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面倒な事になった

作者: 楓蘭 仁

そろそろ、俺は高2から高3に進級する。

そんな時期に−−−







彼女が出来た。







きっかけは別に面白いわけでも運命的なわけでもない。

自分の部活、剣道部の大会の開会式で行う、他校の吹奏楽部のちょっとした演奏の中に、健気に頑張ってる彼女の姿があった。

−−−思いきって声を掛け、仲良くなってそのままゴール!……まあ、あれだ。一目惚れしただけだったりする…。


そんな彼女と俺の話。















彼女が出来て三週間ちょっと経ったが別に学校生活に何か変化があるわけでもない。まあ、俺の学校はなんの色っ気も無い男子校だから彼女がいる奴はいじめ、ではなくいじりの対象になるのだ。

だから俺は自分の身を案じて彼女が出来ても普段通りの生活をしている。




つよしぃ!今日暇か?」


なんだ?誰だ?………Aでいいな。


「わりっ、部活あるわ。すまんなAよ」


あっ声に出ちゃった。


「A!?なんの話だ!?ランクか!?だったらなかなか評価高いじゃん俺。」


なんて前向きな奴だ。その調子で頑張ってくれよA。


「んじゃ」

と、軽く手をあげ鞄を持って俺は教室を出た。




ついでに今日は部活が休みだ。
















通学用の自転車に乗って彼女の学校に向かう。

自分の学校から15分くらいかかるが別にどうってことはない。


校舎から出てくる生徒をぼーっと見ながら、たまに校舎の時計を見ながら彼女を待つ。

そして16時40分。………来た。ちょうどラッシュなのか、正面玄関から30人以上一気に出てくる。

そんな中でも彼女はすぐにわかった。人ごみの中でも知り合いはわりとすぐに見つける事が出来る感覚と似たようなもんだと思う。







「ごめんね、掃除が長引いて。…私もたもたしてたから…」


奈津なつ。別に怒ってないから謝んなくてよし。」


そう言って俺は奈津の頭を少し撫でてやる。


「せ、千堂せんどうくん。恥ずかしいよ」

少し慌てた声で俺の顔みて言うが


「名字禁止。俺藤原ふじわらさんって呼ぶの嫌だし。」

手を止めて、目を見ながら言う。


「は、はい…」

と、顔を真っ赤にしながら小さな返事。


「よろしい」

なでなでと再度頭を撫でてあげた。


「だ、だからそれをやめて…」


「…かわいいから嫌じゃ」
















藤原奈津はとても内気な女の子だ。俺が告白した時、めちゃめちゃ挙動不審になりなんだか悪い事してる気分になったものだ。

一人になった時に後ろからとんとんと、肩を叩き

「すみません惚れました。」

これだけ言った。

五秒くらいフリーズした後、顔を真っ赤にしながらあたふたしていた。

最終的に

「よ、よろしくお願いします…」

と消え入りそうな声で言われた事は一生忘れないだろうなー。















近くにある商店街を二人で歩く。会いたいだけで特に行く所がなかったのが悪かった。だが後悔はしていない。

隣を歩く彼女を見るだけでなんとなく癒やされる。




肩の辺りまで伸びた少し栗色の入った髪。ちょっとトロンとした目。152cm(俺は175cm)と小柄だがでる所は軽くでてたりするのが制服の上からでもわかる。

……うん、やっぱりかわいい






「ナイス」



「ど、どうかした?」



「あー、なんでもないなんでもない」


危ない危ない。















結局普通にただ歩いただけで帰る時間になってしまった。どこかに寄りたいとかは一言もなかった。


「俺明日から普通に部活だけど…どうする?」


彼女の家の前で自転車を抑えながら聞いてみた。



「わ、私も明日から部活があるから…」


という答えが返ってくる。



「そっか。予定が空いたらメールしてくれ。合わせるからさ。」


「う、うん。ありが、とう。」




あー、もう。




