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ポンニチ怪談

ポンニチ怪談 その65 永久議員バッジ

作者: 天城冴

マスコミに金をばらまき、SNSで敵対野党をつぶしまくり、あらゆる手をつかって、ほぼ議席を独占した与党ジコウ党。意気揚々と議員バッジを胸につける議員たちだったが…

ニホン国の議員選挙から、しばらくたって。当選者たちが国会に集まった。ほぼ大半がある党、ジコウ党からの選出だった。幾人かの無所属議員がいたが、実はジコウ党からの応援を受けていた。さらに数少ない野党メイジの党でさえ

「いやー、これからジコウ党と連立を組めるんだよなあ」

「ようやく、国政政党でしかも、実質与党だよ」

などと話すものばかり。

与党ジコウ党の古参の議員たちは満足そうに

「男女平等だの人権だのウルサイ野党どもはみな、マスコミだのSNSだのを駆使して、追い出したし。じわじわとリベラル勢力の力を削ぎ、マイマイナンバーで管理体制をすすめて反対派の就職、結婚などを裏で妨害したかいがあった。国会を開いたら、すぐ緊急事態宣言を発令して実質選挙が二度とできないようにすれば、儂らは死ぬまで議員だ」

と、民主主義国家の議員とは思えぬセリフを口にしていた。

 事実上の一党独裁を実現したジコウ党の議員たちは意気揚々と議事堂にはいって、配られたばかりの議員バッジをつけた。

パチン

「あれ、なんだか、これ前のバッジと違わないか?」

「そうか?前のものは、いったんすべて回収されてしまったからな。なんでも今回の選挙は特別、わがジコウ党がようやく完全にニホン国を支配できる、永久に議員でいられることになるんで、特製のバッジを作ったということだが」

「それで、こんなに重いのかな。それになんだか留め具がキツイというか」

「そういわれれば、胸のあたりがチクッとしたが…。あれ」

自分の胸に手をあてた議員の指先にぬるっとしたものがついていた。

「ち、血だ」

「ど、どういうことだ」

「バッジをつけたあたりから、血、血が」

「こ、このバッジ、服を貫いて、ひ、皮膚まで刺さっている」

「なんてことだ、どうして」

「誰がこんなものを作ったんだ」

「いつものところに発注したつもりだったが、便通はどうなっているんだ、NETTは」

議員たちは狼狽した。

高齢の議員の何人かは腰をぬかし、失禁してしまうものもいた。

若手の議員も青ざめた顔だ。だが、何人かの議員は

「と、とにかく、ここから出て病院へ」

「そうだ、このままでは大変なことに」

と、議事堂の扉の前に駆け寄るが

「あ、あかない」

「なぜだ、いったい何が」

ビクともしない扉にむらがる議員たち。

「閉じ込められたのか?何が起きているんだ」

「ここにいるのは国会議員たちばかり何だぞ」

“誤魔化しの選挙でね”

“怪しげな宗教団体を使ったり、大きな会社の人たちにライバルを攻撃させたり、汚いやり方でね”

子供のような大人のような声。

「お、おい聞こえたか、今の声。小学生の女の子みたいだったが」

「あ、ああ、だ、だけどどこから…」

周りを見渡しても子供の姿など、どこにもない。

当たり前だ。今日は国会議員の初登庁の日。議会関係者しかいないのだ。

ましてや、ここには今回当選した国会議員しか…

「ま、まさか」

「お、俺たちを狙って」

“不正やって、コクミンをダマした悪いオジサンたちだよね”

“我が党だけーなんてドクサイだよね、ミンシュシュギとかじゃないよね”

“永久に議員でいたいんだって”

“だから、議員バッジをずっとつけていられるようにしてあげたんたよ”

“心臓に届くくらいの針が付いていれば、絶対抜け落ちないよね”

“それにさ、セシュウって血が大事とか、良い血統とか言ってたよね。その血でコクミンを豊かにしてくれるんでしょう。どんどん流してね”

“そうだよ、最後の一滴まで床に染み込ませてね。そうすれば、この国はよくなるんでしょう”

恐怖におののく議員たち。

「な、なんなんだ、ワ、訳が分からない、助けてくれ」

「こ、子供が何で、い、いやそんなことどうでもいい、早くこのバッジを取って医者に」

メイジの党の党首がバッジを一気に引き抜いた

ぶしゅううう

と、彼の血が一面に飛び散る

「アワワワワ」

口から泡を引いて倒れる党首。泡には血が混じっていた。

“アハハ、派手にやっちゃったねえ”

“だから、言ったでしょう、永久議員バッジだって、絶対に外せないよ”

彼女?等の声に抗い何とか抵抗しようとする議員たちだが

「そんな馬鹿な…、とにかく…ここから」

「…そうだ、逃げ…」

声に力がなくなっていき、次第に意識が遠のいていく。

“ちゃーんと心臓まで届いたからねえ、もうそろそろ動けなくなるよ”

“どうせ、生きていたってロクなことしてくれないんだもん、せめて血を流してよ。国のために血を流すのは立派な事なんでしょう”

“うーんと血を流してね。そうしたら、この中でずーっと議員でいられるよ。死体だけど”

“どうせ、生きてても死んでても同じことでしょ、この人たち。自分の子供ですら、道具みたいにしか思ってないもん、ずっと前からニンゲンでも生き物でもないみたいだよ。議員でいられれば、どうでもいいんだよ、他の人が苦しんでも、悲しんでも”

“じゃあ、ここで死体でも、いいよねえ。議員でいられるんだから”

どこからともなく聞こえる会話は議員たちの死体の上で、いつまでも、いつまでも続いていた。


また選挙がありましたが、あるだけまだマシってことにならないとよいですが。その前に各種の原子力人災だの無茶ぶり開発人災だの、備えてりゃいいのに備えを怠って被害拡大の自然災害だので大ダメージをうけそうですね、どこぞの島国は。

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