龍神の娘は気に食わない
_______思ったより、面倒臭い死に方をするようだ。
ラフェエルは落ちながら、そんなことを考える。
歴代の第1皇太子はこのような、児戯のような死に方をしたのだろうか。
ような、ではない。児戯なのだ。
龍神の児戯。徒に命を弄び苦痛を与える。
輪廻転生など端から信じていない。仮に在ったとしてもそれは"私"ではない。だから問題はない。
ただ、100年もその児戯に付き合うのが面倒なだけだ。
____まあ、いい。
知りたい事は知れた。まだ知りたい事はあるが…………これでは仮に生きてたとしても知るのは無理だろう。
ちらり、と自分の枷を見る。ビクともしないソレは冷たい。罪を償うような感覚だ。
実際、そうなのだろう。
先祖の罪を償う。
今世の罪を償う。
___沢山の罪を重ねた。
因果応報だ。報いは受けよう。
そんなことを思った時___声がした。
「いたッ!!!!」
「………………………!」
もうすっかり聞きなれた女の声。見ると____次世代龍神・アルティア=ワールド=ドラゴン。
裸の女は必死に手を伸ばして私の手を掴んだ。
「浮遊ッ!!!!」
「………!」
アルティアがそう叫ぶと、私の身体は浮いた。アルティアは裸のまま、私の肩を掴んだ。
「ばっっっっっ、かじゃないの!?」
「!」
第一声がこれだった。裸だということすら忘れているのだろう、捲し立てる。
「なんで自分から死のうとするの!?なんで命令なんて聞くの!?なんでッ…………そんな平然としてるのよ!!!!」
「………巫山戯たこと言ってないで、この魔法を解除しろ。役目を果たせない」
「役目………………?」
「そうだ。此処で死ぬのが___私が生きた理由だ。生まれた頃から与えられていた宿命。宿命を果たせず生きても死んだのと同義だ。
余計な事をするな。貴様も龍神ならばそれぐらい…………なにも知らない龍神だとしても、少し考えればわかるはずだ。
自分の職務を全うする。それが"生きる"ということだ」
「生きる理由…………宿命……………職務………………アンタ、本気で言ってるの?」
「ああ、そう_____ッ!」
自分に拳が向けられた。反射的にそれを片手で諌める。男より一回りも2回りも小さな拳は、震えてた。
「……ざ、けんな………ふざ、けるなぁ!!!!!!!!!!!!」
「_____ッ!」
びゅう、と強い風が吹いた。浮いていた身体は落ち始める。それはアルティアも同様だった。然し女はぐい、と私の胸倉を掴んで怒鳴った。
「生きた理由を決めるのは他人じゃない!自分だよ!宿命ってなに?!他人が決めた人生になんの魅力があるのよ!!!職務で生きてる人生が楽しいわけないじゃない!!!!
死ぬってどういうことかわからないから、アンタはそんなことが言えるんだ!死ぬことがどれだけ悔しくて……辛くて………苦しいのか知らないから…………なんでッ、生きられるのに………アンタ自身が、なんで生きるのを諦めているのよ!
この大バカ野郎!!!!!!!」
アルティアは___泣いていた。大粒の涙が空を飛ぶ。そんなの気にしないと言わんばかりに、私に言った。
「アンタはッ…………本当に生きたくないのかッ!!!」




