04 流儀
朝、いつもより早めに起きて出発の準備。
今日売るものはしっかりと準備済み、買うべきものもしっかりと確認済み。
それじゃ、行きますか。
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何事もなく、村に到着。
いや何事か、あるようだ。
仮設冒険者ギルドの前に、村のみんなが集まってる。
何やら揉め事の様子。
「いっしょに行こうぜ、お嬢ちゃん」
ガラの悪い連中が3人、ギルドの前でたむろ。
見たことない顔の、流れ者の荒くれ者っぽい連中。
「断る!」
男たちに絡まれているのは……シュレディーケさん。
何事ですか、これ。
「フォリスさんっ、良いところに!」
ミュネさんが手招き。
ちっとも良くないと思うけど。
えーと、僕の家に向かおうとしたシュレディーケさん、森歩きできる案内人を募集しようとしたら、変な連中に絡まれて困っている、と。
「文句あんのか、小僧」
「田舎もんがっ」
「かかってこいやぁ!」
3人、息ぴったりですね。
一緒になって喚いています。
問答無用って感じ。
すみません、ミュネさん。
やっちゃっても良いですよね、これ。
「はい、村の娘たちにもあんな態度ですし、嫌がる女性に無理強いするなんて犯罪者確定ですね」
「再三警告しましたが態度を改めませんので、いつも通り遠慮なくお願いします、フォリスさん」
では、遠慮なく。
弓を、構える。
狙いは、一番偉そうな男の、首。
「やんのかっコラァ!」
うん、やる。
トスッ、ブスリ。
首に、命中。
唖然として棒立ちの男ふたりに、
トスッ、ブスリ×2
3人の死亡を確認したギルド職員のレグロさんが、所持品を調べ始めた。
ギルドカードを所持していればすぐに身元が分かるし、こんなヤツらなら手配書がまわって来ているかも。
「……容赦無いのだな」
そうですね、シュレディーケさん。
この村の平穏を脅やかすヤツらは、僕たちが犯罪者認定したら未遂でも容赦しません。
大きな街なら衛兵や自警団がなんとかしてくれるのでしょうけど、こんな小さな村ではみんなで助け合わないと。
「この村の流儀、か」
もちろん僕たちは無法者ではありませんから、あいつらみたいに誰彼かまわず脅したりしません。
でも、親しい人たちに不幸が及ぶくらいなら、被害が出る前に対処します。
ほとんどの場合、被害って取り返しがつかない事ばかりですし、
誰かが酷い目に遭うよりも、酷い目に遭わせないよう先手を打つ方が良いです。
「殺すのは……」
僕たちは神様じゃないから、先のことは分かりません。
人が何かをしでかすかどうかの判断材料は態度や行動だけです。
何度も言いますが、普通に接してくれれば、普通に対応します。
相手が理不尽な行為でどうこうしようっていう態度なら、こちらからもどうこうされる覚悟があると判断します。
それはそうと、忘れ物ですよ。
「……ありがとう、フォリスさん」
「重ね重ねの不始末、誠に申し訳ない」
いえいえ、お気になさらず。
では、僕はこれで。
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売り買いとか、あの連中の処理とか、村でやるべきことは済ませたので急いで帰ります。
でも、なんでずっとついてきてるんですか、シュレディーケさん。
「フォリスさんのお宅に行かねばならん」
僕に用事でしたら、今すぐどうぞ。
「いや、持ちきれないぞ」
何をですか。
「このマジックバッグに、お礼の品々が入っている」
結構です。
「いや、是が非でも受け取ってもらう」




