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9.与えられた力

タクマ編

 ダンジョンに挑む冒険者は様々な装備品を使用できる。

 装備品は大きく分けて武器、防具、アクセサリの3種類に分類可能だ。

 今僕の右腕で虹色に光り輝いている腕輪は恐らくアクセサリに分類されるだろう。

 願い事の内容からして間違いなく強力な性能を誇っているはずだが……


 早速ダンジョンナビゲーターの鑑定機能で腕輪を鑑定する。

 

 【虹晶神の腕輪】 レアリティ レジェンダリ

 装着時全ステータス +100 獲得経験値 2倍 HP自動回復大付与 他者譲渡不可


 いやいや能力が破格すぎるんだが。

 

 一流の冒険者でもこんな装備は持っていない気がするんだけど……

 しかも、他者譲渡不可って事は僕の専用の装備ってことか?


 『どう?気に入ってくれたかな?ちょうど一流の冒険者ってこのくらいかなー?ってイメージして作ってみたんだ』

 「あははは、なるほど。いやいやありがとうございます。これで僕も一流の冒険者の仲間入りかなー」

 『何かセリフが棒読みな気がするんだけど……まあ良いや。それじゃあ次は2つ目の願い事を言ってもらおうかな』


 どうやら、願いは本当に叶えてくれるらしい。

 それなら、次の願いは慎重に考えなければならない。

 しばらく考え込んだ後、徐ろに口を開いた。


 「2つ目の願いは、強力な【マジカ】が欲しいんですが……」


 次の願い事は息子のヤマトのために使うことにした。

 自分が新米冒険者なばかりに満足なカードを与えてやれない不甲斐さは身に染みている。

 ヤマトの喜ぶ顔が見たいがために、2つ目の願い事を使うのは自然なことだろう。


 『【マジカ】? ああ、確か魔物の因子が刻まれたカードの事だったよね。強力なカードかぁ。なるほど……ちょっと待っててね』


 そう言って【レインボー・ゴッド・スライム】は黙り込んだ。

 1分程待っただろうか、再び口を開く。


 『……これでよし、君の記憶を読み込めた。【マジカ】とやらの仕組みなんかも理解出来たよ』

 「本当ですか?じゃあ!」

 『うん、これで2つ目の願い事も叶えてあげられるね』


 そう言って虹色の光を放ち出すと、目の前に数枚のカードが出現した。

 一番上にあるカードが目に入る。


 【レインボー・ゴッド・スライム】 レアリティ レジェンダリ


 「……こ、このカードは!?」

 『うん、僕のカードを作ってみたよ。【マジカファイト】でも使える様にしておいたから息子さんに渡すと良い。性能も文句ないくらいには高性能にしておいたから』

 「あ、ありがとうございます!それじゃあ他のカードも……」

 『それは僕の眷属達の中でも特に強力なモンスター達をカード化しておいたんだ。これらを全てデッキに組み込めばそうそう負けないんじゃないかな』

 「なるほど……いやすごいな」

 『やっと僕の凄さを理解してくれたかな?さあいよいよ最後の願い事を聞こうか?』


 実は最後の願いは決めてある。 


 「わかりました。それでは最後の願いは……」



 ◆◆◆◆



 「まだ、見つからないのか!?そろそろ日が暮れるぞ!」

 「ダンジョン管理局には届けたのか?」



 ダンジョン内の崩落に巻き込まれ、社員の一人が行方不明になってしまったことにより、会社では蜂の巣をつついた様な大混乱に陥っていた。


 今日の仕事は全て中止となり、全社挙げての大捜索が行われようとしている。


 会社の中でも優秀な部長、課長を始めとした精鋭達がダンジョンの入り口に集合し、今にも突撃しようとしていた。


 「よし!それでは石動君の捜索に向かうぞ!二次災害だけは気をつける様にな!」


 陣頭指揮に立つダンジョン部のトップである井上部長の号令が号令を出している。





 ……その様子を入り口の影から僕は眺めていた。


 ああ、やっぱりとてつもなく大事になっている……


 あれから最後の願い事を叶えてもらった後に洞窟の入り口まで転送してもらったのだが、想像以上に会社の皆に心配を掛けていたみたいだ。

