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次期龍神を行使してみた

 




 「………………………、ふぅ」






 深夜、私は羽ペンを置いて一息つく。

 シースクウェア大国、ヴァリアース大国、セイレーン皇国、グレンズス公国___隣接する国々に訪問の旨を記した手紙を書き終えた所だ。



 シースクウェア大国、ヴァリアース大国は比較的交流のある国だから大丈夫だろうがセイレーン皇国とグレンズス魔法公国は宗教やら身分やらが絡んできて書類が届けるのさえ手間取るのだ。ただでさえ公に妖精神が住む国だと豪語する事などしない。何故なら妖精神が居るだけでその国の属性はより強くなるのだから。




 戦争の引き金に十分なりうる。故に慎重に動いて間違いは無いだろう。アルティアの存在を知らせるのもごく1部に絞るつもりで、表向きは"奇跡的に生きた第1皇太子の婚約者"という肩書きでアルティアを連れていく。





 龍神の存在はそれだけで国家機密。

 未だアルティアの戦闘能力を見ていない故に不安も大きい。




 本当にアイツは強いのか?

 …………あんなに馬鹿っぽいのに?



 雷を落とされてプルプルと震えるアルティアを思い出して首を振る。




 いや、やめよう。考えるだけ無駄だ。




 それよりも。





 「……………それで隠れているつもりか?」





 ラフェエルは静かな声で扉を睨みつけた。否、扉だけではない。クローゼット、カーテン、ベッドの下…………数十人の気配がそこらかしこからする。



 気配すら消せないところから見ると中から下の暗殺者だろう。野放しにしていたがやるべきことは終えた。睡眠時間を削りたくない。





 「やるなら早くやれ」




 「ッ、うぉおおおお!!」




 1人が飛び出してきた。ラフェエルはすぐさま剣を取り切り捨てる。血が飛び散った。それを皮切りにおおお!と声を上げて暗殺者共が一斉に掛かってきた。






 面倒くさいな……………いや、丁度いい、か。




 ラフェエルはぶらり、と両手を下げて右目に魔力を込める。そして囁くように言った。





 「アルティア」



 「うおっ!」




 呼んだだけで突如目の前に現れるアルティア。夜着を纏っている。暗殺者共は突然現れた少女に動きが止まって戸惑う。




 それを見やりながら言った。




 「ここの敵を一掃しろ」



 「はぁ?なん___うぇぇ………!」




 口答えしようとするもののもう既に沢山の鋭い氷を背負っていた。どうやら、本当に命令は絶対らしい。アルティアは大きな欠伸をしながら両手を前に出した。





 ズドドドドドド!と氷は音を立てて動き出す。男達が悲鳴をあげるよりも早く、的確に急所に当てていく。まぐれで躱した男が斬りかかってくるが、人差し指をくい、と動かしただけで躱した氷が男の脳天を貫いた。





 ものの3分で、暗殺者共は息絶えた。

 ………どうやら、本当に強いらしい。

 氷自体は下位魔法だった。しかし絶妙なコントロール___本人の意志のまま動く氷の刃を見る限りもっと強い魔法も使える事を示している。




 何より。




 人を殺しているというのに、なんの興味も示さない冷徹さが気に入った。



 自分を助けたのだからもしかしたら人を殺すことに躊躇しているのではないか?………と思っていたが、完全に杞憂だった。




 「で、この人達なに?悪人にしか見えないし殺したけど平気?」



 「ああ。………だが、部屋が汚れてしまった」



 「それは元からでしょ。最初から血塗れだったし。



 全部悪いのは私じゃないですー。というか、夜に呼び出すのやめてくれない?私寝ようとしてたんだけど」




 「ふん。………折角だ、貴様の部屋で寝るとしよう」




 「え」





 サァ、とアルティアの顔から血の気が引いた。










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