次期龍神は超絶鈍感
え?え?え?
頭がなんで?の大洪水を起こしている。
なんで私は押し倒されている?
「あの、ラフェエルさん?」
「なんだ?」
「な、なんでこんなことするの?」
「……………わからないか?」
「はい、とってもわかりません」
本音だった。なんで私が押し倒されているのか、なんでこんなにラフェエルの距離が近いのか、などなど分からないことしかありません。…………というか。
紅銀の髪、紅い瞳、いつものお堅い服装からかけ離れた、エロい胸板が覗く夜着姿のラフェエルはやはり紛うことなきイケメンである。エロい。本当になんか、エロい。こんなの免疫のない私に直視などできない!
そう思い至った私は顔を逸らす。しかし、すぐにラフェエルの大きな手が優しく私の顔を自分の方に向かせる。
………………なによ、その顔。
ほんのり紅くなっている頬、普段のラフェエルからは想像出来ないほど余裕のない顔。
乙女ゲームのスキルのようだ。
それも終盤、ヒロインにしか見せない愛おしげな、物欲しそうな顔。
その顔が、ゆっくり近づいてくる。
イケメンは肌も綺麗!……………じゃなくて!
「タンマタンマタンマ!!!」
「ん」
私は慌ててラフェエルの唇を手で覆った。そして口を開いた。
「そんなほいほいキスしないでくれる!?私達はそういう関係じゃないでしょ!?」
「……………………」
「ねえ、どうしたの!?はっ、まさか、まだ再契約がされているのか不安なの!?ほら!私の首筋みて!金色の契約印はすっかりこのとおり復活しました!」
そう言って、ラフェエルの口から離した手を首筋に持ってきて強調した。
「契約解除?再契約?なんのことだ」
「だから!昨日!聖女に契約解除の儀をされたでしょ!それで契約解除されて、だから私がまた契約を交わしたの!アンタが前にしたキスで!
…………え、アンタ、覚えてないの?」
「………………………………」
ラフェエルは口元を抑える。何かを考えているようだ。…………この様子じゃ、まったく覚えていない上何が起きてたのかさえ知らない可能性まで出てきた。というか離れて欲しいのですが?心臓がそろそろ破裂しますよ?
「……………しかし、お前は私が好きなのだろう?」
「はい?」
さも当然と言わんばかりにこんなことを言いよった。何を言っているんだこの皇子?
「……………さっき言っていただろう、私を好きだ、と」
さっき、と言われて真っ先に思い浮かんだのはキスしたあとの会話だ。
私が好きだと言って、ラフェエルは一生離れない、と返してくれた。
…………………よく考えたら、これってプロポーズみたいじゃない?
そう考えると気恥しさが最骨頂に達した。ほんと私、何言っちゃってるの!?うわうわうわうわ!
私は思わずぐい、とラフェエルの胸を押した。
「ああ、それは、その、契約者として!!大事な契約者として!!!えっと友達!!トモダチ的な!!他人以上友達未満的な!?
だからそういう好きでは決してなくて!!」
「……………………………」
おや?ラフェエルの様子がおかしいぞ?
さっきの甘いフェイスはどこへやら、とっても冷たい視線が私を見下ろしている。ブリザードかな?
そんなことを考えている私からやっと離れたラフェエルは、くるり、私に背を向けて呟いた。
「罰」
「ふぎゃぁぁ!?」
黒い雷_いつもより超特大_の罰が、私に落ちた。




