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第16話 理事長の部屋

 理事長の部屋。そこは格式の高い風格のある部屋だった。

 一番の王様の部屋としては地味で狭い気もするが、お城や御殿ではなく学校なのだからこんなものだろう。

 あたし達は構わず、勧められた座り心地の良い椅子に座った。理事長はテーブルを挟んだ向かいの席に座って話し始めた。


「学校には慣れたかな?」

「はい」


 まだ通って数日だが、慣れてきた事には違いないのであたしは正直に答えておいた。

 理事長はそれは良かったと頷いてから話を続けた。


「実は美月から君達の話を聞いたのだ。恐ろしい化け物を退治したようだね。腕は立つし、信用もできると。君達はやはり私の見込んだ通りの生徒だったようだ」

「いやあ、それほどでも……あるか」

「怪異に対応するのは俺達の仕事だ。理事長は俺達の力を計る為に美月を寄こしたんですね」

「まあ、そんなところだ。今思えば最初から君達のクラスに美月を入れておけば良かったよ。クラス分けは学校に任せていたからね。後手に回ってしまった」

「美月の意思であたしに会いたくて転クラスしたわけじゃないんだ」

「一緒になりたくてパパに頼んだのはあたしからだよ」


 美月はニコニコしている。あたしはその頭を撫でてやった。猫を飼ったらこんな気分かもしれない。


「それで、理事長が俺達を呼びだした目的は何なのです?」


 天馬が本題に斬りこむ。あたしと美月もじゃれる事を止めて返答を伺った。

 理事長は少し考える仕草を見せてから返事をした。


「実は君達に見て欲しいものがあるのだ。特別に強く、才能があり、化け物とも渡り合える能力を持った未来有望な君達にね」


 理事長は立ち上がると部屋の隅にあった変な踊るカエルのゆるキャラのような銅像の前に立った。その頭を押すとガコンと音がしてあたし達の目の前のテーブルが横にスライドし、開いた床に秘密のエレベーターが現れた。

 あたし達は驚いて現れたその空間を見下ろした。

 理事長は満足そうに微笑んだ。


「これから君達にこの学校の秘密を見せたいと思う。来てくれるかな?」

「喜んで!」


 信頼して選ばれたあたし達が断る理由はないね。

 あたし達は理事長に案内されるままにエレベーターに乗って地下へと降りていった。




 その頃、呼び出された三人を追って廊下を音を立てないように忍び足で歩いてきた京は理事長室の前まで来ていた。


「何を話しているんだろう。気になるよ」


 そっと耳を扉に押し当てる。だが、見るからに高級そうな扉は防音が行き届いているようで、中の音は何も聞こえなかった。


「綾辻さんの声だけでも聴けないかな。ううー、何も聞こえない。何でこの学校の設備ってこんなに無駄に立派なの。腹が立つ」


 ヤキモキしてもどうにもならない。京は思い切って覚悟を決めた。


「わたしも入るよ。きっと怒られないわ。だってわたしは二番なんだから。笹原さんよりも賢いんだから」


 ドアを押すと思ったより簡単に開いた。そっと開けるつもりだったのに全開になってしまった。

 しまった怒られると覚悟したが、叱責の声も何も無くて……目を開く。

 部屋の中には誰もいなかった。


「そんな! 何で!? 確かにここに入ったはずなのに!」


 部屋を見回しても誰も見えない。机の後ろにもいない。窓の外を見ても景色が広がっているだけ。


「変だよ……こんなの絶対に変だよ!」


 さすがに棚の中まで探る気にはなれなかった。それだと泥棒だ。見つかった時に言い逃れが出来なくなる。

 相手を見つけたい京だったが、さすがに退学処分までは御免だった。このレベルの高い学校に入学して後ろの席まで確保できた幸せを手放すわけにはいかない。

 だが、考えていても拉致が空かない。ふと部屋の隅にあったおどけたカエルのゆるキャラのような銅像が目に付いた。


「こいつ、何を笑っているのよ。わたしがこんな目に会って可笑しいって言うの!?」


 ついムカついて殴ってしまった。その時、ガコンと音がして部屋のテーブルが横にスライドした。その下に現れたのは地下に通じるエレベーターだ。


「綾辻さんの匂いがするわ。この先にいるの……?」


 ふらふらと歩み寄る。運命が導いている感じがした。

 京は覚悟を決めると見つからない事を確認し、エレベーターに乗って地下に降りていくのだった。

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