8.奈落の底で待つものは
タクマ編
……こ、ここはどこだ!?
【ゴールデンスライム】と一緒に地面の崩落に巻き込まれた僕は洞窟内で目を覚ました。
確かに【水晶の洞窟】にいるはずなのだが、目に飛び込んでくる光景は今までいた洞窟とは明らかに違う様相を呈している。
洞窟内の壁や天井など辺り一面がキラキラと光る結晶の様な物に覆われているのだ。
「何だここは?こんな場所が【水晶の洞窟】にあったのか?」
慌ててダンジョンナビゲーターを起動して現在地を確認する。
そこには現在地:地下8階と表示されていた。
地下8階だと!?
このダンジョンは地下7階までしか無いはずたろう!?一体どういうことだ!
あるはずの無い階層を表示するダンジョンナビゲーター。
まさか、落下の衝撃で故障したのだろうか?
……参ったな、とにかく脱出口を探さないと。
不安に駆られながらも、周辺を探索する。
1時間程、ウロウロしただろうか、焦りは膨らみ体力も限界に達しようとしたその時、奇妙な光景が見えた。
あれは……?金色の光?それもあんなにたくさん!?
視界に飛び込んできたのは辺り一面に点在する金色のスライムだった。
目に見える範囲だけで10匹程度はいる。
まさか!?これが全部【ゴールデンスライム】なのか!?
信じられない光景を目にした僕は呆然とした後、【ゴールデンスライム】の群れ目がけて駆け出していた。
ダガーナイフを構え、一番手前の【ゴールデンスライム】を仕留めようとした時、辺り一帯に謎の声が響き渡った。
『……やっと来てくれたね。待ちくたびれたよ』
同時に全ての【ゴールデンスライム】が眩い光を放ち始めたかと思うと、次の瞬間姿を消してしまった。
何だ今の声は?【ゴールデンスライム】はどこに消えたんだ!?
混乱する僕の耳に再び声が聞こえる。
『さあ人間よ、奥の神殿まで来てくれるかい?』
……神殿だって?そんなもの一体どこにあるんだ。
思わず目を凝らすと奥の方に石造りの建造物が見えた。
あれが神殿か?
『そうだよ。さっさと神殿まで向かうと良いよ』
とにかく行くしかないか……
幾許かの不安を覚えながら、神殿へ足を運ぶ。
その神殿は、そこら中に立派な装飾が施されてはいるが、長い間使用されていないらしく、完全に朽ち果てていた。
不気味だな……一体奥に何があるんだ?
ヘッドライトの明かりを頼りに真っ暗な神殿を進んでいく。
とうとう最奥部と思われる場所にたどり着いた。
そこは、大きな空間の中央に巨大な祭壇が置かれていた。
何だあの祭壇は?
祭壇の近くへ向かうと、再び謎の声が聞こえてきた。
『さあ、僕に憑代を捧げるんだ。復活の礎となる母体を……』
「捧げる?一体何を?」
『何でも良い、魔物の素材や魔石、僕が再び魔物の神となるべく、母体となる魔物の因子を含む憑代を捧げるんだ』
なるほど、素材や魔石を捧げれば良いのか、いや待てよ?今日、入手した素材や魔石は田中主任に渡してしまった。僕が持っているのは【マジカ】だけだ。
「あの……」
『何だい?』
「【マジカ】でも良いんですか?」
『【マジカ】?ああ、魔物因子を刻んだカードのことか。構わないよ』
【マジカ】でも大丈夫らしい。
マジックボックスから1枚のカードを取り出し祭壇に捧げる。
『こ、これは……【ブルースライム】の因子か、よりによって僕の母体に最弱のスライムを選ぶなんて!』
「いや、だって【ブルースライム】のカードしか持ってなかったし……」
その瞬間、祭壇が強烈な光を放ち出し、【マジカ】を取り巻き始めた。
『まあ良いか、どうせ取り込んだら同じだろうし……さっさと復活して世界を支配しようかな……』
謎の声の主は、何やら物騒なことを口走りながら集中し始める。
いつしか光が収束しマジカがあった位置にモンスターの姿が現れた。
それは虹色に光り輝くスライムだった。
慌ててダンジョンナビゲーターで鑑定を行う。
【レインボー・ゴッド・スライム】 ランクSSS
「な、何だって!?ランクSSSなんて聞いたこともないぞ!?」
『へへん、僕をそんじょそこらの魔物と一緒にしないでよ。まあ君のおかげで僕は復活することが出来た。礼を言うよ、ありがとうね』
ひょっとして自分は、とんでもないモンスターを世に解き放ってしまったのではないか?そんな、疑念が頭によぎる。
「あの……あなたは復活して一体何をしようとしてるんですか?」
『ああ、僕の目的はこの世界の魔物の頂点に立つことだ』
「魔物の頂点に!?この世界中のですか?」
『この世界には僕と同じ神の力を持つ魔物が僕を含め8体存在するんだ。僕はその中で最強の存在にならなければならない』
このモンスターと同格っていうことはSSSランクモンスターのことか。
こんなのが後7体も存在するなんて……
『よし!それじゃあ復活させてくれたお礼に願い事を3つだけ叶えてあげるよ。遠慮せずに何でも言ってみてね』
願い事を3つだって?
何かどこかで聞いた様な話だな。
「本当に何でも良いんですか?」
『ああ、どんな願い事でも良いから言ってみてよ』
参ったな……いきなりそんな事を言われても。
しばらく頭を抱えて考える。
……よし、それなら一つ目の願いは……
「まず1個目の願いは……僕を一流の冒険者にして下さい」
『へえ、まずは力を望むのか。よしじゃあ君を最強の……ってあれ?一流?最強じゃなくて?一流って言った?』
「え、ええ、いきなり最強の冒険者とかちょっと荷が重いというか……」
『そ、そうなんだ。まあ良いや。それじゃあ一流かぁ……えーと、ちょっと待ってね……よし!こうしようか……えい!』
【レインボーゴットスライム】が突如として、眩い光を放つ。
その光が僕の右腕に集まり何やら固まっていく。
最終的には虹色に光る腕輪になった。
こ、これで一流の冒険者になれるのか!?
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