30.マジカファイト VS アキラ ①
ヤマト編
お待たせしました。鳳凰寺アキラ戦、スタートです。
※修行の旅は描かないの?と何度かご意見頂きました。
いやあもちろん書きたいですし、ネタも考えてますが……
ちょっといつまで経っても鳳凰寺アキラ戦が始まらないので割愛させて頂きました。
また、この辺りの詳細はショートストーリーなんかでいつか書けたら良いなぁと考えています。
いやいや、早く書けよなんて方がいらっしゃったらご意見頂ければ幸いです!
双方準備が完了し、いよいよファイト開始となる。
先攻後攻は、じゃんけんでは無く抽選で決めることになり、アキラが先攻と決まった。
「僕が先攻か、まあ良いだろう、どうせ僕の勝ちは決まっている。【聖獣デッキ】の恐ろしさを目に焼き付けて帰るが良いさ」
「へへーん、勝負はやってみなくちゃわからないだろ?案外、僕があっさり勝っちゃったりしてね」
「……ふん、生意気な事を言う」
お互い強い気持ちをぶつけ合う。
負けられないのはお互い一緒だ。
「両選手とも、準備は完了しましたか?……それでは、マジカファイト……レディーゴー!!!!!!」
ジャッジの合図でとうとうアキラとの【マジカファイト】が始まった。
ファイトが始まると同時に会場から割れんばかりの歓声が沸き起こった。
「それでは始めようか。僕のターン、マジックポイントを1ポイント消費して手札から【アークペガサス】を召喚する」
「ヒヒィィィィィィン!」
【アークペガサス】 レアリティ N バトルポイント 3000
アキラがマシンにカードをセットすると光を纏ったペガサスがフィールドに出現する。
アキラのデッキは【聖獣デッキ】、その名の通り聖なる力を持ったモンスターを揃えた万能型のデッキだ。
「どうだ?僕のモンスターの神々しさに驚いているんじゃないのか?」
「確かに強そうだけど、まだ勝負は始まったばかりだ、そんな事で驚いていられないよ!」
「まあ驚くのはこれからだけどね、僕はマジックポイントを1ポイント消費して魔法カード【騎士の誇り】を使用する。このカードの効果で【アークペガサス】は強力な騎馬へと生まれ変わる。山札から【ペガサスキャバリエ】を呼び出し、【アークペガサス】と入れ替える!」
【騎士の誇り】はフィールドに特定のモンスターがいる場合に、山札の騎士系モンスターへとパワーアップさせる事が可能な魔法カードだ。
この効果により、フィールドの【アークペガサス】は騎乗主を得て【ペガサスキャバリエ】へと生まれ変わる。
ペガサスに騎乗し、両手にそれぞれ盾と剣を持った屈強そうな騎士が出現した。
【ペガサスキャバリエ】 レアリティ R バトルポイント 7000
「更に、【ペガサスキャバリエ】のスキル【騎士の招集】を使用!このスキルの効果で山札からカードを3枚ドローする事が出来る」
この1連のコンボであっという間に強力なRモンスターが出現し、手札も補充されてしまった。
「さあどんどん行くよ、マジックポイントを1ポイント消費して手札から【グロウシルフィード】を召喚する」
フィールドに淡い光を体から放ち続ける妖精の様なモンスターが出現する。
【グロウシルフィード】 レアリティ N バトルポイント 2000
「そして、【グロウシルフィード】のスキル【ルーングリッター】を使用、このスキルの効果で僕のマジックポイントを2ポイント回復させる」
……なるほど、僕の【ルーンスライム】と同タイプの回復型のモンスターか、さすが万能型デッキ、様々なタイプのモンスターを揃えているみたいだ。
現在のアキラのマジックポイントは4ポイント、手札は5枚だ。
「もう1枚モンスターを出しておこうかな。マジックポイントを2ポイント消費して手札から【サンライトゴーレム】を召喚する!」
「ガォォォォォォン!」
【サンライトゴーレム】 レアリティ R バトルポイント 7000
これまた頑丈そうな光を纏ったゴーレムが出現する。
明らかにタンク系のモンスターだが、間違いなく何らかの能力を持っているだろう。
「ここで【サンライトゴーレム】のスキル【サンライトバリアー】を使用!このスキルの発動時、フィールドにいる聖獣系統のモンスターは受けるダメージが半分になる!」
「何だって!?」
……何か特殊なスキルを持っているだろうとは思っていたが、想像以上に厄介なスキルだった。
アキラのフィールドに召喚されたモンスターは3体、その内の【ペガサスキャバリエ】と【サンライトゴーレム】のバトルポイントは7000、つまりこの2体を倒すには少なくともバトルポイント14000以上のモンスターをぶつける必要がある。
1ターン目にここまで厄介なモンスターを召喚できるなんて、やはり鳳凰寺アキラは強敵だと言わざるを得ない。
さすがは、関東大会チャンピオンとでも言うべきか。
「これでターンエンドだね、どんな手段で僕の【聖獣デッキ】に挑んでくるのか……じっくり見せてもらうよ」
アキラは余裕の笑みを浮かべながらターンエンドを宣言した。
まだまだ王者の余裕を崩さず、遥かに上の立場からこちらの出方を探っている様に見える。
……見てろよ、今にその余裕たっぷりの態度を崩してやるからな!
