次期龍神は語る
「ねえ、どういうこと?
なんで見ず知らずの妖精神と精霊が私達の邪魔をするの?連れていかせたくないって何?」
アルティア様が星の妖精神様・ゼグス様と氷の精霊・シヴァ様に詰め寄る。けど、2人は口を開こうとしなかった。
その気持ちは痛いほどわかった。
見たことの無いファーマメント王国にいるという妖精神、精霊の気持ちも分かる。
"ラフェエル"を連れていかせたくない理由なんて、ひとつしかない。
けど、それを言葉にするのは……………怖かった。自分の主人が"ソレ"を選んだこと、何を言っても譲らないこと…………………それを、知っているから。
でも、肝心のアルティア様は……………本当に何も知らなくて。アルティア様はゼグス様が答えないとわかると、次はシヴァ様に詰め寄った。
「そもそも、この旅はラフェエルが無理やり私を連れてしたものだよ?そりゃ、ガーランドに言われたからだけど、それでも私に色々教育した。ちゃんとした龍神になるために、って何度も罰を落とした。
そのラフェエルがワールドエンドに行きたくないわけないじゃない。そんなに私って屈服したくない龍神なの?」
『そうじゃない。そうじゃないんだ』
「じゃあ、何よ。……………というか、みんなもなんで黙ってるの?なんで何も言わないの?何か知ってるの?」
「それは………………」
エリアス様は言い終わる前に下を向いた。皆、アルティア様に目を合わせないようにしている。あのフラン様でさえ、窓の外を見て静かにしている。
それを更にアルティア様が言葉を重ねる。
「そりゃ、ぽっと出の私を信用してなんておかしな話だと思うわ、私が妖精神だったら知らない小娘に加護なんて与えたくないもんね。
でも、そうだとしたら私に直接喧嘩売ればいいじゃない。ラフェエルを巻き込むなんておかしすぎるでしょう?
ラフェエルが狙いなの?そりゃあラフェエルはハイスペックだよ、なんか悪いところあれ!ってほど完璧だよ、私以外に関しては、だけど。
…………いや、そんなことないか、みんな平等に冷たいもんね。じゃあなんで?」
アルティア様はそこまで考えて耳たぶを弄る。黙っている私たちに苛立っているのか、呆れているのか、いつもの笑顔はない。
しばらくそうしてから、また口を開いた。
「あ、フランみたいにラフェエルのことを手に入れたくて?なら尚更許せないわ。ラフェエルは望んでないでしょうし、望んでたとしても、ゼグスに次の行き先のことを聞くことなんてしないでしょう?
他に理由があるとしたら……………なんだろ、ラフェエルを親的な目で見ていて、旅に出て傷ついたりしないためとか?
そんな心配は無用なのにね。私なら大抵の事はできるし、みんなだって強いもの。それに、ラフェエルは守られるタマじゃないでしょう?
空の妖精神ならきっと見てたはずじゃない、なのに、それをわからないなんておかしくない?私は自分が強いこと自分でわかるくらい強いんだよ?
私のそばがいちばん安全に決まってるじゃん。
大体、なんで旅を辞めなきゃ行けないの?どうして?無理やり旅をやめさせるなんて…………………旅を早く終わらせれば、ラフェエルは自由に___『…………ならねえんだよ』………………?」
アルティア様の言葉が、止まる。
シヴァ様が立ち上がっていらっしゃった。その形相には……………怒りが込められていた。




