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自分が特別な存在だと改めて知りました。


数日後、仕立て屋がオーダーした衣装を仕上げてきた。


予想以上の仕上がりに思わず驚いてしまう。



「予想以上に素敵な仕上がりだわ。

それも短期間にココまで仕上げてくるなんて凄いわ。大変だったでしょ?

お代は、お父様に頼んで奮発してもらうわね。

他のオーダー品も仕上がりが楽しみっ。」


仕立て屋は、満面の笑みで帰っていく。

他の品も数日中に全て納品すると言っていたので、報酬は弾んであげなきゃと父に伝えにいく。


父の書斎の扉をノックすると、リヒトが出てきた。そして、待ってたといいソファーに促される。



「仕立て屋が仕上げた物を持って来たと聞いた。

正装も準備が出来た様だし、明日にでも城に行くぞ。エドワードが、王城に明日、返事をすると連絡を入れた。


明日、俺が来るとは思って無い王の顔を見るのが楽しみだ。ルナ、オマエも一緒に行くから仕立て屋に自分のドレスも頼んだんだろ?


それでだ。

俺はオマエの婚約者という事で行くぞ。

人間社会に則り、国王の許可を貰う事にしよう。」



婚約者と聞いて、思わず驚いて否定的な言葉が口から出てしまう。


「婚約者?結婚とか考えられないって言ったばかりじゃないっ。」


すると、リヒトは哀しそうな顔だが何処までも優しい口調で


「分かってる。

でもな、現状ではオマエは政治的に利用される立場なんだ。この国では女の立場は弱い。

選ばれる立場であって選ぶ立場に無いんだ。

俺の婚約者にする事で、それらから守れる。


いつか、オマエが他の男を選ぶなら婚約なんて無かった事にすれば良い。

俺を利用しろ。それが一番、オマエが自由で居られるんだ。

分かるだろ?貴族社会の事は俺よりオマエの方が心得てると思ったが?


俺が王族を潰すのは簡単だ。

だけどな、それは最終手段だ。国が混乱して一番困るのは平民だ。分かるだろ?

それぞれの領主が混乱すれば、打撃は平民へ行く。そう言う場所だろ?人間社会ってやつは。」



リヒトの言う通りだ。

一刻の王が、急に崩れたら混乱するのは必須。

恩恵を受けていた貴族は混乱するだろう。

そして平民は誰が権力を握ろうと関係無いが、その混乱で職を失ったり支援が貰えずになんて事になれば一大事だ。


「ルナ。今の国王は3つの国の均等が崩れるのを恐れている。

それは、自分が他の国の王に比べて劣ってる事に劣等感を持ってるからだ。魔王の血を受け継ぐ者だと言う割に能力が、そこまで高く無い。だから、魔王の血も薄れたなんて噂が他国から聞こえてきてしまっててね。


そして、スーベニアの王太子の大天使ラファの血を、より濃く受け継いだなんて噂まで相まった。


なんとしても力が欲しいんだ。

それがルナであり、ハインズ家なんだよ。


これは、私の予想だが。

第三王子を我が家の婿にするのは勿論だが…。第二王子を王太子にして、王太子妃は何処かの令嬢だとして第二王子との間にオマエとの子を成す事も考えてると思うんだ。

あの王が考えそうな事なんだ。


我が家の先祖が、なぜ影に回ったか分かるか?

一国の王になる事で自由が無くなる事を嫌ったからだ。さすが魔王の血だよな。権力より自由を選んだんだ。


けれど、王族は少しずつハインズ家を縛り付けて行ったんだ。爵位を与え国を守る門番という称号を与え、待遇してる様で縛る事をしたんだ。

貴族社会を利用してね。


俺は、ずっと疑問だった。

私の父は、とても自由な人だった。

王にも媚びず、自分を貫く人だった。

その分、私が苦労したけどね。


父と母の事故が人為的なものだった気がしてならないんだ。その事もあって、貴族や王族と交流を深めたと言う事もある。

決して私が、王に忠誠を誓っての事では無いんだ。それは魔王も理解してる。


だから、今までの俺の行動が無駄にならない様に魔王様は今回、穏便に済ます方法を取ってる。


けれど、それで王が大人しくしてればの話だ。

我が家を監視してる奴等もそうだが、相当な暗躍者を王は持ってそうだ。


魔力や気配を消すのもお手のものだ。

流石に魔王は分かるらしいが、私達では感知さえ出来ない。

最悪は俺の暗殺さえ考えるかも知れないからね。


オマエの側に魔王様が居てくれるのは俺としては安心なんだ。分かってくれるか?」



父が、そう語る。父は父なりに今まで孤独に立派な貴族を演じながら祖父母の死の真相を調べて居たのかも知れない。

それに、この国の王が善良な人間ではないと思えてくる。


国の為と言うより自分の為に動く様な人なんだと思うのだ。



「分かった。私も混乱は望んでないの。

ただ、私が王族にとってそれ程までに重要人物だと認識してなかったから…。

けど、少し深く考えたら当たり前よね。


浅はかな考えしか出来なかった私が恥ずかしい。

魔王の血って、そんなに価値があるのね。


私は、実感が湧かないのよ。

他の人と何が違うのか分からない。

魔界で少しずつリヒトが教えてくれる予定だったのに、たった数日よ。

理解する前に帰ってきてしまったの。


私は、どんな力を秘めてるって言うの?

