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"契約者"="教育者"

 










 「は……………?契約………………?」






 私は今、とてつもなく馬鹿っぽい顔をしているだろう。そんな気がしてならない。表情筋が見事に仕事してない。そんな私を他所にガーランドはくつくつと咬み殺すように笑っている。




 「何言っているんだよ、その生贄が死んでいない事が何よりの証拠だろう?手枷も消えている。お前の胸に契約印もある。


 これで契約してないなんて言い張ることはできないぞ?」




 全部理解出来ない。分からないことだらけで更に頭が痛くなった。




 「…………今そう言うおふざけ要らないから。本当に契約なんてしてないし」




 「ふむ、じゃあお前はその生贄とキスをしてない、と?」




 「…………!な、なんでキスしたこと知ってるの!?」





 「なんでって、神と契約するには"唇を重ねる"事が絶対条件だからな」




 あっけらかんとしながらさも当然なように言うガーランド。あ、だめ、私の右手。静まれ。話を聞くまで殴っちゃダメだ。





 「…………………どういうことですか?ガーランド様?」





 「説明するならその生贄と一緒の方がなにかと効率が良さそうだ。生贄の話も聞きたいしな。


 とりあえずアルは服を着てこい。我の見てない所で男と唇を交わしたんだ。その上裸をまじまじと見せてやるなんて許さぬ。リング」



 「は。………アルティア様、小言を挟みながら服を着ていただきます」




 「うぐ、………………」






 珍しく笑顔なリングに、ダラダラと長い小言を言われる事を覚悟して自室に向かった。







 * * *








 「ん、………………」






 眩しい…………………。薄目で目を開ける。太陽が自分を照らしていた。枕も布団も全てが黒いベッドに自分が寝ていた。気色悪い趣味だ。私は……………!





 意識を失う前の記憶を思い出して、飛び起きた。すると、ベッドの横にあるソファにアルティアと同じ長い黒髪、金色の瞳の男が座っていた。






 「目覚めたようだな、生贄」





 「貴様は……………ッ」





 身体を起こそうとしたら右目が疼いた。男はさも詰まらないと言わんばかりに言う。




 「やっと契約印を刻んだ痛みを自覚したか。もっとしておけ。我の娘の唇を奪ったのだから一生痛めろ」




 「我の娘…………つまり、貴公は龍神殿というのか?」




 「ふん。ベッドが邪魔で元の姿に戻れんのだ。目が覚めたならとっとと起きろ。…………とはいえ、もう生贄ではなく"教育者"なのだから無下にはせんが」




 「……………教育者?」





 なんだそれは………………?

 知らない単語に思考を巡らせると龍神は呆れた、と漏らした。





 「貴様、なにも知らずに龍神と契約を交わしたというのか?……浅はか、無知、…いや、そんな言葉では収まらぬ。カイテルの話だと貴様は歴代サクリファイス大帝国第1皇太子で一際優秀だと聞いていたが………………まあ、よいわ。


 飛び出したのは無知な我が娘故、無知を許そう」


 「ッ!」



 男は盛大に溜息をついてから立ち上がると、胸倉を掴んで自分に引き寄せた。意識を飛ばす前もアルティアにやられたな、と思っていると男は静かに言った。






 「……"不完全な龍神と契約を交わすサクリファイスの生贄は完全な龍神になる為に教育を施す"」





 「……………?どういうことだ」





 「言葉のままだ。…………生き長らえた貴様には、アル……アルティアの"教育者"となって貰う。」







 男がそう言うのと同時に、奥の扉が開いた。

 服を着たアルティアが出てきた。









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