17 案内
モノカさん宅にて一泊。
そして今日は謁見の日。
もちろん謁見許可はいただいております。
えーと、今日僕たちを案内してくれる王城メイドのルルナさんから、いきなり叱られちゃいました。
ご結婚のお知らせが届いたのはずいぶん前なのに来るのが遅いですよって。
ルルナさんの案内で、モノカさんのお宅からエルサニア城へと向かいます。
徒歩で。
「フォリスさんはエルサニア城下町は初めてでしょうし、楽しんでくださいね、と女王様が」
御心遣い、ありがとうございます、ツァイシャ女王様。
ルルナさんも、ありがとうございます。
「本当はご夫婦水入らずで散策なさりたいのでしょうけれど、今日は少しだけお付き合いくださいね」
いえいえ、まさに両手に華。
良き思い出になるのです。
ごつり
って、痛いよ、シュレディーケさん。
握りこぶしで叩くの、禁止。
「本当にらぶらぶなんですね、おふたり」
「凄く羨ましいです」
えーと、いろいろと至らぬ事ばかりのふたりではありますが、アランさんのような仲睦まじい家庭を築けるよう頑張りたいと思います。
「……フォリスさんは、アランさんを目指しちゃうのですね」
誠実な旦那さまと素敵な4人の奥さまとの、笑顔が絶えない明るいご家庭と聞いておりますが。
「確かに、笑顔が絶えないです、周りのみんなの」
笑顔が一番、です。
って、お顔が怖いですよ、シュレディーケさん。
笑顔ですよ、笑顔。
「おふたりを見ていると、なんだかとても落ち着きますね」
「すごく信頼し合っているのが分かります」
「お似合い過ぎて、少し妬けちゃうかな」
いえいえ、ルルナさんのような素敵な女性なら、引く手あまたでしょう。
「出会いの機会こそ多いのですが、こればかりは……」
ルルナさんはお仕事を頑張り過ぎなのではないかと、カミスさんたちも心配していましたよ。
よろしかったら、お休みの日にでも、うちに遊びに来てください。
森の中の何も無い場所ですが、のんびりできることだけは保証しますよ。
「新婚さんのご家庭にお呼ばれされるのって、独り身には結構アレなんですよ」
「それにしても、おふたりとも、外出先でもそんなにらぶらぶでしたら、ご自宅ではどれほどなのかしら」
まあ、ふたりとも苦手な家事に手一杯で、普段はらぶらぶどころではないって感じなのですが。
「……」
はて、静かになったルルナさん、何か考え事でしょうか。
しかしこうしてルルナさんを間近で見ていると、やはり良いものですね、メイド服姿。
清楚でもあり、可憐でもあり、ちょっとだけ扇情的でもあり、仕事着でありながらおしゃれ着でもあるという見事な万能感。
今度、モノカさんの友人で裁縫上手と評判のネルコさんに、シュレディーケさんのメイド服をお願いしてみようかな。
などと夢想している間に、エルサニア城に到着。




