12 警報
一服休憩しようと、街道を少し離れた人目につかない平原でお茶の準備。
もちろん『Gふなずし』での周辺警戒は忘れずに。
最近、お茶を煎れるのもそれなりに上手くなったよな、などと考えながら準備していたら、
腕輪魔導具『コニタン』がぷるぷると震えだした。
えーと、この振動パターンは、何者かが接近中という警報。
『Gふなずし』の情報表示面の地図を見ると、接近してくる緑の光点が3つ。
確か、緑の光点は友好的、または無害な存在。
これが赤なら害意のある敵性存在。
ちなみに黄色は意思の無い存在、もしくは判定不能。
はて、近くに知り合いでもいたのかなと、接近を待つ。
すたすたと近づいて来るのは、標準型の冒険者服にマントを羽織った旅姿の男が3人、
いずれも知らない顔ですが、向こうは安堵したような穏やかな表情。
敵意は全く感じられないが、もちろん旅先での油断は禁物。
「お迎えに参りました、ツァイシェル姫」
たぶんリーダーであろう一番隙のない長身の男が、シュレディーケさんに話しかけた。
って、姫?
「それはすでに捨てた名だ」
ふむ、なんとなく分かった。
シュレディーケさんの故国からの追手、
姫うんぬんの詳しい事情は、後ほどシュレディーケさん本人から聞こう。
姫を迎えに来たと言う連中は凄く嬉しそうで、やはり敵意は無し。
しかしあの人たちは、今のシュレディーケさんの想いなど、知るよしも無し、と。
確かに表示は緑で態度は友好的だが、こういう場合はこちらの味方とは限らない。
「私は、あの国には戻らん」
シュレディーケさん、静かにお怒り。
僕も、だ。
空気読めよ、おっさんたち。
「無理強いしたくはないのですが」
だったらその闘気はなんだよ。
ってか抜刀すんな。
ちょっとマズい、かな。
3人とも手練れっぽいし、多勢に無勢。
対人近接戦は、シュレディーケさんはともかく、僕は苦手。
なんて言ってられないし、弓の間合いじゃないのなら、いつも通り解体ナイフでやるしかない。
覚悟、決めますか。




