風の精霊の気持ちと仲間の気持ち
『………………サイファーとの、約束?』
スカイはダーインスレイヴ、という男の言葉にがた、と少し立ち上がった。
……………嗚呼、やっぱり…………………
スカイちゃんの心には、未だにサイファーがいる。ワタシは会ったことがない男。こう見えて、ワタシはまだ3000歳なの。
生まれてからずっとスカイちゃんの傍にいた。
ワタシがスカイちゃんを好きになるのは当然だった。人間じゃないのにね、それでも好きという感情が生まれるなんて、不思議よね。
でも、スカイちゃんはサイファーしか見えていない。名前しか知らない男をこれほど恨めることがある?
嫌な気持ちを抱えるワタシを他所に、ダーインスレイヴは言う。
「そうです。内容は___きっと、アルティアがその身をもって見せてくれる。
アルティアは私達3人の、"希望"なのです。育み、見守り、……………目的の地・ワールドエンドの果てに何を見て、どう行動するのか………………そこまで導くのが俺の役目」
アルティア、という言葉に全身が痛みを発する。先程の傷は癒えたけど、心のダメージは治らなかった。
でも、この男にそこまで言わせる子なのだと考えると、自分が負けるのは仕方ないことだと納得出来る………気がする。
『_____我に、何をしろと言うのだ?』
スカイは静かに、それでいて低い声で言う。ダーインスレイヴも負けじと低い声で答えた。
「貴方がたの屈服印を望みます。___それがなければ、なにも始まらない。
何かを変えるための小さな芽生えを支えてもらいたい。アルティアは優秀です。きっと、この世界の全てを知ったら……………アルティアは、"それ"を壊してくれましょう」
『……………………図々しいな。手下を使って屈服を乞うなど』
「全ては俺の独断です」
『わかっている。………………しかし、あの娘は今回の件で旅を辞めるのではないか?我に約束したぞ』
「それは_____おそらく、サクリファイス第一皇太子、ラフェエルが良しとしないでしょう。俺は何も心配していません」
『……………………』
確かに、あの子はそう言うでしょうね。
自然とそう思えた。
だって、ワタシ達がいくら言っても『旅は辞めない』と突っぱねてたんですもの。そう簡単に曲がらないわ。頑固でワイルドな子だし。
『……………………よかろう。
だが、今から2人が何か話すようだから、それを聞いてからだ』
『あら、覗き?スカイちゃん、お行儀が悪いわ』
『覗きではない。……………お前たちは見るなよ』
そう釘をさして、スカイは目を閉じた。
* * *
時間は少し遡り…………。
「……………ねえ、クリスティド様、アルティア先輩、………どうするんでしょう」
「何がだい?」
神殿の一部屋、仲間達はリーブ以外集まっていた。リーブは"夜風に当たりに行く"と言っていたラフェエルについて行った。
それはともかく、フランはクリスティドに不安そうに聞いた。クリスティドはわざと知らん顔でそう返すと、フランはキッ、と睨んだ。
「なにって、ワールドエンド行くのやめちゃうかどうかですよ!………折角ここまで来たのに…………」
「…………………………でも、ラフェエルが死ななくて済むのは現時点でそれしかないだろう?」
「それは……………………」
「………………わたくしは、旅を辞めて欲しいです」
エリアスは膝で寝ているガロの頭を撫でながら、涙をポロポロと零して続ける。
「わたくしは……………アルティア様もラフェエル様も好きです、旅をして少しは2人のことをしれた気がします……………2人のお人柄を考えると………………この宿命はあんまりじゃないですか…………………ッ」
エリアスはそう言って、すすり泣いた。