普通の人間と何が違うの?ちゃんと知りたい全て。」


感情的になる私を宥める様にリヒトが私の頭を撫でる。


「分かったから落ち着け。

魔王の血を受け継ぐ者は、普通の人間と違って体内から魔素が作り出せる。だから魔力切れなんてしない。だから他の人間の誰よりも強い。

普通の人間は外部から魔素を取り込む、それをどれだけ溜め込めれるかが魔力量の違いに繋がる。

使い切れば暫く魔法は使えなくなる。魔力切れだ。

そして普通の人間は使える属性は1つ。

精霊と契約する者で複数の属性を扱える。

精霊王となれば全属性だな。


魔王の血を受け継ぐ者は、全属性プラス無属性が扱える。天使の血を受け継ぐ者は、全属性プラス光属性だ。


無属性魔法は、魔法無効化を始め魅了、それに相手の特別な魔法をコピーする能力を始め他にもある。一度見た魔法は光属性魔法だろうとコピー出来る。だから俺は神聖力なくヒールが出来る。

『無』とは何もないと思われがちだが、『全てある』と言う意味でもあるんだ。


要は無敵だ。俺の力より劣るが確実に人間界では最強だろう。

まぁ〜、この200年くらいは国同士の争いがない時代だ。表向き平和な世界になってる。


その能力を使う機会もないだろうから、今の国王が、その能力を全て把握してるとは思えない。

把握してたら、この家をどうにかしようなどと無謀だと思うだろうからな。


ルナ。オマエが秘めた力は、この世界を自分の物に出来るほどの力だ。

それを人は、恐怖に思うかも知れない。人が魔王を恐れる様にだ。


人に害を及ばさなくても、そんな力を秘めるってだけで恐怖の対象なんだよ。

だから、俺はその能力を教える気はない。

逆に制御する方法を教えてきた。

人間らしく生きる為だ。オマエ達一族は魔族ではないし魔界に住んでる訳じゃない。


人間界で生きるのに必要のない力だ。

オマエも普通に生きたいだろ?

この世が戦乱の時代なら兎も角、今は違うだろ?


まぁ〜、それでもだ。

全属性が使えるってだけで特別なんだ。

そんな奴を欲しがる者は多い。オマエを狙ってるのは国王だけじゃないぞ。他国や他の貴族だって、オマエと婚姻を結びたいと思う奴は腐るほど居るんだ。


それをオマエに分からない様に断り続けたエドワードに感謝するんだな。


産まれた時から、オマエとの婚姻を切望する手紙は後を経たないって事だ。

エドワードがひた隠しにしてきたからオマエは自分の価値が未だ分かってない。


宝石でいう所の色付きダイヤみたいなもんだな。

オレンジやピンク、ブルーダイヤみたいに高値が付くのと一緒だよ。


魔王の血は美貌も持ち合わせる。

自分が一般的な同い年の女より女性の魅力があると自分でも思うだろう?

幼い頃から、異性を虜にしてきたはずだ。


だからエドワードは、家に囲った。大事に大事にな。エドワードだってそうだ。

その美貌で、幼い頃から女を魅了した。

祖先達が皆、そうだった様にな。


好きな者と一緒になるのは理由がある。

望まぬ好意が異性嫌いに繋がるからだ。

それを感じさせない相手で無ければ一緒には居られないだろう?


だから、ルナ。オマエにも好きにしろとエドワードは言うのさ。自分も経験したからだよ。


これで分かったか?オマエが特別な意味を。

それと、もう一つ。


これは、時が来たら話すよ。

今は、オマエの重荷になるだけだ。」



その、もう一つが気になるがリヒトの気遣いなのだろう。きっと今、聞いても私が悩み事を増やすだけなんだと理解した。



「分かった。

お父様もリヒトも私の為に動いてくれてるのね。

私は、ずっと守られて来たんだね…。


ありがとう。


私、もっと強くなる。

守られなくても大丈夫な様に。


それに、政治的にも外の世界を理解したい。

だから、私に教えて全て。

隠し事は、もうしないで。」



そう言うと、父もリヒトも頷いた。


けれど、これからも私は二人に守られる事になる。一筋縄では行かないのだ。








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