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1「キャラクリエイト!」

VR物テンプレのキャラクリエイト回なので初投稿です。

〝Hello,the connection is ready. Rink start.〟


 そんな文字列が目の前にディスプレイ型の端末の様に現れたかと思えば、景色が変わりぶわーっと周囲に雲が走り抜ける。それと同時に心地よい風が吹き抜け、神々しい太陽を背景に大きく会社名が浮かび上がった。


 いわゆる起動時に流れるアレである。昔で言えばゲー〇ボーイやD〇、P〇、はたまたWi〇dowsのアレだ。しかしフルダイブのそれは新しい体験を感じてもらうために、ものすごく壮大なものになっていた。


(すっごーい!! なにこれ! 空飛んじゃってるー!)


 案の定フルダイブ初体験の少女は大興奮。デバイスの開発側はさぞ胸を張る事だろう。


 さて、視界は一転して盛大な曲が流れ始め、中世の城のような物や大海原、夕暮れに向かって遠吠えしている獣、騒がしく祭りを催している城下街などに切り替わり、短めのPVが流れた後にHoly Ark`s Onlineのロゴが出てくる。


(どうしよう……ワクワクして顔がにやけちゃう……!)


 少女はもうにやにやが止まらない。両親は一度も旅行になんか連れて行ってくれなかったし、そもそも前時代の環境破壊とやらで風光明媚な場所も減っていると聞く。外に出ることはあっても遠出することはほとんどなく、自然なんて画面の向こうの話でしかなかった。


 現在も画面の向こうと言えば向こうではあるが。


『新しい脳波を検知しました……ニューゲームを始めます』


 そんな電子音が世界に響くと共に、魔法陣の様なエフェクトが流れて少女は暗い部屋へ転送された。


 音楽が神聖なクラシック調に代わり、どこか心地よい香りが漂う。


 気が付くと目の前には金色の長髪で、顔の整った女性がスポットライトを浴びて立っている。

 その女性は白いワンピースの裏に大きな羽をはやしていた。


(天使みたい……)


 少女がそう思うと、目の前の存在はニコッと愛らしい笑みを浮かべた。


「天使ですよ」


「えっ、何で分かったの!?」


 考えを読まれたことに少女は驚愕する。 


「それは……秘密です♪」


 どうやったんだろうか。確か人間の考えをコントロールする技術は二十年前にはまだなかったはずだ。少女が考えている間にも天使は話を続ける。


「それにしても新しいお客様なんて八年振りですよ! 私も暇で暇で……」


「八年!? それはヤバいですね……」


 もしかしてかなり古いゲームだったのだろうか。そんなことを少女は考えていた。実際は古いどころの話ではなく、少女よりもゲームの方が年上という有様なのだが。


「さて、それではキャラクリエイトを始めましょう。まずはお名前をお聞かせください」


 少女は暫し悩んだのち、結局本名を登録する事にした。


「ええと……チセでお願いします!」


「チセさんですね、いい名前です♪ 登録しました!」


 天使がそう言うと、少女の目の前に半透明のディスプレイが浮かぶ。


――――――


 名前 チセ

 職業 Null

 種族 Null

 状態 無し


 ステータス

 HP ■■■■■■■■■■

       10/10

 MP 

       0/0

 SP  50

 攻撃 5

 防御 5

 敏捷 5

 器用 5

 知力 5


 スキル

 Null


 称号

 未設定


 装備

 Null


 所持金

 100G


 アイテムボックス


 ログアウト


 GMチャット


 フレンド


――――――


「うわっ!」


 いきなり出てきたことに驚き、チセは尻餅をつく。その様子がおかしいのか天使はくすくすと笑いながら話しかける。


「すごいでしょう? 外の世界じゃとてもできないわ」


 チセはその言葉に首を傾ける。


「え、普通にありますけど。いきなり出て驚いただけで……」


「え」


 天使の顔がぽかんと固まる。


 八年前は端末無しで空間上に操作可能なディスプレイを表示することは想定していなかったらしい。 ……どうやらジェネレーションギャップがありそうだ。


「も、もしかして、結構技術進歩してる!?」


 天使が鬼気迫る表情で聞いてくる。チセは思わず後ずさりしながら答えた。


「わ、わかんないけど、多分」


 それを聞いた途端、天使は膝を地につけてズーンと落ち込む。なぜか流れ始めた悲壮な音楽とスポットライトのせいで、劇の一場面の様な状況だ。


「ま、まあ大丈夫ですって、今からでも調べれば追いつけますよ……それよりキャラクリエイトでしょう、キャラクリエイト!」


「そうね……時代遅れの天使がキャラクリ始めますよ」


 今ので一気に年齢がプラス5位された気がするチセだが、流石に言うのはAIとはいえ失礼。黙ってキャラクリエイトを始めることにした。


「アバターの素体はご自分の体でよろしいでしょうか」


 無理して現実と差異があり過ぎる高身長にするとVR酔いしやすいと聞いた。性転換するとホルモンバランスが崩れるとも。別に自分の体から変える理由もないし、いいだろうとチセは判断した。


「はい!」


 ほんのちょっぴり胸は盛ろうと思ったのだが。


「後で微調整は効きますよ?」


「……ッ!」


 考えていることが何故か全て当てられる。チセは恥ずかしくて顔が真っ赤になった。


「では種族をお選びください」


 すると再びディスプレイが表示される。


――――――


 種族選択

▼ヒューマン

 エルフ

 ドワーフ

 リザードマン

 ハーフリング

 ギガント

 機械族

 魔族

 動物系

 ――


――――――


 試しに下の方にディスプレイをスワイプすると、更に大量の種族が出てくる。


(~~~~!? こんなの選べない!)


