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アトランティスにて人間と出会う

 




 「…………………ここか」







 以前王室図書の文献に記された場所に来てみた。

 記されていた通り、アトランティスの入口らしき穴があった。魔力が込められている。それも、サクリファイス大帝国第1皇太子が強制的に取得される解除魔法が必要な魔法で。本来ならば15歳で覚える魔法であるのだが、そんなのはどうだっていい。




 「……___龍神の住まうアトランティス、我の訪問をお許し給え」





 パリン!





 魔法が砕け散り、質素な作りの通路が顕になる。小さな炎魔法を指先の上に浮かせて、進む。単純な作りの通路を渡り切ると、螺旋階段があった。かなりの距離がある。……ここを歩いて、己の人生を振り返れ、ということか。ナメてくれる。






 しかし、妙な違和感を覚えた。龍神は勿論だが、アンデッドが姿を表さない。やはり文献に記されていたアンデッドの住処というのは些か語弊があるのではないか?龍神は魔法が得意と言う。魔法があれば大抵できるし、何者かを召抱える必要性はないように思う。人間のように自分の力を誇示したいなどと、神が考えるには幼稚だ。





 そんなことを考えていると螺旋階段を下り終えた。再び、単純な構造の通路……なのだが、先程の通路とは違い、空から日差しが漏れている。吹き抜けになっているのか。ならば、空から降りた方が早かったか……?……否、微かだが魔法壁が張られている。ここからでも分かるということはきっと触れれば人間の体など灰になってしまうだろう。それだけ強く、高等魔法だ。




 まあいい。それよりも先に進も____……!





 「ん~ん~ん~ん~………………ん?」





 此処は龍神の住処だ。言わなくともわかる通り聖地。第1皇太子以外入ることを許されない場所。なのに。





 目の前には____女。

 俺よりも小さい背、黒髪、黄金に輝く大きな瞳、黒いドレスを身に纏う…………人間。





 女と____目が合った。






 * * *





 「ふっふっふっ………」



 月日が経つのはやっぱり早くて、私はもう5歳になっていた。相変わらず一応父親で母親のガーランドと淫魔の専属メイド・リング、ワンだふる悪魔・カイテルにちやほやされてすくすく育ってます。



 とまあ、それはさておき。本日親ばかガーランドと忠犬カイテルは(意識だけだけど)異世界の会議とやらに行ってもぬけの殻、リングも非番、つまり!面倒ないつメンは全員留守なのだ!



 となれば私の取る行動は1つ。このアトランティス脱走作戦を決行するのだ!



 流石に2年も練習してたら歩けるようになったし言葉だって覚える。読み書きは……まだ苦手だけど、まあ読み書き出来なくてもお話出来れば何とかなる。他のアンデッドはどうするんだって?確かにアトランティス内を歩くアンデッドはいる。が、私の魔力は常軌を逸してるみたいで。私に敵うものはアトランティスではガーランドのみなんですよ。つまり、なんの問題もない。強いていえばガーランドが帰ってくる前に出ていくことのみ!





 ………龍神のことは結局なにもわからないけれど、私は普通の人間として紛れて平穏に生きてくつもりだし。そりゃ、ガーランドやリング、カイテルがいないのはちょっぴり寂しいけど……娘はいつか旅立つものだし?それがちょっと早いっていうことで。




 折角生まれたんだ。自由に生きなければまた人生がうんちと同義になる。それは阻止せなければ。




 「ん~ん~ん~♪」




 鼻歌交じりに迷路のような通路を歩く。なんか出口はもうすぐそこな気がする。それに合わせて気分も上がっていくというもの。早く出ていこ___………って、え。





 そんなことを思いながら歩いていたら、ぴたり、と私の軽い足は止まった。




 目の前には____男の子が。綺麗な紅い銀色の髪、見開かれた紅い瞳。アンデッド?の仲間?なんて思ったけど……それにしては人間っぽい。





 「貴方、ガーランドに仕えるアンデッド?」



 「いいや、……何故、人間が、此処に…………人間はこのアトランティスに入れないはずだが……?」





 「じゃあ、貴方はアンデッドじゃない?」




 「俺は、人間だ」





 「……人間。」



 人、なの…………?私はこの世に生まれて初めて、人間と対話しているということになる。そう思うと死ぬ前はあんなに恨んでいた人間の子供だと嬉しくなって。



 私は早足気味に近づいた。男の子が退く前にガッシリと手を掴んだ。



 私より大きいけど、ガーランドよりも小さい手。温かい手に涙が出そうになるのを堪えて、聞いた。



 「私、アルティアって言うの!君の名前は!?」





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