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龍神とサクリファイス皇族

 










『さて、何から話そうか………………。その堂々たる態度、今までの生贄とは一味違うな。それに免じて、生贄の質問から応えようか』




 「わ、っ」





 龍神はそう言って尻尾で守っていた女を自分の前に出した。尻尾で女__アルティアの髪を梳きながら、言う。






『____人間は龍神が10万年前からずっと居ると思っている。そうだろう?』




 「…………ああ。事実、龍神殿は私の目の前に居る」




『ふ…………たしかにな。然し、私は9代目龍神だ。』




 「9代目…………………?」




『そう。1万年に1回龍神は代替わりを行う。その理由は___まあ、それこそ貴様の預かり知らぬ事よ。


 龍神と言うのはな、元々は人間がなるものなのだ。貴様の住むこのユートピアと、ほかの世界に住む神々の会議___魂のより多く集まる場で、それぞれの後継となる人間の魂を探し、それ相応の力を有する人間を自身の子とする___そして、その子供が龍神となる。




 ここにいる我が娘____アルティア=ワールド=ドラゴンは我___ガーランド=ワールド=ドラゴンの跡を継ぎし次世代の龍神よ』




 「「!」」




 龍神は得意げにそう言った。やはり最初に思った通り代替わりが関わっていた。人の魂を使って自分の子にする、と言うのは知らなかったが………何故、アルティアまで驚いている?




 その疑問に応えたのは、龍神だった。




『私の娘は頑なに龍神になりたがらなくてな。故に細かい事を教えずに18年生かしてきた。見た目も思考も人間なのは未だに龍神として未完全だからだ。しかし、素質は充分すぎる。代替わりも恙無く行えると思っておる』



 「…………ッ」





 アルティアの顔が遠目からでも歪んでいるのがわかる。龍神になることを了承してないのは本当のようだ。龍神はそんな娘に擦り寄り、静かに言う。





『次は可愛い我が子に真実の一欠片を教えてやろう。サクリファイス大帝国___この生贄の国とは10万年前、龍神と"契約"をしているのだ。



 その話は____そうだな、貴様にして貰おうか』





 龍神は目を細めて私を見た。私はそれすらも知らず次期龍神という大任を押し付けられた哀れな女を見ながら伝承を口にした。



 「____10万年前、龍神殿が人間や妖精、精霊を作り出した。人間は最初こそ従っていたが龍神殿に反乱を起こした。その先頭に立って人間を指揮していたのは………我ら、サクリファイス皇族。妖精神と精霊を誑かし大きな戦が起きた。勝ったのは龍神殿。敗戦した我らサクリファイス大帝国は一生龍神殿に忠誠を誓う為に、ある契約を交わした。




 "20歳を迎えた第1皇太子の身と心を、龍神殿に必ず捧げる"…………と。」






 「…………………は?なに、それ?じゃあ、アンタは……………!」




 「そうだ。私は______今世の第1皇太子、ラフェエル・リヴ・レドルド・サクリファイスだ」






 「______!」






 女は両手で口を抑えて目を見開いた。…………何も知らず、居たのだな。だから私に幼い頃から普通に接して来ていたのだな。私は元から自分の人生を知っていた。不安が完全になかったわけでなくともそれ以上に安心感があった。





 しかし。





 この女にはなかったのだ。勝手に選ばれ自分の運命さえも知らず、のうのうと生かされてきた。





 これを哀れだと言わずなんという?












 ラフェエルは心の底から女___アルティアに同情した。








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