 悩みに悩んで少し興味がわいた動物系をタップすると。


――――――

▼動物系

 |

  猫族

  犬族

  鼠族

  兎族

  虎族

  狐族

  牛族

  蛸族

  魚人族

  ―― 

―――――― 


(更に一杯あるの!?)


 とてもではないがチセは選ぶことが出来なかった。


「ご自身の体を使うので無難にヒューマンでよいのではないでしょうか……」


「します! そうします!」


 チセは即答した。こうしてチセの種族は案外あっさりと決まった。


「一応ハーフやクウォーターなどの設定もできますけど……」


「普通! 全部普通でいいです!」


 これ以上種類があったら頭が破裂してしまうだろう。チセはノータイムでそう告げた。


「かしこまりました。それではステータスのSPについてお話しますね」


 SPとはHP、MP、攻撃、防御、敏捷、器用、知力のいずれかに降れるポイントの事らしい。なおHP、MPに降る場合は1SP当たり5になるとのこと。


「今割り振る事も出来ますし、おススメの振り方もありますが……どうしますか?」


「今できるという事は、別に後でもできるってことですよね?」


「ええ。そういうことです」


「それなら後回しで」


「かしこまりました。それでは最後に自身の体の最終調整をして下さい」


 そう言って天使が腕を振り払うと、そこには少しデフォルメされたチセ自身の姿があった。どうやらこれを見ながら調整してくれという事なのだろう。


 チセはちょっぴり胸を大きめ、身長高めに変えると満足したようにうんうんと頷く。


「……」


 天使が生暖かい目で見てくるが、チセは気にしない。


「スキャンの感度が悪かったんですよ!」


 チセは元々このくらいの大きさなのだ、多分。


「職業については後に町で職業ギルドに入る事で就くことができます。スキルは色んな事をすれば自然と手に入りますよ!

 では、次に称号を設定します。ステータスオープン! って言ってみてください!」


「『ステータスオープン』!」


 すると、再び目の前にディスプレイが現れた。


――――――


 名前 チセ

 職業 Null

 種族 ヒューマン(女)

 状態 無し


 ステータス

 HP ■■■■■■■■■■

       20/20

 MP 

       0/0

 SP  50

 攻撃 10

 防御 10

 敏捷 10

 器用 10

 知力 10


 スキル

 Null


 称号

 未設定 NEW!


 装備

 Null


 所持金

 100G


 アイテムボックス


 ログアウト


 GMチャット


 フレンド


――――――


「おお~! 変わってる!」


 種族を設定したお陰か、ステータスに変化がみられる。MP以外の能力がバランスよく上昇していた。


「出ましたね! それでは称号を押してください」


 いわれた通りに称号の欄を押す。すると、


――――――

称号一覧

▼ニュービー 登録 説明

 -----

 -----

 -----

 -----

 -----

 -----

 -----

 -----

 -----

 ――

――――――


「なんか、ニュービーってやつが出てきました」


「そう、ではその横の登録ってボタンを押してみてください!」


(登録……っと)


 すると、目の前のウィンドウに《称号【ニュービー】を設定しました》と出て、先程の画面に戻った。


 ほとんど変わり映えのない画面。しかしよく見ると……


「敏捷が上がって、称号にニュービーが付いてる!」


「そう、それこそが称号の力です! 強い称号を付ければそれだけ能力も上昇しますよ! ただしつけなければ効果はないので気を付けてください」


「分かりました!」


「次に装備ですが、ちゃんと装着しないと効果がないので付けてください!

 最後になりますが……困ったことや不具合があればいつでも駆け付けるのでGMチャットにてご連絡くださいね?」


「はい!」


「いい返事です♪ それではHoly Ark`s Onlineの世界をお楽しみください!」


 天使がそう言い切ると、これからの大冒険を予想させるような音楽が盛大に鳴り響き、視界はどんどん変わって……気が付くと、チセは風を感じながら空からふわふわと落ちていった。


 下には噴水、レンガ造りの家、そして市場などで使うような皮の屋根。町の上空に転移したことは想像に難くなかった。


 ぽわんと噴水の横に着地すると、視界には、それはそれは美しい薄赤色のレンガを基調とする街並みがどこまでも広がっていた。

HAO一口メモ

以前はキャラクリエイトにもバグがあったらしい。天使ちゃん達が必死に対応してまともになった。

この後某ネット百科事典とにらめっこする天使の姿があったとかなかったとか。


 名前 チセ

 職業 Null

 種族 ヒューマン(女)

 状態 無し


 ステータス

 HP ■■■■■■■■■■

       20/20

 MP 

       0/0

 SP  50

 攻撃 10

 防御 10

 敏捷 20

 器用 10

 知力 10


 スキル

 Null


 称号

 ニュービー NEW!

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