大きな掌を持つ父
ねえ、神様。どうして?
私は貴方になにかしました?
例え何かをしていたとしても、私は貴方を呪います。
度々邪魔をしてきた両親も、小綺麗になっていく私を妬んだ同級生も、毎回いやらしい目で見てきたバイト先の人達も。
全部引っ括めて呪いましょう。
そして、誓いましょう。
次、生まれ変わるとしたら。
私は貴方を裏切って、必ず自由と幸せを手に入れます。
私は______……………
そこまで考えた所でトントン、と背中を叩かれた。嫌な、暗い気持ちが止まる。
その手がすごく暖かかったから。
心地よい大きな手に、冷えきった涙が止まる。
何、これ…………?
* * *
「ふええ、ふええ……………ふぇ、え?」
目が覚めて、一番最初に目に入ったのは___ガーランドだった。人間の、男の姿をしている。酷く心配した顔だ。
「アルティア……!」
「あぶ………?」
「よかった、目が覚めたんだね……君が夜泣きなんて、珍しい。ビックリしちゃったよ。」
そう言って、安堵した顔のガーランド。なんで…………?
「ふふ。呆けた顔も可愛いね。我の大事なアルティア………不思議なものでな、君が泣くと我も悲しくなるのだ。
親というものは、不思議なものだな」
そう言って優しく笑う。
親……………私の親は、あの両親で………でも今は………ガーランドが、親で。
ガーランドは私の為に心配してくれて。
そこまで考えが至った所で、ぺた、とガーランドの顔に触れた。
「あーら、と」
「……?おい、リング、これはなんと言っているのだ?」
「……ご自身で心の中を覗いて見ればよろしいのではないでしょうか?」
「だめだ、アルは立派なレディだろう?そんな覗きをするようなことをしてはならん!」
……本当に、この龍は。
アルティアははぁ、と呆れながら、もう一度口を開いた。
「ぱ、ぱ!」
「ぱ、パパ……!?パパと言ったのかい!?」
「ぶっ」
私はぷい、と顔を背ける。こっちだって恥ずかしいんだから復唱しないでよ……!
「アルティアが喋った記念に!今日の夜、宴を開く!リング、カイテルに準備をさせとけ!」
「ハッ」
喋っただけで宴~!?
目をぱちくりするアルティアを他所に、ガーランドは満面の笑みを浮かべていた。
これは相当な親ばかになる気がする…………。
先が思いやられるな、と思うアルティアの顔にもほんのり笑みが浮かんでいた。