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2「職業せんたく!」

まだまだ序盤で旅とか冒険まで時間かかりそうなので初投稿です。

 見渡す限り続くレンガの家々。町の中央には時計台があり、丁度今ゴーンゴーンと鐘が鳴ったところだった。


 静かな町には風の音と噴水の水音、そして鐘の音だけが鳴り響き、清涼に吹き抜ける風の感覚も相まってまるで空気が浄化されていくかのようだ。


「……そうだ、他にも色々書いてあったっけ」


 チセはしばらく街並みを見つめていたが、我に返ってステータスを開く。すると、布の服と布のズボンが装備されていた。


 どうやらキャラクリエイトが終わったら自動的に装備されるらしい。


 ともあれ今目的とするのはまた別の事。


(このアイテムボックスっていうのは多分持ち物、だよね?)


 チセはMMOはおろかRPG自体ほとんどやったことがない。小さなころに父親に貸してもらった時以来である。あの金髪の天使はアイテムについて分かっている前提な風で話していたが、チセにとってはそこも手探りだった。


 恐る恐るタップすると、持ち物の一覧が表示される。


――――――

リスト

▼特典チケット 詳細

 布の服E   詳細

 布のズボンE 詳細

 薬草×5   詳細

――――――


(……特典チケット?)


 布の服やズボンは装備したものだろうけど、そんな持ち物、天使にも全く説明されていない。思い当たることは……


(ああ、初回限定盤!)


 入っていたHAOには確かにそう書かれていた。特典というのは初回購入者向けの何かなのだろう。


(でもどうして中古なのに特典を貰えたんだろう)


 自分の前に誰かが遊んでいるにもかかわらず、特典を受けられる。もしかして私の前に買った人はプレイせずに売ってしまったのだろうか。


 不思議に思うチセだったが、実を言うとこれは同じ端末を複数人が使いまわすことを考慮していない運営のミス。ただのバグだった。


 初回限定版を買う人は大抵自身のデバイスを他人に貸さないので気づかれず、結局放置されていたのだった。


 チセは特典チケットの隣の詳細を開いてみる。するとこんな文章が表示された。


――――――

この度はHoly Ark`s Online初回限定版をご購入いただきありがとうございました。このチケットは職業ギルドにて各職業専用装備「銀の剣」「銀の双剣」「銀の槍」「銀の手裏剣」「銀の杖」「銀の斧」「銀のレイピア」「銀のダガー」「銀の刀」「銀の弓」のいずれかに加え薬草50個、キュアポーション10個と交換可能です。

不明な点がありましたらGMチャットにてご報告ください。

HAO運営より

――――――


(うう……購入なんてしてないしなんだか悪いことした気分)


 文面を見るに、このチケットは以前の持主が受け取る筈の物だ。実際のところが運営のミスとはいえ、チセにはそんな事分からない。勝手に人の物を取ったようで申し訳ない気持ちで一杯だった。


(ま、まあいいよね! 中古で売ってたわけだし!)


 しかし、せっかく貰ったものだ。チセはありがたく使うことにした。


 さて、チセは一通りステータスや持ち物について確認した後職業ギルドに行くことにした。


 だが、場所を調べようと地図を開くと。


(ひい、ふう、みい、よ……一体いくつあるの!?)


 十数個もの職業ギルドがある。一口に職業ギルドとはいっても剣士ギルドや魔法使いギルド、盗賊ギルドに格闘ギルドなど様々な種類があった。


(つまり、ここでなりたい職業を決めなきゃいけないの……)


 チセはうんうん唸って考えるが、どの職業になるのか決められない。


(どれがいいのかな……体は動かしたいけど)


 チセの町は殆ど高層ビルなどが立ち並んでおり、思いっきり遊べる場所は一切無い。一応学校のグラウンドは存在するが、それも50m四方という狭さだ。その為体育等はあまり場所を取らない物しかしていなかった。


 とはいえチセも育ち盛りの女の子だ。目いっぱい運動できる場所があれば自由に遊びたかった。


(でも魔法もやってみたいなぁ……どうしよう)


 かといって魔法を使いたくないかといえばノーだ。魔女という響きはかっこいいし、呪文や魔法陣で色んな事を起こせる、というのはそれだけで興味がそそられる。


 しばらく地図の施設の名前欄とにらめっこしていたチセだったが、どうしても決められないのでGMチャットで相談することにした。


 GMチャットとは言っても、文字を打つタイプではなく音声認識を利用した通話の様な物。AIの対応力と合成音声、音声認識の進歩のなせる業だ。一応アーカイブもリアルタイムで残るので聞き逃しもないようになっている。


「これで……いいんだよね」


 チセはチャット開始のボタンをおそるおそる押すと、ディスプレイに話し始めた。


「ええと、すみません、職業について少し質問していいでしょうか」


 すると、ものの一秒も経たずに返事が返ってくる。

 

『ああ、さっきの子ですか。どうかしました?』


 ディスプレイから聞こえてきたのは先程まで話していた声。……キャラクリエイトの時の天使はGMも兼任していたようだ。チセは少し感心しながら続けて喋る。


「魔法も使いたいけど、体も動かしたいのですが、どの職業にすればいいでしょうか……」


『ふーむ、つまるところ武器も使いたいし魔法も使いたいってことですね? それなら魔法戦士がおすすめです♪』


「魔法戦士……?」


『遠距離攻撃の魔法と近距離攻撃の武器を組み合わせた職業です。武器は選択可能だったりするのですが、詳しいことについては職業ギルドの人が教えてくれますよ!

 他にも用語辞典が開けるのでそちらでも調べられますが、それでも分からない時は同じギルドのプレイヤーに頼るのもいいかもしれません!』


「ああ、はい。とりあえず職業ギルドに行ってみます」


『せっかくなので場所もマップと視界にマーキングしておきますね! では、よいHoly Ark`s Onlineライフを♪』


「ありがとうございました」


 また何でも言ってくださいねー! と明るい調子で天使が言うと、通話は終わった。


 チセはGMチャットを閉じ、地図を開く。すると青い光を放つ場所があった。方向を確認してその場所へ現実でも目を向けてみると、空に青い光の柱が立っていた。


 次に、用語辞典を探してみる。用語辞典はステータスを下にスワイプし、〝システム〟欄を調べると出てきた。


 マ行を選択し、探すと魔法戦士の欄が見つかる。


――――――

魔法戦士

魔法と近接戦、双方のエキスパート。敵が遠くにいるときは魔法で牽制し、接近戦になると武器を用いて戦う。また効果は低いが自身にバフや回復をかけることも可能で、様々な戦略を高度にこなせるジョブ。

運用難易度は高いが、熟練の魔法戦士は独りで複数人分の仕事をこなせるだろう。


一覧に戻る

――――――


(魔法戦士……かっこいい……!)


 書かれていた内容はチセにとってまさに理想的。様々な戦略を高度にこなせるというのもすごく強そうだ。


 GMの天使さんのおすすめだし、間違いはないだろう。


「れっつらごー!」


 チセは意気揚々と青い光柱の麓へと歩いて行った。

HAO一口メモ

HAOの魔法は名前を叫ぶ方式。短縮することも出来るが大きな減衰がかかるのでよっぽどのことがない限りは推奨されていない。

デバイスの前の持主の累計HAOプレイ時間は8時間。ちなみにAAO(サービス終了済み)は十数年やったので数万時間。

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