自転車を倒れないようにセットし







正面からギュッと抱きしめた。

……やば、髪の毛いい匂い…






「俺の前で緊張すんの禁止。」


「は、はひ…。」


「わかった?」




ブンブンブンブンと首を縦に振った。首とれちゃうとれちゃう。






そして俺は彼女に言われた通り、気をつけて、帰った。
















三日後。

俺は部活を終えまっすぐ家に帰っていた。




「〜♪〜♪なーつなーつなつ俺の嫁〜♪」

なんか最近テンションがよくわかんなくなってきたのが自分でもわかる。




「止まれ。千堂毅。」






なんだ?あの痩せ型の眼鏡君?……いいや。そのままシャーッと通り過ぎてしまった俺。






「待てや!止まれっつーの!」




ああやっぱ俺の事?…面倒だ。




キキキッとブレーキで止まり、近づいていった。




「千堂毅、おめーは…」

「ごめんね。俺彼女いるんで。ごめんね。」


と言葉を遮って謝っておく。俺はノーと言える日本人だ。




「違うわ!!お前のその彼女の話だ!!」


「奈津の?」

と聞き返すと




「気安く藤原さんの名前を言うな!!俺らの隠れアイドルを!!」






…隠れアイドルて…。奈津人気あったんだなー。つか隠す意味がわからん。




「隠さねーと藤原さんが緊張してなんにもできなくなるんだよ!」


答えてくれた。眼鏡君、君はいい奴だな。…そういえば奈津と同じ学校の制服だ。なるほどねー。隠れファンねー。




「…んで俺になんの用?」


なんとなく予想出来るが聞いてみる






「藤原さんと別れ、」





















そこから先は言わせなかった。


眼鏡君の顔面を思いっきりぶん殴ったから。

バキィッ!という音がした後、ドザァ!っと倒れる音がした。



















「うぁ…うぅ…」

鼻を抑えながら涙目の眼鏡君。いや、眼鏡吹き飛んだから……もう、眼鏡君でいいや。




「お前に指図される意味がわからん。好きなら告れよ。阿呆、カス、馬鹿、眼鏡。」






……眼鏡?






「お前の、お前のせいだぁぁぁ!!」


そういいながら突進してくる眼鏡。




何が俺のせいなのかは知らんが、ひらりと身をかわしてついでに足をかける。すると、






ズザザァァァっと音がして派手に転ぶ眼鏡。




そして転んだ先に視線を合わせると。







……あれ?6人になってる。(眼鏡合わせて)




なんか増えてた。




「だ、大丈夫かぁ?おい?」

えらいなまった言葉だなぁ。



「うわっ!ボロボロじゃねーか!」

いやそいつ転んだだけだから。



「あ、あいつか!?あいつがやったんだな!?」

他に誰がいるよ?



「クソ!!ここまでするかよ普通!?」

俺は顔面と足しかやってません。



「ゆ、許さねーぞ!お前!!」

…あー…面倒だ。









この6人の共通する特徴、あんまり強くなさそうだ。なんというか運動部っぽくない。






















喧嘩は案外簡単に終わった。特に目立つ傷も付けられなかったし、全員難なく返り討ちにした。




「やっと帰ってこれた…。」


もう夜の10時前だった。

ちくしょう、見たいテレビあったのに。あんの野郎共。




……怒っても無駄だし、その日はシャワーを浴びてすぐ寝た。



















次の日、休日だ。土曜日だ。奈津にメールしてみる。


「暇だー。遊ぼー。良かったら迎えに行く。」


よし、メールはわかりやすく簡潔に。俺の美学だ。



「う、うん。いいよ。待ってるから。」


…そんなメールで緊張せんでも。


















迎えに行って彼女と合流した。ヤバい私服がかわいい。白いワンピースにミュールだったかを履いている。だがここは冷静に、どっか行きたい?と聞いた所、せんど、じゃなくて、毅君が行きたい所なら……。

