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29.いざ決戦の時!

 石動ヤマトとその父である石動タクマ、そして風切ジンの3名で【マジカファイト】の武者修行の旅へ出てからしばし時が経ち……


 とうとう2人が雌雄を決する日がやってきた。


 場所は、鳳凰寺グループ所有の「鳳凰寺スタジアム」……

 普段は、様々なイベントやプロスポーツの会場となっているこの場所には豪華な装飾がこれでもかという程に散りばめられた特別仕様の【マジカファイト】の会場が設営されていた。


 

 鳳凰寺グループ側の控室には既に鳳凰寺アキラがスタンバイしており、その周囲には鳳凰寺四天王が勢揃いして控えている。


 鎧滝フドウ、蛇蝎ミラン、熔崎シモン……そして、風切ジンの姿も見える。


 「貴様……どの面を下げたここにいるのだ?」


 四天王のリーダーである鎧滝フドウは額に青筋を浮かべ、怒りを抑えきれない様子でジンに疑問を投げ掛けた。


 「え?何がですか?四天王たるものアキラ様の晴れ舞台には立ち会わないと」

 「ほう……やはり死にたいらしいな」


 アキラを裏切り、対戦相手であるヤマトに協力をしていたジンに対して怒りを露わにするフドウと完全にしらばっくれているジン。

 今にもジンに掴みかかりそうなフドウを他の四天王が制する。


 「2人とも、アキラ様のファイト前ですわよ!集中を乱す様な行動は慎みなさい!」

 「そうだぜ、喧嘩はファイト後に勝手にすりゃぁ良いじゃねえか」


 確かにアキラのファイト前だという理由で窘められてしまえば怒りを収めるしかない。

 フドウは怒りに奮えながらも必死で自制すべく歯を食いしばる。


 「お2人とも仲介して頂いてありがとうございます」


 にこやかにお礼を述べるジンに向かってミランが汚物を見るような目で一瞥する。


 「勘違いするなよ……アキラ様に弓を弾く様な行動をしながら平然としている貴様には私も虫唾が走る。アキラ様のファイト前でなければ私が八つ裂きにしてやりたい所だ。貴様は私が必ず血祭りにして裁いてやるから首を洗って待っているが良い!」

 「……こ、怖いんですけどぉ」


 フドウの怒りとはまた違った、更にドス黒い怒りをダイレクトにぶつけられ震えあがるジン。


 「ぎゃははは!お前ももう終わりだな、アキラ様に逆らうからだよ、本当に馬鹿じゃねえのか?」


 シモンも他の2人の怒りに乗っかりながらもジンを馬鹿にしてくる。


 「あらら、嫌われちゃったなぁ……まあ仕方がないか」


 ジンはジンで、特に応えている様子も無い、あくまで平常運転だ。

 自らの望み通りの結果になる様に気ままに行動する。

 その結果、他人に何を思われようが関係が無い。

 それが風切ジンという人間なのであるから仕方がない。


 「まあまあ、ジンが戻って来たって事は、対戦相手のヤマト君はそれなりに強くなってくれたのかな?」


 アキラが相変わらず余裕の態度を崩さず、余裕綽々でジンに話しかける。

 アキラからすれば、この代表戦は勝てて当然、負けるなんて微塵も考えていない。

 このファイトに求めるのは内容だ。

 アキラですら見たことがないレアリティ レジェンダリの【マジカ】である【レインボー・ゴッド・スライム】、その幻のモンスターを呼び出させた上で完膚なきまでに叩きのめして勝利をする。

