18 謁見
ルルナさんの案内で、城内を粛々と進みます。
雄大なエルサニア城、当然中も広い。
もしルルナさんとはぐれたら、即、迷子になって遭難確実。
ルルナさんの後ろ姿、愛らしさ満点のメイド服姿から目を離さぬよう、ついて行くのがやっと。
って、これはマズい。
メイド服の後ろ姿ばかりに見惚れているから、当然道を覚えられないわけで。
そりゃあ迷子にもなろうってもんですよ。
メイド服の魔力、誠に侮りがたし。
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てなこと考えている間に、到着した模様。
謁見の間、ではなく、何やらひっそりとした場所にある小部屋に案内されました。
室内には、可憐な私服姿の素晴らしく魅力的な女性がおひとり。
「初めまして、フォリスさん」
「ツァイシャ・エレイス・エルサニアです」
「こういう改まった場ではない席では、イーシャさんって呼んでくださいね」
……いくらなんでも、それは無理です、女王様。
「ツァイシェリア姉様の娘さんとお婿さんですもの」
「家族間で遠慮は無用、ですよ」
えーと、イーシャさんから熱烈ハグされているシュレディーケさん、困惑中。
以前は女王様としてお会いした方が、突然血縁関係と判明しちゃったわけで。
嬉しいでしょうけど、まあ困っちゃいますよね。
でも、どうして以前は内緒にしていたのかな。
「シュレディーケさんを利用しようとする有象無象を片付けて、諸々落ち着いてから告白するつもりだったのですが」
「力及ばず、ごめんなさい」
イーシャさんにも、サイリさんたちにも、お世話になりっぱなしで……
「家族ですもの」
「これからは、たくさん甘えてくださいね」
今まさにシュレディーケさんが甘えさせてもらっております、物理的に……
シュレディーケさんのお母さまは、どのような方だったのですか。
「奔放で、真っ直ぐで、情熱的で、一途で、誰よりも優しい人でした」
シュレディーケさんそのままですね。
「生き写しです」
えーと、そろそろシュレディーケさんへの熱烈ハグをやめていただけると……
「抱き心地も生き写しですよ」
……存分にどうぞ。
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ツァイシェリア様との思い出を楽しそうに語るイーシャさん。
遠縁ですが、幼い頃から可愛がってもらっていたそうです。
リグラルトに嫁いでから交流が途絶えてしまったのだとか。
うむ、あの熱烈ハグも、致し方無し。
こうして見ると、おふたりとも、確かに血縁関係ですね。
まるで姉妹のようです。
もちろん、イーシャさんがお姉さんですよ。
いろいろと、良く似ておられるのです。
その……いろいろと。
「結婚生活はいかが?」
「優しくしてもらっておりますが……」
あちゃあ、シュレディーケさんが、僕との生活のアレコレを赤裸々に……
って、そんなことまで暴露しないでくださいっ。
「つまり、家庭内での不満は無いけれど、フォリスさんの出不精をなんとかしたい、と」
「あと、他の女性を見るまなざしが、時折……」
なんですかコレッ、楽しい歓談のはずだったのにっ。
「フォリスさんっ」
ハイッ。
「新婚さんですからいろいろとあるでしょうけれど、可愛いシュレディーケさんを泣かせるようなことだけは、許しませんからねっ」
肝に銘じますっ。
「あと、結婚なさってから今日までこんなに待たされたのですから、これからはちゃんとお顔を見せに来ること」
「もし放置されて寂しくなったら、私から会いに行きますからねっ」
ハイッ、これからも親しく家族付き合いさせていただきますっ。
「もう、言葉使いが堅すぎます」
えーと、言葉使いの方は、何とぞご容赦の程。
何せずっと独りきりの森暮らしだったもので、会話と言えば独り言のみ……
「苦労なさったのですね」
ギュッ
うひゃぁ、しまったっ、油断したっ、
ハグされぬよう気合を入れていたのにっ、
この圧倒的なハグ心地、まさにシュレディーケさんの血縁。
あったかくやわらかくて、なんか何もかもどうでもよくなっちゃうくらい気持ちよいですよ。
なにこれすごい。




