08 交流
「こんにちは、フォリスさん」
こんにちは、サイリさん。
「すみませんが、避難、よろしいですか」
シュレディーケさんは、今日は終日お出かけですから、安心してあちらの木陰でごゆっくり。
「ありがとうございます」
「では、おやすみなさい」
彼は、シュレディーケさんの友人、サイリさん。
エルサニア王都の北に位置するエルサニア大森林で暮らしている、僕と同い歳の男性。
エルサニア王都にある『ルロリーサよろず相談所』という何でも屋の所長さん。
"若仙人"という二つ名で呼ばれている著名人で、いろいろとお忙しい方なのですが、時々僕の家に息抜きに来ます。
僕と同様、騒がしいのは苦手だそうで、静かなところでのんびりしたい、と。
で、休みの日に僕の家に来て、
zzz……
持参した組み立て式ハンモックを木陰に用意して、お昼寝。
サイリさんは、こことは異なる世界から召喚された召喚者だそうですが、いろいろあって大家族の家長に。
家族思いの優しい方なのですが、たまにはひとりでのんびりしたいと。
で、静かな生活を好む僕と気が合って、時々僕の家に避難してきて、お昼寝。
zzz……
安らいだ良い寝顔です。
では、良い夢を。
---
お昼寝から目覚めたサイリさん、すっきりとした表情。
おみやげのお茶とお茶菓子で、ふたりで午後のお茶。
とても美味しいですね。
「うちのプリナさんの自慢のシュークリームなんです」
いろいろとご馳走さまです。
僕もシュレディーケさんも、料理の方はアレなので、こういう美味しいおみやげはとても嬉しいです。
「フォリスさんのお宅にも、メイドさんが必要みたいですね」
えーと、今はまだ、かな。
メイドさんのいる快適な暮らしよりも、同居の気苦労の方が……
そもそも、僕の稼ぎではメイドさんなんて。
「生活のペースを乱されたくないという気持ち、よく分かります」
「僕も家族友人に恵まれている今の生活にはとても満足しているのですが、以前ののんびり気ままなひとり暮らしの頃も懐かしいのです」
「だから、この場所に避難させてもらえること、すごくありがたいのです」
これからも、ゆっくり安らげる場を守るため、お互いがんばりましょう。
「はい、困ったことがあったら、なんでも相談してくださいね」
「それはそうと、メイドさんの件、よかったら考えてみませんか」
「僕の周りにはめっちゃやたらとメイドさんが多いのですが、みんなからフォリスさんのご要望通りのメイドさんを紹介してもらえるかも、ですよ」
えーと、保留、ですね。
正直、シュレディーケさんのお相手でいっぱいいっぱいなんです。
「フォリスさんに出会えたことを凄く喜んでいましたからね、シュレディーケさん」
「僕は、とってもお似合いだと思いますよ」
もう少しだけ控えめにしてもらえるとありがたいのですが、その、いろいろと。
「ずっと独りだったので、寂しがりやさんなんですよ、シュレディーケさん」
「いろいろと大変でしょうけど、いっぱい甘やかしてあげてください」
……善処します。
シュレディーケさんの友人さんたちは、皆さん良い人ばかり。
僕が静かな生活を望んでいることを理解してくれていて、
今のところは挨拶程度の訪問のみ。
こういう茶飲み友達はサイリさんだけです。
「皆さん本当に良い人たちばかりなのですが、しっかりと線引きしておかないと、猛烈ハグ魔のお姉さん方が『ゲートルーム』から押し寄せて来ちゃいますよ」
「僕の家はもう手遅れですが、フォリスさんは自分を見失わないよう、頑張ってくださいね」
なにそれこわい……