だそうだ。




映画見て喫茶入ってっていうデートの王道でも堪能しますかねぇー。





















映画館に行く途中だった。


「千堂ぉぉぉ!!」×20







なんてこったー。からまれたー。


あっこの前の眼鏡君。




「久しぶりぃ♪」


と声をかけてみる。




「ぶっ飛ばすぞてめぇこら!!」


おおキレた。




「んで、どしたの?俺の奈津を怯えさせないでほしいなー。」




「ああん!?俺の奈津だぁ!?」×20




ここまで息が合ってると賞賛に値する。すごいぞ君たち。




「用件はひとつだ。藤原さんに、俺達のアイドルに近づくな。」


「そうだそうだ!!」×19
















「奈津、もう離さないぞ。」


そう言ってから軽く奈津を抱きしめた。




「へ?え?えええぇぇぇ!?」


顔を真っ赤にして慌てまくった。

うん。かわいいぞ。百点だ。




「てめぇぇぇはぁぁぁ!!」×20


あっ、やっぱりだめ?




「奈津。」


「は、はひ?」






一気にお姫様抱っこの形をとり、


「きゃっ!」


「にーげよ。」


集団とは反対方向に猛ダッシュ。うなれ、剣道部の脚力。




待てこらぁぁぁ!!

とか

ふざけんなぁぁぁ!!

とか言う声が聞こえてくるが、今は無視。あー面倒だ。






「ほっ、ほっ、ほっと。」


とりあえず俺は走る。が、やっぱり人一人持ってる分向こうのバカ軍団との距離も詰まっていく。




「毅、君、だい、じょう、ぶ?」

振動で途切れ途切れの言葉が聞こえてきた。


「……いーこと思い付いた。」

われにさくあり。









「奈津ー。携帯出してー。」


「う、うん。」

俺の言われた通りにポケットから携帯を出した。


「110番押して俺の耳に携帯当ててくれぃ。」
















「はい、○○警察です。」


「たいへんだー。おんなのこがーおんなのこがー。」


「ど、どうしました!?落ち着いて話してください!?」


「にじゅうにんくらいのおとこどもにかこまれてるー。たいへんなことになっちゃうー。ばしょは○○こうえんだー。」


「わっ、わかった!すぐに向かう!待っててくれ!」










ピッ。










「これでよし。」


「つ、毅君…」


後はどうにかしよう。
















公園に逃げ込み周りを囲まれてしまった。


「も、もう逃げねー、のか?た、体力ねーな、千堂、よ?」


いや、そんな息絶え絶えでいわれてもね眼鏡くん。




ひぃ、ひぃ、といいながら太ってる人達が公園に4人入ってきた。

もうちょっとで4人も脱落するところだった。






「いやー、走る元気もう無いよ俺。コウサンコウサン。」


「とてもそうには見えねーぞクソヤロー!!」


ナイスツッコミだ眼鏡くん。

もう少し時間を潰そうか。




「てか、こんな事する前にお前らも告ってみりゃ良かったじゃんよ。結果はわからないもんだぜ?」


と、ちょっと説明してみる。


「そんな事わかってるわ!!勇気が無いだけだ!!」


キングオブへたれ眼鏡


「ほら、奈津。あいつらみんなお前の事が大好きなんだと。」


俺はお姫様抱っこから奈津を解放して、そう言った。


「え、あ、その、えと…」


慌てながら俺の方を見てくる。


「まあ、返事してあげな。」

そう言うと















「み、皆さん。ごめんなさい。」


ぺこりと頭を下げた。















「………」


眼鏡は口を開けたまま固まっていた。

他の奴らはまだ息切れしていた。

俺は大爆笑していた。
















「う、うわあぁぁぁぁ!!!!」


と涙目で叫びながら眼鏡は突進してくる。

他の奴らは息切れしてる。




「きゃっ!」

奈津は俺にしがみつき、俺は




「ふんっ!!」


と顔面に張り手した。




ぱああああん!!!

