不穏な空気と星の妖精神の目覚め
『太刀筋はよかったわ~ワタシじゃなかったら間違いなく死んでたわ』
男はくねくねと腰を振りながら言う。
金色の瞳____それは、間違いなく"人ならざる者"の証だ。
ラフェエルは睨みながら、男に聞く。
「____貴様、妖精神か?」
『あらやだ、普通は誰~!?とか騒ぐものじゃない!?
……………って、次期龍神と居ればわかっちゃう、か。
ほんとも~、いやんなっちゃうわね』
そう言ってまた笑う男に、腹が立った。
ラフェエルはドスの効いた声で言う。
「私の質問に答えろ」
『いやん、とってもワイルド、惚れちゃうわ……………なんてね!
その質問に答える前に___邪魔者は消さなきゃね。
ホーリーエアロ♪』
「ッ!」
『ギャァァッ!』
男がそう言った瞬間、強い風が吹いた。
私を通り越して後ろにいた黒騎士に命中、黒騎士はボロボロと黒い粒子を出して、消えていく。
アルティアの術で出した物を、一撃で…………………!?
目を見開くラフェエルを他所に、男は『邪魔者はいなくなったわね』と言ってから、私の傍に来た。
『ワタシは____風の精霊・ウェイト。お会いできて光栄ですわ、サクリファイス大帝国の第一皇太子サマ♪
華麗な挨拶も終えた所で、早速本題に入りましょう。
______今宵、貴方を攫います』
「ッ、巫山戯るな!
氷魔法!」
ラフェエルは剣を手放し、氷魔法を唱える。氷の刃は………………………大きな風に吹き飛んだ。
「いやねえ、ふざけてなんてないわよ。マジのマジ、大マジよ。
因みに、貴方には拒否権が無いの。
これも_____貴方を"守る"為だから」
「_____!」
金色の瞳が、光り出す。そして男は…………………姿を変えた。
その姿を見て、俺は_______アルティアの顔を思い浮かべた。
いつもの馬鹿面笑顔、怒った顔、真剣な顔。
アルティア、俺は_______……………
* * *
アイスバーン城、玉座の間。
「あんの精霊どこいったわけ~~~~!?」
フランはギャン、といつものように吠える。気持ちはわからないでもない。シヴァは突然血相を変えて、『ちょっと行ってくるわ』なんて言って何処かに言ってしまった。本当に自分勝手である。
「私達がこんなに頑張ってるのに…………うっうっ…………聖女も辛いよ……………」
「あのねえ、アンタより私の方が辛いってーの。もう何をしてるのかわかんないわ、ゼグスに魔力を送ってるだけで防御魔法がどうなっているのか、私の騎士がどうなっているのかさえあやふやなんだから!」
「先輩はヒロインなんだから弱音を吐かないでください!」
「だから私はヒロインじゃないって!龍の神!略して龍神!あーゆーおーけー!?」
「チート龍神がこれから恋に落ちて世界をなんだかんだ救ってハッピーエンド…………やっぱり異世界恋愛小説ですよ!
ラフェエル様ととっととくっついてくれません?マンネリ展開は読者楽しめませんよ!」
「何でもかんでも小説にすりゃーいいって考えないでよ妄想女!っていうか!なんで相手がラフェエルなのよ!」
「あ、ガロちゃんですか?ショタおねですか?」
「あー、絶許、これ終わったら絶対アンタを殴る。決めた」
なんだかんだもうすっかり作業に慣れ、軽口を叩き合う2人。ダーインスレイヴはやれやれ、と溜息をつきながら言う。
「………………2人とも、いつまでそいつの手を握ってるんだ?」
「?いつまで____ってぇ!?」
「お、おはよう……………?」
フランとアルティアがダーインスレイヴの指さす方向を見ると___ゼグスが穏やかな笑みを浮かべて起きていた…………って!
「はぁ!?いつの間に起きてるの!?」
『ついさっき、かな?身体が嘘みたいに軽いよ、凄いねえ、龍神と聖女は』
ケロリとさも当然に言ってのけるゼグス。フランは首を傾げた。
「なんで起きたのに、声掛けてくれなかったんですか?」
『いや、両手に花という状況を楽しみたくてね』
「こんのエロジジイ!」
『いたっ!』
アルティアは離した手で思いっきりゼグスの頭を叩いた。溜まっていたフラストレーション全部掌に乗せた張り手。ラフェエルにそっくりだから、ラフェエルを叩いてる気分でちょっとスカッとしたのは秘密だ。
「起きたなら早く結界張りなさいよ……………って!次はシヴァが居ないんだった!あーもー!」
『俺は居るぜ?』
「うわっ!」
頭をぐしゃぐしゃとした所で飄々な声がした。振り返ると、声の主であるシヴァと____
「!ガロ!」
シヴァに抱かれたボロボロのガロがいた。