 それこそが、自らに課せられた最低限のノルマであると完全に理解している。


 「まあそこそこ強くなってくれましたよ、アキラ様と10回対戦したら……」


 そんなアキラの問いかけに対してジンが満面の笑みを浮かべながら爆弾を投下する。


 「4、5回は勝つんじゃないですか?」


 「……な!?」

 「き、貴様という奴は!」

 「取り消せ下郎がぁ!」


 ジンの言葉を不敬と断じた残りの四天王3人が瞬時に色めき立つ。


 さすがに我慢の限界らしく、さっきの様にアキラのファイト前だからと怒りを抑える様子は全く見えなかった。

 しかし、アキラはその3人を制する。

 ジンの言葉を理解しつつも、怒りを表に出さない。

 それが王者の風格だからだ。


 「皆、良いから落ち着いてよ。ジンも面白い事を言うんだね」


 アキラの表情は笑顔を浮かべたままだ。


 「そんな面白い事を言われたらちょっとやる気が出て来るなぁ」


 笑顔を浮かべたままだが……


 「やる気が出過ぎて……叩き潰してしまいそうだ」


 殺気を抑えるつもりはない。


 「ジンもヤマト君の後でファイトしようよ、存分に可愛がってやるからさ」


 ジンは自分にも存分に浴びせ続けられているアキラの殺気を全身で感じながらも笑顔を絶やさない。


 (そうこなくっちゃねぇ、やっと面白くなってきたなぁ……)


 ジンの目的はアキラが負ける所を見る事だ。

 その目的を達成するためならば、他の事など些末な事。

 

 (そういえばヤマト君の方は大丈夫かな?)


 ヤマトとアキラのファイトの火蓋が切って落とされるまで、後少し……



 ◆◆◆◆

 

 「おいヤマト!早くしろって!遅れるぞおい!」

 「待ってよ父ちゃん!置いてかないでくれよ!」


 父ちゃんと僕は全速力で鳳凰寺スタジアムへ向かっていた。


 「何でこんな大事な時に時間ギリギリなんだよ!ったくもう!」

 「仕方ないじゃんかよ!直前までデッキの調整やってたんだからさ!」


 ジンと父ちゃんとの修行の旅はかなり大変だったけど、その分得られた経験は他に得難い様な物になった。


 ジンの伝手で出会えたファイターは多岐に渡り……


 【昆虫デッキ】や【魚介デッキ】を始めとして、【聖杯デッキ】や【トラップデッキ】なんてピーキーなデッキ、最終的には【自爆デッキ】なんて一見するとネタデッキじゃないのか?と思わせるようなデッキとの使い手なんかとも模擬ファイトをする事が出来た。


 まあ今まで見たことも無い様なモンスターや戦術等と連続で戦い続ける事になり、戸惑いながらもとても多くの事を学ぶ事が出来た。


 今回はその集大成とも言えるデッキを鳳凰寺アキラにぶつけるつもりだ。


 その調整に思ったより手間取ってしまい、ほとんど徹夜になってしまった。


 何とか時間ギリギリにスタジアムに到着し、控室に飛び込む。


 「間に合ったぁぁぁ!!!」


 声を張り上げながら控室に入ると、その場にいた全員の視線がこちらを向く。


 ……いや照れるなぁ。


 「遅れてしまい申し訳ありませんでしたぁぁぁ!!!」


 その刹那の瞬間、隣の父ちゃんが大声で叫びながら頭を下げる。

 角度は90度、お手本の様な完璧な謝罪だった。


 「まあまあ、少しヒヤッとしたが別に遅刻した訳じゃない、ギリギリ間に合ったんだし良いじゃないか」

 「あ、ありがとうございます!大川原社長!」


 正面にいるこの人が父ちゃんの会社の社長らしい。

 よく見ると社長さんの周辺にも偉そうな大人の人達が何人もいる。

 端っこの方にはこの間ファイトをした田中さんもいる。


 この【マジカファイト】は父ちゃんの会社の未来が掛かった大切なファイトだ。

 そりゃあ父ちゃんの会社の人達も来るよなぁ。


 「お兄ちゃん、頑張ってね!」

 「本当に、こんな立派な会場でヤマトが戦うなんてねぇ、大丈夫かしら?」


 母ちゃんとイズミも応援に来てくれた。

 準備に手間取る僕と父ちゃんとは別で一足先に会場へ到着していたみたいだ。


 「うん、応援ありがとうね!頑張るから応援よろしく!」


 父ちゃん以外の家族に【マジカファイト】をしている所を見せるのは初めてだ。

 それがこんな大舞台になっちゃうんだから人生わからないものだ……


 「おう、ヤマト!応援に来てやったぞ!店長は店があるから来れなかったみたいだけどな!」

 「とうとうこの日が来ちゃったね、何だか私まで緊張してきちゃったわ……」


 アラタとチヒロももちろん応援に来てくれている。

 こんな大舞台でのファイトはいくら僕でも緊張しないと言えば嘘になる。

 そんな時に親友達の応援は何より励みになり心強い。


 「今日は来てくれてありがとう!絶対に勝つから見ててくれよな!」


 応援に対して精一杯の言葉で応える。

 ここまで来たら全力でぶつかるのみ、当たって砕けろだ!


