05 事情
家に着いた途端、シュレディーケさんのマジックバッグが開放された。
居間に、大量の荷物が……
いや、お礼の品なのでしょうけど、申し訳ないですがよく分からない品物を置いていかれても。
「もちろん、一品一品、全て説明させてもらう」
今からですか。
「大丈夫、準備は万端だ」
えーと、マジックバッグから取り出した物は、テント?
「庭の隅をお借りする」
……泊まり込みですか。
「もちろん、これらの物品だけでは命の恩人に対して失礼千万」
「家事は苦手だが、この身をもって誠心誠意奉仕させてもらう」
悪いけど、すごく迷惑です。
「私はこれまで、自身の全てを懸けて"乙女の純潔の誓い"を守ってきた」
「あの時、全てをさらけ出したのに、今なお純潔であること」
「これこそがフォリスさんに我が生涯を捧げる理由」
「覚悟は出来ている」
"乙女の純潔の誓い"って、結婚する人以外には裸を見せちゃダメってことでしたっけ。
確かに見ちゃったけど、治療行為って別だと思いますよ。
「肌をさらしてなお純潔を守っていること」
「それこそがフォリスさんの類まれなる誠実さの証し」
「我が生涯を捧げるにふさわしい殿方」
さっきからシュレディーケさんの都合ばかりですけど、僕の気持ちはお構いなしなんですか。
「全てを捧げると誓ったのだ」
「この身体のみならず、心まで欲してもらえるよう、努力は惜しまない」
……うん、事情は大体分かりました。
とりあえず、そのテントと居間にある品をマジックバッグにしまってください。
外で寝て風邪でもひかれたら、看病するのは僕ですし。
「その優しさこそが、まさに我が主人たる器の証し」
というわけで、突然同居人が増えました。
シュレディーケさんが冷静になってくれたら、帰るよう説得できる、と思う。




