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子供の笑い声と攫われた生贄皇子

 




 私は思いっきり机を叩いて立ち上がった。

 だって、おかしい。

 いくら考えてもおかしいと思ったから。





 「…………私は、無知だ」




 ぽつり、言葉を漏らす。

 目の前に座るクリスティドが目を見開いている。隣に座るラフェエルから微かな魔力を感じる。きっと罰を与えようとしてるんだ。



 でも、出た言葉は止められなかった。





 「この世界のこと何も知らない。妖精神とか屈服とかわからない。…………自分が龍神だとかも、わからない。


 こんな気持ちで私に何をしろと言うの?私は、ただ………平和に、慎ましく暮らしたいだけなのに……………龍神とか、妖精神とか関係なく……………一人の人間として…………生きたいのに…………………」





 腹が立ちすぎて涙が出てきた。

 全部全て何もかも私の意志とは関係無しに物事が進んでいくのが我慢ならなかった。



 「私の人生なのに、なんで、私の意思がないの………?そんなの、死んでるのと一緒じゃない!」





 大声が出た。



 いつもの罰が来ない。




 その代わり、幼い笑い声が聞こえた。




 クスクス。




 クスクス。





『マリン、今の聞いた?』



『聞いたわアクア。これはこれは幼い龍神ね』



 「誰よ………!」




 私は辺りを見渡す。ラフェエルとクリスティドしかいない。なのに、声が止まない。




『龍神は相変わらず変ね、おかしいね』




『そうだね。それにしたって心も身体も幼すぎるよね』



『恐れていたのが馬鹿らしいわ。こんなに情けないお嬢ちゃんが新しい龍神なんて。お話にならないわ』




『でも、このまま帰すのも失礼だよね。



 僕、いいこと思いついちゃった』




 「なっ_____!」



 「ラフェエル!」




 「…………!」





 幼い声が止むと同時に私の零した涙が大きくなった。そして、座っていたラフェエルを包み込む。大きな水の塊の中でラフェエルが溺れている。これは魔法………?いや、違う!解除方法がわからない!このままじゃ………そうだ!




 「エアーポンプ!」




 私は瞬時に頭に思い浮かんだ方法を試す。ラフェエルが吐き出した空気は大きくなり顔面近くに空気泡を作り出した。とりあえずこれで呼吸はできるけど、それだって少しの間だけだ。早く助けなきゃ………!




 そう思っているアルティアの横でクリスティドは怒鳴った。




 「マリン、アクア!何をするつもりだ!」




『可愛い可愛いクリスは気にしなくていいことよ』



『そうそう。その力はちょっとだけ凄いけど、それだけだ』



『"教育者"を攫っていくわ、よかったわね自由になれて』



『この子は死ぬけど君は自由だね、バイバイ、腰抜け龍神』





 クスクス。



 クスクス。





 「ラフェエル…………ッ!」





 ラフェエルは笑い声と共に消えた。転移魔法だというのはすぐに気づいた。ラフェエルが、攫われた………………?




 アルティアはクリスティドに背を向けながら、問うた。




 「ねえ、クリスティド殿下………………貴方はさっきの奴らと知り合いなの?」



 「水と海の妖精神だ!クソ、…!今回の悪戯は度が過ぎている!私がラフェエルを連れ帰ってくる!龍神様は___「私も、行く」え_____ッ!」



 室内なのにビュウビュウと風が吹いている。それはアルティアの体から発せられる___魔力だった。



 妖精神と契約を交わしているクリスティドは、その人間が保有する魔力が多少見える。とはいえ、"多少"だ。ハッキリと見えることなどない___筈なのに。




 アルティアは黒一線を中心に多彩な光の柱を纏っていた。膨大過ぎる魔力にクリスティドは口元を押さえた。






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