といい音がして、


「あぐ!!!」


とものすごい勢いで眼鏡は吹き飛ぶ。鼻血が出ていた。






「はぁ、はぁ、ちくしょー。」


鼻血を出して、息切れしながら眼鏡は呟いていた。


















その時、
















ピーポーピーポーという日常でもよく聞く音が聞こえてきた。
















「男の集団を発見!全員捕まえろ!!」

と、電話の声の人が言うと




ドドドドドドドドドド!!




と警察が20人以上来た。

普通にすごい。




「全員はぁはぁしてやがるぞ!?この変態共め!!」


「こいつ鼻血出してるぞ!?」


「ド変態だ!きっと主犯だ!捕まえろ!!」


「ち、違う!違うんだ!この鼻血は!」


「言い訳は後でたっぷり聞いてやる!!」


「違うんだぁぁぁ……」






さらば主犯、眼鏡よ。お前の事は忘れるまで忘れない。



















「君が通報してくれたのか。ご協力感謝する。」


と電話の声のおまわりさんは一礼する。



「いいですいいです。へんたいがつかまってまたすこしまちがへいわになってうれしいなー。」


「はははっ!そうか!では失礼するよ。その心を大切に。」


そういっておまわりさんは戻り、公園には二人だけになった。




「奈津。ちょっと休もう。そこのベンチでさ。」


「う、うん。」



















「ごめんな。疲れさせちゃって。」

隣に座っている奈津に謝っておく。


「い、いいの。もとは私が原因だったみたいだし…」

そう言って奈津は俯いてしまった。






「…よっと」


俺は座ってる奈津の脚に頭を置いた。俗に言う膝枕だ。うん気持ちいい。




「つ、毅君!?」


と少しびっくりしたみたいだったが


ヒタッ


と片手を頬に持っていく。




「奈津さ…。隠れファンクラブが出来るくらいな、お前かわいいんだからさ、もう少し自信持ってみ?んで自信持って行動してみるのもいいんじゃねーか?」




「あ、あう……うん…。」


相変わらず顔は真っ赤で慌てているが目はしっかり俺のほうを見ながらの返事だった。




「よしよし」

と言いながら頭を撫でる。







「つ、毅君…。」


突然名前を呼ばれ


「ん?」


と返事をする




「わた、私、自信持って行動してみる。」


「……そっか。頑張れよ。」


なんかすっげー落ち着いたな今…。

こういうの好きよ俺。

とか思ってると
















ん?奈津さん?顔が、近づいて………


















「……意外と大胆ね、奈津。」


「じ、自信を持って行動してみた。」




いや……まぁ、いっか。



















ん?なんだ入り口に誰かいる……


















「つ、つ、毅に、か、彼女?しかも相手って、○高の藤原さんじゃねーか!!みんなに報告だぁぁぁぁ!!!」






「Aの野郎……絶対ぶっ飛ばす。」

月曜日から大変そうだ。















面倒だ……


















Fin

初投稿です。お読みくださった皆様ありがとうございました。ご評価、ご感想をいただければとても嬉しいです。汚い文ですがあたたかい目で見守ってください。

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― 新着の感想 ―
[一言] 奈津さんが可愛く書かれてて良かったです。 言動でその辺を表現するのって難しいんですよね。 今後、少し参考にさせてもらいます(^^)/ あと、警察が登場する場面は特に面白かったです。 はぁは…
[一言] 男女の会話の部分は楽しくて、とてもよい。 ストーリーの細かい部分で、もう少し考えてみて。
[一言] 主人公が、とっても好感のもてるキャラですね。 彼女も可愛いし。キャラ的に疑問の残る、突然の告白を受けるという行為に 対しての彼女目線の物語も見てみたいです。 作風でしょうが、空白行が多過ぎる…
2009/08/30 11:06 末っ子長男
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