 「時間です、会場の方へ移動して下さい」


 控室のドアがノックされ係の人から案内される。


 「よぉぉぉし!行くぞぉぉぉ!!!」


 逸る心を抑えきれずに声を張り上げる。

 

 「よっしゃぁぁぁ!行ってこいヤマトぉ!!!」


 父ちゃんが背後から肩に手を置き、同じ様に声を張り上げる!


 「その意気だぁ!」

 「頼むぞぉ!」

 「頑張れヤマトぉ!」


 途端に控室中から歓声が湧きたつ。

 僕も心の底からワクワクしてきたのを実感する。


 僕は深呼吸を1回だけして、会場へ向かった。


 ◆◆◆◆


 会場へ着くと既にアキラは到着していた。

 その両脇には四天王達も勢揃いしており、もちろんジンの姿もある。

 ジンは意味ありげな笑みを浮かべながらこちらに視線を送っている。


 (あんな感じであっちの陣地に入れるあいつってやっぱりすごいよな……)


 素直にそう思ってしまう。


 ちなみにスタジアムは超満員、観客の盛り上がりも最高潮に達している。


 「うぉぉぉぉ!アキラ様ぁぁぁ!」

 「きゃぁぁあ!こっち向いてぇぇ!!!」


 よくよく見るとほとんどがアキラのファンか、鳳凰寺グループ側の人間みたいだな。

 

 その一角にポツンと、父ちゃんや会社の人達等の僕側の応援団が陣取っている。

 俗に言う完全アウェーってやつだな。


 「やあ、石動ヤマト君、会いたかったよ」


 鳳凰寺アキラが声を掛けてきた。

 一見すると穏やかな口調に見えるが、その実、殺気の様な圧力をビンビンと感じる。


 「奇遇だね、僕も会いたかったよ」

 「あはは、何故だろう?不思議と君とは初めて会う気がしないなぁ」


 笑顔を絶やさず、あくまで余裕たっぷりしたアキラの声が耳に入ってくる。


 「僕もそんな気がするよ……今日は全力で行かせてもらうよ!」

 「ああ、望むところさ!」


 こんな大舞台で【マジカファイト】をするのは初めてだし、その対戦相手がこんな強敵じゃあ緊張しない方がどうかしている。

 正直、さっきから足は震えているし、平常心を保つのにも必死だ。

 だけど、同時にこんな檜舞台で【マジカファイト】が出来るという事に心が踊っている自分がいるのも事実。

 ならば僕は1人の【マジカファイト】の選手として全力で挑むだけだ。


 「それでは、ファイトを始めます!両者スタンバイして下さい!」


 ジャッジ役の係の人に促され、ファイトの準備を始める。


 ファイト用のマシンもいつもの「ウィザード」のマシンより遥かに立派なランクの物だ。


 会場も対戦相手もファイト用設備も全てが規格外、そんな現状が更に自分にもプレッシャーを掛けてくる。


  (……それでも、やるしかない)


 僕は静かに目を瞑り精神を集中する。


 ……そして、静かに目を開き。


 「やってやるぞぉぉぉぉぉ!!!!」


 自らに言い聞かせるかの様に雄たけびをあげた。


 「へえ、やる気十分じゃないか、これは良いファイトが期待できるね」


 アキラも準備が完了した様だ。


 いよいよ、ファイトが始まる。

 色んな人に助けてもらいながらここまでやって来られたんだ。

 皆のためにも、負けられない!


 

 ◆◆◆◆


 後に日本中の【マジカファイト】に影響を及ぼす事になる、世紀の対戦。


 その火蓋が今、静かに切って落とされようとしていた。

 

 

やっと次回からアキラとのカードバトルが始まります。

第二章のラスボス戦、全力で書ききります!


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