1ターン目先攻終了時点
アキラ 手札 4枚 ライフポイント 5 マジックポイント 2
フィールド
【サンライトゴーレム】 レアリティ R バトルポイント 7000
【ペガサスキャバリエ】 レアリティ R バトルポイント 7000
【グロウシルフィード】 レアリティ N バトルポイント 2000
ヤマト 手札 5枚 ライフポイント 5 マジックポイント 5
フィールド モンスター無し
さて、僕の番だ。
現状を整理すると、アキラが召喚した【サンライトゴーレム】の能力でこちらの攻撃は全て半減させられてしまう状態だ。
この状況を打破するためには、【サンライトゴーレム】を倒す必要がある。
そのために必要なバトルポイントは14000、つまり僕の手札の中ではUR以上のモンスターを召喚する必要がある。
現在、アキラはこちらの行動を妨害するスキルはまだ用いていないので、1ターン目で該当モンスターを召喚するチャンスはもちろんある。
その辺りを頭に入れながら最善の手段を模索していかなければならない。
……よし!行くぞ!!!
「僕のターン!手札から1枚ドローする!」
覚悟を決めて手札から1枚ドローする。
この瞬間に僕のマジックポイントは2ポイント回復する。
この手札は……
今引いた1枚を合わせた6枚のカードを見ながら考えを巡らせる。
今持っている手札の内容では、【スライム返し】や【ワンターンキル】は使用出来ない。
……しかし、1つだけこの状況に有効な手段が僕には見えていた。
かなり賭けに近い手段が、その賭けに1ターン目から出るべきか否かを頭の中で反芻して考える。
頭の中に浮かんでいる手段は恐らくかなり有効だが、多少の無理を覚悟しなければ成功はしないだろう。
アキラは間違いなく今まで戦ってきた中で最強の相手だ。
その最強の相手に対してこんな序盤でそこまで無理を通してしまっても良いのだろうか……
そんな考えが頭の中を駆け巡る。
「どうしたんだい?1ターン目からやけにゆっくり考えているじゃないか、まあ僕が興味を持っているのは君の【レインボー・ゴッド・スライム】のみだ。願わくばさっさと召喚して欲しいんだけどねぇ」
待ちきれない様子でアキラが声を掛けてくる。
今の言葉は間違いなくアキラの本心だろう、自分が負けるなんて微塵も考えていない。
そんな王者の本心が言葉の節々に滲み出て生きている。
……やってやろうじゃないか。
アキラの言葉を聞いて自分の中でも決心が着いた。
元々勝ち目が薄かった勝負、その状況を何とか覆そうともがきにもがいた結果が今だ。
負けて元々、賭けを制してこそチャンスもこちらに巡って来るというものだ。
「行くよ!僕はマジックポイントを2ポイント消費し、手札から【サクリファイススライム】を召喚する!」
フィールドに紫色をしたスライムが出現する。
【サクリファイススライム】 レアリティ R バトルポイント 3000
「へえ、そのモンスターは知っているよ、確かプレイヤーのライフが0ポイントになったら自分を犠牲にしてライフポイントを1ポイント回復してくれるモンスターだったよね?こんな序盤に呼び出すモンスターでは無いと思うけど?」
「よく知ってるね、まあ見ててよ」
アキラの言う通り、この【サクリファイススライム】には自分のライフポイントが0になった時に1度だけ身代わりになってくれるという特殊能力がある。
普通はファイトの終盤に召喚しておくと最後の局面で非常に役立つ事もあるのだが、こんな序盤に召喚してしまうと、優先的に倒されてしまい、その効果も無駄になってしまう。
だからこんな序盤で【サクリファイススライム】を召喚するなんていう事は禁じ手に近い。
アキラの指摘もごもっともだ。
……しかしそんな事は百も承知だ。
こんな召喚の仕方をするのにはもちろん狙いがあるに決まっている。
ジンとの修行の旅で出会ったファイターの中に、相克ゲンタというファイターがいた。
世にも珍しい【自爆デッキ】なんてものを操るなかなかエッジの効いたファイターだが、そのファイターが使用してきた戦法の中に恐るべきコンボがある。
今まさに僕が試みようとしている狙いこそがそのコンボを応用したものだ。
チャンスは一度……やるしかない!
「僕はマジックポイントを1ポイント消費して魔法カード【大いなる対価】を使用する!」
「……そ、それは!?」
「このカードを知っているんだね?このカードの効果は2つの中から選択する事が出来る。そしてこの【大いなる対価】を使用するにはマジックポイントともう1つ、ライフポイント5ポイントが必要なんだ!」
僕の説明を聞いた会場中が喧噪に包まれる。
基本的にプレイヤーが所持しているライフポイントは5ポイントだ。
つまりライフポイントを5ポイントを消費したら当然ながら0ポイントになってしまう。
何も考えずにそんな事をすればその瞬間負けが決まってしまう。
そのため、こんなカードを使う様な奴は普通はいやしない。
……しかし【サクリファイススライム】の能力と組み合わせればどうなる?
