生贄皇子はやはりイケメンです
「きゃ~~!!街だぁ!!」
「はしゃぐな。みっともない」
グレンズス魔法公国首都・ターニャに来た。初めて街の散策を許された私のテンションは爆上がりだ。今まで馬車の中から眺めていたような中世ヨーロッパ風の町並みとはかけ離れてて、砂漠の上に出店みたいな店がある。首都にしては簡易的な気もするけど、人々に活気がある。というか悪魔みたいに耳の尖った人や動物が二足歩行してる!亜人!?
と、それは置いといて…………私たちについての話もしよう。
サクリファイス大帝国第1皇太子が首都を堂々と歩いていると騒ぎになる。ましてや珍しい紅銀の髪に紅い瞳、カッチリとした服装で歩いてたらモロにバレるだろう、とクリスティドとリーブが気を利かせて買ってきた街ゆく人々と同じ着物………というか、前世の世界の国・エジプトの人が着てそうな赤色の民族衣装?に袖を通しターバンを頭に被り黒縁のメガネで変装した。
明らかにやりすぎな気がしないでもないけど、これだけは間違いない。
イケメンは何を着ても、どんな変な格好をしてもかっこいいは損なわない。
ラフェエルという人間を知らなければ間違いなく恋に落ちてただろう。すぐに中身を知って別れるだろうけど。
ちなみに私は踊り子の衣装を着ている。前世の私の体型だったらぜったい着れないであろう露出高めな服だが今世は造形がとてもよい。テンションが上がっていたということもあり、装飾品も多めにした。あと、お腹にある屈服印を丸出しにするのはよくないと思って大き目のアクセサリーをその辺りにぶら下げている。
勿論目的は忘れてない。土の精霊の情報探しだ。イツメンは全員街に溶け込むような衣装を着て、3手に別れた。
クリスティドとエリアス、リーブと私の作り出した人形メイド、私とラフェエル。クリスティドとエリアスはどちらも大国の重要人物なので狙われる可能性がある、という事で執事人形が見守らせている。とはいえ、30人の盗賊を1人で片付けたことのあるクリスティドなら問題はないだろう。
とにかく、三方向から街に入り中心にあるというオアシスで落ち合う予定だ。
「ってことで!聞いて回るぞー!」
「あまりはしゃぐな、転ぶぞ」
「子供扱いしな___ふぎゃ!」
ものの見事に転んだ私。しかも顔面。痛い。最悪である。こんなに人が居るなら雷はないと油断してた…………………うぅ………恥ずかしい………………………
「おい」
「っつ……………え?」
顔を上げると、ラフェエルが私に手を差し出してた。黒縁メガネを付けても紅い瞳が薄く見える。変な帽子被ってるのにまるで乙女ゲームのスチルのようだ!目が、目がぁぁぁぁぁ!
こんな乙女展開今まで無かったから少し混乱する。え?これ手を取っていいの?だめかな?手汗大丈夫かな?
そんな混乱状態の私にイケメンが一言。
「…………………そこでずっと這いつくばってるつもりか?ただでさえ馬鹿なのに愚図まで付与されたら面倒見きれん」
カッ……………チーン☆
数秒前イケメン展開!とはしゃいでいた自分を殴りたい。ラフェエルはラフェエルなのだ。騙された。詐欺だ。
「……お気遣いありがとうございますねえ、御手を汚したくないので引っ込めて貰えます?」
「ふん」
嫌味たっぷり大盛りで言って自力で立ち上がった。もう知らん。こんな横暴皇子にときめく私は修行が足りない。もっと精進しなければ……………………
「わっ」
そんなことを思ってると、肩を抱かれ引き寄せられた。は?………って、近!
ラフェエルの顔が凄く近くにあった。
「………グレンズスの治安は悪い。そんな肌を露出し宝石で着飾っている女などクズどもの標的になる。貴様は武術が出来ないのだから私にくっついていろ」
「あ、う、………………」
思考回路が働かない。いつか嗅いだイケメンな匂い。言葉も思うように出ない。そんな私をよそにその状態で街を歩くという拷問を受けました。




