すれ違う心と苛立つ生贄皇子
「ッ!」
私はフランを無視して用意された自室にアルティアを連れてきた。そして、ベッドに押し倒す。
____私は、大丈夫ですので。
そういった時のアルティアは___ドレスの裾を掴んでいた。
……………私は、不本意ながらもずっとアルティアの傍に居たのだ。癖のひとつやふたつわかる。アレは____我慢をする時にする仕草だ。
それを見た時、感じたことの無い気持ちに襲われた。フランの馴れ馴れしい物言いよりも___気に食わなかった。
「………………、なによ」
アルティアは、黄金色の瞳で私を睨んだ。
何?と聞かれても…………わからない。
「…………………気に食わないな。なんだその面は」
「産まれてからこの顔よ。なにか文句でもあるの?」
文句など、あるわけがないだろう。
ここ最近、アルティアとまともに話してない。あの日からだ。
"見た目とのギャップ"の話の時、俺は無意識に呟いてしまった。
「それはお前も一緒だ。黙っていればフランよりも美しいのに」、と。
無意識に言ってしまって、それを隠すために「フランのような女がよかった」と言ったのだ。
その結果、……………アルティアは私と口を聞かなくなった。
__何故あんなに怒った?
_____何故、泣きそうな顔で怒鳴った?
聞きたいことは沢山あるのに、聞けなくなっていた。
それに。
『私だって、聖女の方がよかったわよ。アンタなんかとキスすることも契約もしなくてもよかったし旅をしなくてもよかったもの』
_____あれは胸が痛くなった。
なんなんだ、この気持ちは。
それを考えていたら……………………セイレーン皇国・皇居に着いていた。
……………なんなんだ、この気持ちは。
「……………ッ、ふん!」
「……………!」
ふわり、と身体が浮いた。
アルティアの魔法の感触だ、と気づいた頃には、扉の前に着地していた。
「……………………早く行きなさいよ。誘いを断って戦争なんてたまったもんじゃないわ。
精霊の話だってどうだっていい。楽しくお茶会でもしてれば?
大好きな"聖女"様のお誘いなんだから!」
そう言ってアルティアは布団を被った。
「貴様、罰を落とされたいのか?」
「……………」
「布団に被っても罰は免れないぞ」
「……………… 」
いつものように怯える顔も、怒る顔も見えない。
_____誰の為にやっていると思っているのだ?
____私はお前の為に動いているのに。
____なのに、何故……………!
腸が煮えくり返るほどの怒りを覚える。
「………………ッ、勝手にしろ!」
私は、部屋から出た。
自分でも驚くほど大きな声が出た。
何故、あの女の言葉の一つ一つが心に刺さるんだ?何故、あのような女のために動くんだ?
今だってそうだ。あの女は何に怒っている?何故あんな悲しそうな顔をする?何を我慢したと言うんだ。
私が何をしたというんだ。
何故、こんなにも_____胸が苦しいんだ。
「っ、クソ」
ガン!と皇居の壁を殴った。
壁に穴が空く。バレたら不敬だが、どうでもいい。
何故だらけの思考回路とチクチクと痛い心。
なんなんだ、あの女は______!




