私の特殊能力は"想像"です
____龍神というのは、何かしらの能力を持っているらしい。
それにやっと気づいたのは、10歳になってからだった。ガーランドを初めとするアトランティスのアンデッド達に聞いた訳では無い。自分で悟ったのだ。
何故ならば。
パァア、と足元に魔法陣が発現した。アトランティスの天井に照らされると大きな渦が現れ____大きな、禍々しいのに神々しいようにも見える鳥のような生き物が現れた。前世で趣味だったお絵描き、読書、それらをしながら自分が空想して作り出した生き物だ。
元々魔法が得意だった。けど、歳を追うにつれてそれは"魔法が得意"という表現とは少し違うことに気がついた。
私は、私が"空想する"魔法や技を使えるのだ。要は私が"こうしたい"、"ああしたい"、"こういう生き物を作りたい"………それらが創造できるということ。
つまり、つまりだよ?私が持っている魔力が尽きなければ、より大きな力が邪魔しなければなんでも出来ちゃうってこと。それって私TUEEEEってことじゃない!?
『グルル、……』
「あっ、ごめんごめん」
作り出した生き物が寂しげに鳴いたから撫でる。もふもふとしたいい触り心地だ。折角作ったんだ、名前をつけてあげよう。
「君はー、ヴァルちゃんだね。ヴァルだよ」
『ピィイ!』
嬉しそうに鳴くヴァルに思わず笑みが零れる。私の友達3匹目。可愛いヴァル。
「おや、アル、また幻獣を創り出したのかい?」
「げ」
声がして思わず顔が引き攣る。見ると、黒いロープを身に纏った黒髪黄金瞳のイケメン・ガーランドと執事服を見に纏いメガネを掛けた白髪オールバックの悪魔・カイテルだった。
「アルティア様ぁぁぁぁぁ、今日も一段とお美しい!麗しき次期ご主人様は人間などよりも100倍お美しい……絶世の美女など裸足で逃げ出してしまいます……ああ、貴女は可憐な1輪の黒薔薇………」
「あーはいはいはいはい。わかったから近づかないで」
恥ずかしい妄言を惜しげも無く紡ぐカイテルを軽く流す。もうこれは業務の1つだ。カイテル。何度も言うけどガーランドの忠犬ワンだふるなお花畑の悪魔だ。赤ん坊の時、悪魔と聞いて僅かに期待していた自分を殴りたい。ただの変態です悪魔は。そんなことを思ってるとほう、とガーランドは声を上げてヴァルに触れた。
「この幻獣は聖の魔法を宿しているのか。アンデッドが創り出した物にしては清らかだ。やはり我のアルは優秀過ぎるな」
「ちょっと。触んないでよ。汚れる。」
「パパは清らかな心の持ち主だよ?傷ついちゃうなぁ」
「ケッ。あっかんべー。」
「カイテル、これは反抗期、というやつか?」
「そのようでございます。流石次期龍神様。気高い方で将来は安泰ですね。
にしても……やはり、アルティア様は不思議ですね。膨大な魔力、それに伴う創造力……感服を抑えきれません。」
「そうだろうそうだろう、我の娘は史上最強の龍神となるのだ。…否、龍神の歴史を覆せるかもしれぬな、なあ、アルティアよ」
「………」
なでなでと頭を撫でられる。別にあんたらの為じゃない。龍神がなんなのかさえ教えてくれないじゃないか。だから私はこの幽閉期間に力をつけて出て行くための準備をしているだけ。……けど、まあ、撫でられるのは嫌いじゃないから撫でられてやってるけどね。
私はフン、と鼻を鳴らしながらなでなでを受けた。




