次期龍神と魔剣の出会い
ラフェエルを置いて、私は玉座の後ろにあった通路を歩いていた。通路は太陽神の住処ということもあって熱い。魔法もどきを使ってもいいけど、この黒い粒子が消えてしまったら困るから自重していた。
黒い粒子は奥に行くにつれて濃く、粉雪のように降り注ぐ。やっぱり、闇の感覚だ。アトランティスに流れる空気と同じ。アトランティスと繋がってるとか?
そうだといいなあ、なんて。旅はほとんど馬車で暇だし、やっと外に出れた!と思うと妖精神やら精霊やらと戦う目にあったり……………………正直帰りたい。
「ガーランドに会いたい……………って!父親が恋しいって!私気持ち悪いな!?とっても気持ち悪いな!?」
1人でノリツッコミする。とても虚しい。こんなことならラフェエルも連れてくればよかった………………ん?
黒い粒子の先に____牢屋があった。アトランティスに続く道ではなかったのだ。少しがっかりしていると、黒い粒子を発している人を見つけた。気になって近づいてみたけど……………なんとも妙な光景だった。
グランドのように薄汚れてたなら「捕まってたんだな」ってわかるけど、その人___男は、そうじゃない。青がかった紫色の長髪、このクソ暑い中カッチリとした着物は綺麗だ。
「_______やっと来た」
「え…………………………?」
男はぽつり、そう言って目を開いた。黒い瞳が私を見ている。こんな派手な頭の人忘れる?そもそも、私ほとんどの人と関わってなくない………………?
湯水のように沸き上がる疑問に頭を抱える私。男はその様子を見てくすり、と笑い立ち上がった。そして。
「………はぁ!?」
牢屋の中にいた男がスゥ、と透けて簡単に檻の外に出て私の目の前に来た。
いやこれはやばいでしょ!いくら私が龍神でも!!幽霊は相手に出来ないよ!?
「ひ、人違いです……………ワタシアナタシリマセン」
「ふ……お前は俺を知らないだろうな、アルティア」
「へ?」
知ったような口ぶり。というか、なんで初対面の幽霊に名前バレしてんの私?
戸惑いを隠せずにいる私をみて、男はくつくつ、と喉を鳴らして笑う。
「君はガーランドの娘だろう?龍神・ガーランド=ワールド=ドラゴンの…………………」
「な、なんで、それ…………………」
「……………………俺は、ダーインスレイヴ。君のお父さんと"妖精神屈服"の旅に出ていた…………………仲間だ」
「………………………はい?」
………………ダメだ、多分、今の私は凄く間抜けな顔をしている。何を言っているのこの幽霊?
「幽霊なんて失礼だな……………あながち間違いではないが」
「うえっ!?なんで考えていることがわかった!?なんなのアンタ!?」
「ああ、面白いな。これはまたガーランドとは違う毛色の龍神だ」
男___ダーイン・スレイヴは笑いながら私の頬に触れる。なにこの男?ガーランドと旅に出てたって?は?………いや、まて、ガーランドは龍神だ。つまり私と同じように旅をしてたっておかしくはない。でも…………………
「それって、何年前の話…………………?」
「約5000年前だよ」
「はぁ!?その見た目で!?」
どうみたって30…………いや、25歳くらいでもおかしくない。それぐらい若い。やっぱり幽霊…………………?
「間違ってはいないんだけどね、少し違うんだよな…………………俺はね、"剣"だ」




