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聖女と聖の精霊の関係

 





 「来てくださって、ありがとうございます!



 私、とっても嬉しくて…………色々用意したのですよ!」





 応接室、フランは笑顔で菓子や紅茶、本に酒…………どこから情報を得てきたのか、私の好みばかりを並べた。でも、どれも口をつける気も、手をつける気すら起こらなかった。頭にあるのはアルティアの事だけ。



 いくら考えないようにしようとしても、アルティアの顔ばかり浮かんできて…………その度に胸が苦しくなる。




 もともとこの礼儀知らずの女とも顔を合わせたくなかったが、今はその気持ちが更に強い。要件をとっとと聞こう。




 「…………………そんなことよりも、精霊について教えろ」



 「そんなに急いで話さなくてもいいじゃないですか。時間は沢山あるのですし」



 「その時間をお前に裂きたくないんだ」


 



 本音だ。昔からの顔馴染みだが、好感を持ったことは1度もない。アルティアは馬鹿だが、素直だ。正直過ぎるくらい正直で、分かりやすくて…………嘘はつかない。だがこの女は薄っぺらい嘘ばかり並べて、着飾って、………聖女だとしても手に入れようとすら思わない。


 



 またアルティアのことを考えてしまう。

 気分が悪い。




 「…………私が知りたいのは精霊のこと、いるのであれば妖精神の事だけだ。それ以外の話をお前とする気は無い」




 「…………………そうですか」





 フランはそれを聞いて、紅茶に口をつけてから口を開いた。




 「ソンナニリュウジンガタイセツナノネ」




 「…………………」




 ……………フランはよく、こうして意味不明な言語を使う。"ニホンゴ"というものらしいが、今はそんなのどうでもいい。




 「早く話せ。話さないのであれば実力行使するぞ」



 「……………それは怖いですわ。でしたらお話しましょう。


 ……………この国には"聖"の精霊が居ます。本来であれば妖精神と共にある存在の精霊でございますが、聖の精霊は特殊なのです。それは___"聖"の力が他の精霊よりも上位であるからです」




 フランは淡々と言葉を紡ぐ。……………嘘はついていないようだ。



 しかし。




 「精霊は妖精神より格下だろう?上位の存在であればなぜ妖精神ではない?」




 「それは、聖の精霊には他の精霊と同じように"それに準ずる存在の生き物"がいるから」




 「……………その話は矛盾しているぞ。私はサクリファイス大帝国第1皇太子。龍神に仕えるサクリファイス大帝国皇族への欺瞞だということぐらいお前でも知っておろう?」



 「いいえ。矛盾などありません。欺瞞なんて、とんでもないですわ。


 何故なら___精霊と手を取る存在は、聖なる人間である聖女……………つまり、私です」




 「………………!」




 予想外の言葉。聖の精霊が居るのに妖精神が存在しないのは____聖女が妖精神のような存在だから……………だと?




 「ふふ、驚きました?驚いた顔も素敵です。


 話は変わりますが____ラフェエル殿下、いえ、ラフェエル様。貴方は、龍神…………"婚約者様"と契約を交わしているのですよね?」




 「……………ああ。それがどうした?」



 やはり、知っていたか。

 知っていてわざとアルティアに席を外させた。何が目的だ………………?



 私は背中に隠していた短剣に手を伸ばす。

 フランはいつもの作り物のような笑顔とはかけ離れた、下卑た笑みを浮かべた。




 「その契約から______私が、解放して差し上げましょう」




 フランがそう言った瞬間…………………目が突然ぼやけた。ぼんやりとした視界が最後に捉えたのは___白い、大きな魔法陣。





 アルティア_______。










 そう口を動かす前に、目の前が真っ暗になった。


















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