13.新たな戦い
ヤマト編
今回から第二部スタートとなります。
第二章はどんどんカードバトルしていきますのでご期待下さい!
ヒロキとの【マジカファイト】から約1ヶ月、今日は日曜日で学校は休みだ。
「それじゃあ行ってきます!」
準備を終えて自宅を出発する。
行先はカードショップ「ウィザード」、前回ヒロキと【マジカファイト】を行った場所だ。
今日は友達と待ち合わせをして、【マジカファイト】の練習をする約束をしていた。
時間ギリギリに店に到着する。
「よっ!ヤマトも今来たところかよ!」
話しかけてきたのは、天川 アラタ、僕の親友でもあり【マジカファイト】仲間でもある。
「うん、アラタもギリギリだね」
「ああ、早く店に入ろうぜ。遅れるとチヒロがうるさいからな」
2人で店に入ると、待ち合わせをしていたもう1人の友達がいた。
「お~、何とか間に合ったわね、2人とも遅刻かと思ったよ」
そう言いながらこちらを振り向いたのは、光月 チヒロ、もう1人の僕の【マジカファイト】仲間だ。
もちろん、アラタと僕の3人で一緒にいるとても大事な親友の1人だ。
ちなみに女の子だがとても活発で男子顔負けの性格をしている。
「悪い悪い、まあ間に合ったから良いじゃん」
「そうそう、さあ【マジカ】の特訓始めようぜ!」
カードショップの一角に設置されている【マジカ】専用のスペースに腰掛ける。
今日はそれぞれが持ち寄ったデッキで模擬のファイトをする予定だ。
「まずは、俺とヤマトでやるか」
「うん、良いよ!アラタはやっぱり【天空デッキ】でやるの?」
「ああ、また父さんに新しいカードもらったからな。かなり良い感じに調整出来てるから楽しみにしてろよ、ヤマトは相変わらず【スライムデッキ】を使ってるのか?」
「うん、僕も色々と試行錯誤してるからね、今日はその成果を見せてあげるよ!」
アラタのお父さんも僕の父ちゃんと同じく冒険者をしている。
その関係でちょくちょくと新しいカードをもらってきてはデッキに組み込んでいる。
しかも、どうやら標高が高い山の上にあるダンジョンを攻略している冒険者らしく、鳥や雷を多用する【天空デッキ】なんてものを作ってしまい、かなりの実力を誇っている。
たまに【マジカ】の大会で優勝したりしてるからね。
「じゃあ私はとりあえず見学で勝った方とファイトってことね。パパからもらった新カードを組み込んでパワーアップした【天使デッキ】の力を見せてあげるから楽しみにしといてね」
チヒロのお父さんは海外で考古学者をしている。
海外の遺跡等に出現したダンジョン等で様々な調査を行っており、もちろんダンジョンの調査は危険なため、冒険者を護衛として雇って調査をしている。
その冒険者が倒したモンスターの【マジカ】を譲ってもらい、チヒロに送ってくれるらしい。
その遺跡には天使系統のモンスターが出現するらしく、チヒロのデッキも必然的に【天使デッキ】なんてものになってしまった。
天使系のカードは日本ではあまり入手出来ないため、対策もあまり打てない。
チヒロもかなりの実力を持つカードファイターとしてこの辺りでは少し有名だったりする。
そして、最近この「ウィザード」でヒロキと激戦を繰り広げ見事大金星を挙げた【スライムデッキ】の石動 ヤマト、つまり僕だ。
【スライムデッキ】のヤマト、【天空デッキ】のアラタ、【天使デッキ】のチヒロ、の3人組は【マジカ】の強者トリオとしては、知る人ぞ知る様な存在になってしまっているみたいだ。
今も僕らが座ってるテーブルには周囲から結構な注目を浴びている気がする。
「何か視線を感じるね」
「ああ、何だか周りから見られてるよな……」
「でも、これって皆ヤマトの事を見てるんじゃない?」
「な、何で僕が!?」
「そりゃぁ皆の前であんな派手なファイトしたら注目されちゃうわよ」
「レアリティ Lのカードまでぶっ放しちゃったからなぁ……」
どうやらこの中で一番注目を集めているのは僕の様だ。
参ったなぁ……
注目されるのはどちらかと言えば好きだけど、こんな注目のされ方は本意じゃないんだけどなぁ。
そんな事を考えながらアラタとの模擬ファイトの準備をしていると、店長がこちらに近付いてきた。
「やあやあ、調子はどうだい?」
「こんにちわ店長、調子は上々だよ」
「今日も3人揃って【マジカファイト】の練習かい?いやぁ、精が出るね」
店長がにこやかに話しかけてくる。
僕たちは最近時間を見つけては「ウィザード」に入り浸っているため、最早常連と言っても過言では無い。
店長の僕らに対する態度も完全に常連に接するそれである。
「そういえば【マジカ】の関東大会ってどうなったの?」
「ああ、そういえば関東大会があったのって先週だっけ?」
「ヒロキはどこまで勝ち進んだのかな?店長は何か知ってる?」
僕たちは何気なく店長に質問をしたが、店長はその質問を聞いた瞬間、下を向いて黙り込んでしまった。
「どうしたの店長?何か変な事聞いちゃったかな?」
「あ、ああ、いや大丈夫さ。関東大会の件だよね、少し言いにくいんだが……」
店長の態度からは嫌な予感しかしなかった。
そうなると余計に気になってくるのが人ってもんだよね。
「どうしたの?関東大会で何か問題でもあった?」
「いや、そういう訳じゃないんだが、ヒロキ君なんだけどね」
「ヒロキがどうしたの?」
「残念ながら1回戦負けだったよ。しかも1ライフも取れずに大差で敗れてしまったらしい」
「なっ!?」
店長の言葉に僕たちは驚きを隠せない。
この「ウィザード」では向かう所敵無しだったヒロキが1ライフも取れなかったなんて……
僕に負けたとは言え、相当の実力者のはずだが……
「関東大会ってそんなにレベルが高いの?」
「いや、レベルは相当に高いがヒロキ君の場合は相手が悪かった。かなり特殊なデッキなのとデッキ同士の相性が最悪だったな」
「相性が?相手は一体どんなデッキだったの?」
「ああ、それは……」
「頼もぉぉぉぉ!!!ヤマトって奴はいるかぁぁ!!!???」
店長が口を開こうとしたその瞬間、店内に怒声の様な声が響き渡った。
な、何だ!?