プレイヤーのライフポイントが0になった瞬間、身代わりとなりライフポイントを1ポイント回復してくれる。
つまり生き残る事が出来るのだ。
そして【大いなる対価】を使用した時に選択可能な効果は2つ。
・相手のモンスター1体を破壊する。
・自らの山札から好きなモンスターをフィールドに召喚出来る。
もちろん、今回選ぶ効果は……後者に決まっている。
「僕は【大いなる対価】の効果で山札から【レインボー・ゴッド・スライム】を召喚する!」
宣言と共にフィールドに虹色の閃光が走り、【レインボー・ゴッド・スライム】が出現する。
この瞬間、僕のライフポイントが0となるが、同時に【サクリファイススライム】から魂の様な光が放出され、僕に降り注ぐ。
ライフポイントが回復し1ポイントとなり、生き残る事が出来たが、その代償として【サクリファイススライム】は消滅してしまった。
「……へえ、まさかそんな強引な手段を用意しているとはね、さすがに驚いたよ。しかし、これで待望の【レインボー・ゴッド・スライム】に出会えた。勝負はこれからだね!」
アキラが恋人にでも会えたかの様に声を弾ませ嬉しそうな表情を浮かべる。
やはりまだ自分が負けるなんて全く考えていない。
次の1手でその目を覚まさせてやらないと。
「続いて、【レインボー・ゴッド・スライム】のスキル【神の究極召喚】を使用する……今回召喚するのは、このモンスターだ!」
フィールドに眩い銀色の光が降り注ぎ始めると、中央に光の魔法陣が発動する。
今回の魔法陣は白銀とも言えるような鮮やかな光を四方八方に放っている。
「頼むぞ……【シルバー・クイーン・スライム】!!!!」
魔法陣から出現したのは頭にティアラを乗せた巨大な銀色のスライム。
恐らく【ゴールデン・エンペラー・スライム】と対になるであろうと予測されるそのスライムは、どこかしら優雅で気品を備えたかの様な雰囲気を醸し出していた。
【シルバー・クイーン・スライム】 レアリティ UR バトルポイント 14000
「そのモンスターは初めて見るね。一体どんなスキルを持っているんだい?」
「今にわかるさ。楽しみにしていてよ」
この【シルバー・クイーン・スライム】のスキルは、今まさに必要となるスキルと言える。
これが成功すれば、【サクリファイススライム】と【大いなる対価】との間で凄まじいシナジーを今後発揮していくことになるだろう。
「【シルバー・クイーン・スライム】のスキル【白銀の慈愛】を使用する!このスキルを使用したターン、相手のモンスターを倒した時にライフポイントを1ポイント回復する事が出来る!」
「……なるほど、今の君の状況にぴったりのスキルだね」
宣言した瞬間、フィールド中が白銀の光に覆われる。
この状態で相手モンスターを破壊すれば自分のライフポイントを回復する事が出来るって訳だ。
「行くぞ!【レインボー・ゴッド・スライム】で【サンライトゴーレム】へ攻撃だ!」
【レインボー・ゴッド・スライム】が羽根を広げて【サンライトゴーレム】へ向けて虹色の閃光を放つ。
【レインボー・ゴッド・スライム】のバトルポイントは20000、【サンライトバリアー】の効果で半減したとしても【サンライトゴーレム】のバトルポイント7000よりも上回っている。
容赦なく閃光が【サンライトゴーレム】を貫いた。
「ガォォォォォォン!!!!」
【サンライトゴーレム】が音を立てて崩れ落ち、消滅してしまった。
同時にフィールドから【サンライトバリアー】の効果が消失する。
これでこちらの攻撃も普通に通る様になった。
「続いて【シルバー・クイーン・スライム】で【ペガサスキャバリエ】へ攻撃だ!」
【シルバー・クイーン・スライム】から銀色の閃光が放出され、【ペガサスキャバリエ】を跡形も無く吹き飛ばす。
相手のモンスターを2体破壊したので、【白銀の慈愛】の効果でライフポイントが2ポイント回復、合計で3ポイントなる。
「これでターンエンドだ!」
現在出来る事が無くなってしまったのでターンエンドを宣言する。
このターンは、思った通りに立ち回る事が出来たと思う。
何より【レインボー・ゴッド・スライム】をこんな早いターンで召喚出来た事は何より大きいだろう。
「……やっぱり思った通りだ」
「んん?何の事だい?」
「いやぁ、思った通りヤマト君とのファイトは楽しいなぁ……よし!次のターンはもっと本気を出すとしようか!」
何とか乗り越えた1ターン目。
次の2ターン目も更なる攻防が繰り広げられるに違いない。
アキラの獰猛な笑みを見ながら、改めて気を引き締める事にした。
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