 そうそうたる面々が勢揃いして行方不明になった社員……つまり僕の探索に出陣しようとしている。


 どうしよう、何か出て行くタイミングを逃してしまったというか、すごく気まずい感じになってる。


 ……まあ自分が全て悪いんだけどね。


 さて、どうしたもんかと頭を抱えていると、探索に参加している社員の一番前で人一倍憔悴している社員を見つけた。


 ……田中主任だ。


 恐らく自分とペアになっている間に、相棒が行方不明になってしまったのだ。

 とてつもなく責任を感じているのだろう。

 悲壮感を漂わせながら思いつめた表情で捜索隊に参加している。


 ……あの時田中主任は自分を止めようとしてくれていた。


 ゴールドスライムに目が眩んで暴走したのは僕だ。

 ということはこの騒動の責任は全て僕にある。

 それなのに田中主任が責任を感じているのは間違っている。


 そう考えた瞬間、こんな所で隠れて様子を伺っている自分が急に恥ずかしくなってきた。


 ……素直に謝ろう……


 そう考えた僕はおもむろにダンジョンの入り口から姿を現した。


 今にも突入の号令を掛けようとしていた井上部長を始めとした捜索隊の社員達は、呆然と僕の姿を眺めた後に一斉にこちらに駆けつけてきた。


 「石動君か!?生きてたのか!」

 「大丈夫なのか!?どうしてたんだ!?」

 「とにかく良かったぁ!おい、会社へ連絡を入れろ!!!」


 最早怒号に近い叫び声が響き渡る中、いきなり両手で肩をガッと掴まれた。


 ……田中主任だ。


 僕の顔をじっと見つめた後に……


 「良かったぁ!生きてたぁ!!!」


 そう叫びながら全力で抱きしめられた。

 田中主任の目からは涙が溢れ出している。


 ……本気で心配してくれていたんだな。


 そう思うと、僕の目からも涙が溢れ出してきた。

 また、それと同時にとてつもなく申し訳なく感じてしまった。


 「本当に……申し訳ありませんでしたぁ……」


 そう呟きながら号泣する僕の頭を井上部長がガシッと掴んで。


 「……全く人騒がせな……まあ生きててくれて本当に良かった。報告は後だ。今日はゆっくり休め、おおい!こいつを病院に連れて行ってやれ!」

 「はい!」


 僕は井上部長の指示で病院で検査を受けることになった。

 怪我は全く無いと伝えたが、念のために病院で検査してこいの一点張りだった。


 病院に着くと会社から連絡をもらった家族達が待っていた。

 洞窟で行方不明になったと聞かされていたらしく、3人とも号泣していたのだろう。

 揃って目が腫れてしまっている。


 「父ちゃん!」

 「生きてて良かった!」

 「何やってんのよ!もう!!!」


 そう叫びながら駆け寄ってくる家族達を見て、自分の暴走でどれだけ心配を掛けてしまったのだろうか?とまた罪悪感が込み上げてきた。


 「いやあ、本当にごめんよ……」


 そう言いながら妻や子供達を抱きしめる。


 「もう、無茶しないでって言ったよね?」

 「父ちゃんがいなくなったら嫌だぜ!」

 「金輪際、こんな無茶はしちゃ駄目よ?わかった?」


 家族達にひたすら説教をされながらも本気で心配をしてくれているのが伝わってきた。

 

 「うん、もう二度とこんな真似はしない、それは約束するよ」


 家族と固い約束を交わした後、念のため病院で検査をすることになった。

 検査をした限りでは怪我等は全く発見されなかった。


 念のため1泊だけ入院することになり、翌日に何も問題が無ければ退院という処置に決定した。


 また、井上部長より連絡が入り、明日に会社からの事情聴取が入るということになった。


 これに関しては、自分が蒔いた種だ。

 変な言い訳等をせず、しっかりと今回の騒動の責任を取ろうと決意をした。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 無事に家族と再会できて良かったです!取り敢えずは一件落着ですね。
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