声がした方向を見ると、入り口の方に中学生くらいの男が立っていた。
どうやら声の主はこの男らしい。
「き、君は!鳳凰寺グループの……」
「ああ、そうさ!俺は鳳凰寺グループ四天王の1人、熔崎 シモン様よ!」
いきなり現れた男は鳳凰寺グループの四天王を名乗った。
……一体何者なんだ?
「店長、あの人の事知ってるの?」
「ああ、彼はさっき話をしていたヒロキ君の関東大会での対戦相手だよ」
「何だって?あの人がヒロキを大差で負かした対戦相手なの!?」
何でこんな所にヒロキの対戦相手がいるのか全くわからないが、ただ事では無いだろう。
「この中にヤマトって奴はいないのかよ!?」
どうやらこのシモンって人は僕を探してここまで来たらしい。
「ヤマトは僕だけど、一体何の用なんだい?」
「あん?お前がヤマトかよ!想像通り時化たツラしてやがんな!」
「何だよ、失礼な奴だな!」
あまりの失礼な物言いにこっちの口調も思わず荒くなる。
「はん、この前関東大会でヒロキって奴をコテンパンにしてやったんだが、その時にヤマトって奴なら俺に勝てる、とか言ってやがったからどんな奴か見てやろうと思ってな」
「わざわざそんな事のために来たのか」
「まあな、ヒロキって奴が想像以上に弱すぎてなぁ、物足りなかった分お前とファイトしてやろうと思ったんだが、こんな奴じゃあ無駄足かもしれねえな、やはり雑魚は雑魚同士つるむんだな」
……何なんだこいつは?
いきなり現れて失礼すぎるだろ。
それ以前にこいつは今何て言った?
「……ねえ、今ヒロキの事を雑魚って言ったよね?」
「ああ?本当の事だろうが、あいつは俺からライフポイントを1ポイントも奪えず無様に負けやがったんだぜ?雑魚以外の何て呼べば良いんだ?」
【マジカファイト】で例えどんなに大差で勝とうとも、相手を雑魚呼ばわりして良いはずが無い。
【マジカ】はもっと楽しくプレイすべきだ。
「……取り消せ」
「あん?聞こえねえな」
「取り消せって言ってんだよ!ヒロキは決して雑魚なんかじゃない!もう頭に来た!許さないからな!」
「許さなかったらどうするんだよ?俺と【マジカファイト】でもするか?」
「望む所だ!僕が勝ったら今の発言は取り消してヒロキに謝れ!良いな!?」
「ああ、良いぜ!まあお前が勝つなんて万に一つも無いがな!」
怒りのあまり、【マジカファイト】で対戦する事が決まってしまった。
だが、後悔はしていない。
何としてもあいつを倒してヒロキに謝ってもらわなければ気が済まない。
「ヤマト、本当に大丈夫なのか?」
「そうよ、あいつ多分相当やばい奴だよ」
アラタとチヒロが心配そうにしている。
「大丈夫だよ、僕もこの1ヶ月でデッキの改造も進めてあるからね」
「ヤマト君、決して油断しては行けない、鳳凰寺グループを侮ると痛い目に合うよ」
店長まで心配そうにしている。
鳳凰寺グループか何か知らないが、決して引くつもりは無い。
あいつを倒して謝罪させる、その事しか頭に浮かんでこないくらいに怒りが込み上げてきていた。
「さあ、そうと決まれば早速ファイトしようぜ!俺の【分解デッキ】でぶちのめしてやるぜ!」
「【分解デッキ】だかなんだか知らないけど僕の【新スライムデッキ】で勝たせてもらうよ!」
こうして僕はいきなり現れた熔崎 シモンと【マジカファイト】で対戦する事になった。
次回、開戦!
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