違いなくアキラの切り札と言えるカードだろう。
そのカードが2枚手札に揃ってしまった。
ここから怒涛の攻撃を仕掛けてくるのは間違いないだろう。
「さて、まずは魔法カード【聖獣の行進】を使用、マジックポイントを2ポイント消費し、山札から聖獣系統のモンスターを3体までフィールドに召喚する事が出来る」
「何だって?そんなの有りか!?」
「まあ選択可能なモンスターはレアリティ R以下に限るけどね、僕が選択するモンスターはこの3体だ!」
……いやいや、レアリティ R以下に限るって、Rモンスターをノーコストで3体呼べる時点でチートだろう。
まずいな、下手したら一気に盤面を持っていかれるかもしれない。
アキラが選んだモンスターが3体、フィールドに召喚される。
【ホーリーグリフォン】 レアリティ R バトルポイント 8000
【セイントガルーダ】 レアリティ R バトルポイント 7500
【ユニコーンキャバリエ】 レアリティ R バトルポイント 7000
呼び出されたモンスターは、それぞれ光を纏ったグリフォン、羽根を広げて空を飛んでいる金色の大鳥、そして1本の鋭い角を生やしたユニコーンを駆る騎士だった。
この【ユニコーンキャバリエ】はさっき倒した【ペガサスキャバリエ】と同種のモンスターだろう。
「おっと、ここでマジックポイントが尽きてしまったか、それでは【グロウシルフィード】のスキル【ルーングリッター】を使用、マジックポイントを2ポイント回復させる」
これでアキラのマジックポイントは0ポイントから2ポイントへ回復する。
やはり【聖獣デッキ】はあらゆる面で万能と言える。
様々な効果を持つカードを適切に組み合わせてあり、今の所弱点などは全く見当たらない。
「そして、マジックポイントを2ポイント消費して魔法カード【聖王の神域】を発動!これでフィールドにいる聖獣系統のモンスターのバトルポイントは永続的に2倍となる!」
「そこまで行くとさすがにズルいだろう!」
宣言と同時にフィールド全体が黄金色の結界に包まれる。
どうやらこの中では聖獣系統のモンスターのバトルポイントは軒並み2倍となる様だ。
しかも永続的な効果が約束されてしまっている。
【ホーリーグリフォン】 バトルポイント 8000⇒16000
【セイントガルーダ】 バトルポイント 7500⇒15000
【ユニコーンキャバリエ】 バトルポイント 7000⇒14000
【グロウシルフィード】 バトルポイント 2000⇒4000
アキラのデッキのモンスターは恐らく全てが聖獣系統だろう。
ということは、【聖王の神域】の効果は絶大な効果を発揮する事になる。
正にアキラの【聖獣デッキ】の真骨頂、言葉の通りとうとう本気を出して来たって事か!
「まずは【ホーリーグリフォン】のスキル【ホーリーバインド】を使用、このスキルの効果で次のターン、君のモンスター1体の攻撃を封じる事が出来る」
「ま、まさか!?」
「そのまさかさ、対象はもちろん【レインボー・ゴッド・スライム】さ」
……しまった!
【レインボー・ゴッド・スライム】の攻撃を封じられてしまったら、相手のモンスターを倒す手段が無くなってしまう。
正直言って、これはかなり致命的かもしれない。
「これでやっと君のモンスターを破壊出来るね、それじゃあ【ホーリーグリフォン】で【シルバー・クイーン・スライム】を攻撃するよ」
【ホーリーグリフォン】が口を大きく開き、光のブレスを発射する。
【シルバー・クイーン・スライム】のバトルポイントは14000、【聖王の神域】の効果でバトルポイント16000となった【ホーリーグリフォン】の攻撃は防げない。
【シルバー・クイーン・スライム】は光のブレスに貫かれ、あっという間に消滅してしまった。
これで僕のフィールドに残るモンスターは【レインボー・ゴッド・スライム】のみとなる。
「さすがにバトルポイント20000には届かないか、それじゃあ折角召喚したモンスター達のスキル位は使用しておこうかな」
現在アキラのフィールドにいるモンスターではバトルポイントが2倍となったとしても、【レインボー・ゴッド・スライム】には適わない。
その事を理解しているアキラは、残り2体のモンスターのスキルを使用する事にしたようだ。
「まずは、【ユニコーンキャバリエ】のスキル【騎士の招集】を使用、山札からカードを3枚ドローする」
抜け目なく、手札の補充までされてしまう。
「次は【セイントガルーダ】のスキル【セイントジャベリン】を使用する。このスキルの効果により君は手札をランダムに2枚破棄しなければならない!」
「ここに来て妨害系のスキルまで使うのか!?」
【セイントガルーダ】が光の矢をこちらに向かって放つと、僕の手札を貫いて破壊してしまった。
これで僕の手札は残り2枚となる。
「とりあえずこんな所かな、ターンエンドとさせてもらおう」
アキラがターン終了を宣言した。
1ターン目後攻終了時点
アキラ 手札 4枚 ライフポイント 5 マジックポイント 0
フィールド
【ホーリーグリフォン】 レアリティ R バトルポイント 16000
【セイントガルーダ】 レアリティ R バトルポイント 15000
【ユニコーンキャバリエ】 レアリティ R バトルポイント 14000
【グロウシルフィード】 レアリティ N バトルポイント 4000
ヤマト 手札 2枚 ライフポイント 3 マジックポイント 4
フィールド
【レインボー・ゴッド・スライム】 レアリティ L バトルポイント 20000
……このターンで一気にアキラが牙を剥き始めた感がある。
【聖王の号令】からの【聖獣の行進】、【聖王の神域】までの流れは恐らくアキラの必殺のコンボだ。
案の定、このターンで一気に形勢を持っていかれてしまった。
アキラのフィールドにはバトルポイント10000を超えるモンスターが3体並び、盤石と言ってしまっても差し支えない布陣を形成してしまっている。
おまけにこちらの手札は2枚、フィールドのモンスターは【レインボー・ゴッド・スライム】のみ、更には攻撃を封じられている状態だ。
恐らくアキラのデッキにはまだまだ強力な手札が眠っているだろう。
……強いなぁ。
わかりきっていた事だが、やはり強い、今までの相手とは1枚も2枚も上手だ。
「……へへ」
「……ひょっとして笑っているのかい?」
これがピンチである事は自分でも理解している。
しかし、僕はいつの間にか小さく笑っていた。
「ごめんね、何だか楽しくなってきちゃってね」
「楽しいだって?そんなに追い詰められているのにかい?」
「ああ、こんな強い相手と戦えるのがこれほどまでに楽しいなんてね」
……そうだ、自分は【マジカファイト】が大好きだ。
その【マジカファイト】でこんなに強い相手と、皆の応援を受けながら戦えるなんて。
……楽しいに決まってるじゃないか!
「へえ、まだまだ余力があるんだね。そうか、それならこちらも更なる全力を持って相手をさせてもらおう!」
「望むところさ!僕もまだまだアキラとファイトしていたい!それに、絶対に負けたくない!」
僕の心にもはや迷いは全くない。
こんなに楽しいファイトはそうは無いだろう。
ならば、勝利に向けて全力を尽くすのみ。
「行くぞぉ、アキラぁ!僕のターン!」
2ターン目後攻、反撃の狼煙を上げるためのキーとなるターンが、たった今開始された。
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