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第04話 カリスマチャンピオンになろうの回

 ああ、でも今俺のリビドー全開にこの娘を襲ってしまおうものなら、きっと後悔するだろう。

 断言できる。それだけはやってはイケナイと! 魂は叫ぶ、ヤっちまえと!

 でも、俺はできる子だ。いきなり三次元に手を出してお縄を頂戴するわけにはイカンのだ。

 何事にも順序ってものが必要だ。恋のWXY(縦書)とか言うじゃないか。ABCだっけ?

 まずは落ち着こう。深呼吸だ。こんな時ハリウッド映画とかだと確か、歴代大統領の名前を言って冷静になっていたような。


 えーと、アブラハム・リンカーン、ジョージ・アダムス、トマス・ジェファーソン、ジョージ・ハリスン、ポール・マッカ――と、あれ?


 あー、そんなことはどうでもいいんだ。何となくだがどうやら落ち着いた。


 相変わらず目の前のプリセラはベッドの脇に据え付けられた丸椅子にちょこんと座ったままだ。

 このままずっと見ていても飽きないだろうが、きっとプリセラが耐えられまい。

 俺とフェイス・トゥ・フェイスなんて俺はお断りだ。


 「そう言えば、俺ってこの世界に転生したってことになってるよね?

 でも見た感じ生まれたての赤ん坊って気がしないんだけどそれは何故?」


 少し落ち着いた俺は改めて自分の手や身体を見直してみる。

 生前と比べてアレとかコレとかちっちゃくなっちゃった! といった印象はない。

 手の形や体つきが前と違う気もするが、自分の身体をしっかり見た記憶など、銀河系の遥か彼方だ。醜い己とご対面なぞ身の毛がよだつ。

 それでももし、今の俺が転生ではなく異世界転移だとするならば、これはしっかりと区別しなければならない。ここ大事、テストに出ます!


 何故なら、転移だった場合、俺がこの世界でイケメンライフを満喫する可能性が限りなくゼロに近づくから!

 前世がイケメンだったら今頃俺は地球でハーレム築いてるわ。

 くそう、イケメン共は残らず渇いてしまえ。

 そう思うと、心の底から暗黒の炎が吹き出すのを感じる。

 フハハハ、そうだ、俺はやれる男に生まれ変わったのだ。全部焼き尽くしてやるぞ!


 「あの、大丈夫ですか? お加減が宜しくないようでしたらもう少しお休み下さい。

 私はいつでもお傍におりますから」


 「フハハッ!? ゲフンゲフン、ああ、いや、はい。お加減お大丈夫です。

 調子乗りました。すいません」


 つい癖でぺこりと頭を下げてしまう。しかもお傍でお休みなどと言われてしまえばこれ以上妄想が炸裂して歯止めが利きそうにない。新次元の扉を開いてしまいそうだ。自重、自重。


 「その、それでしたら宜しいのですが。それであの、転生の事なんですけど、以前は死産になる胎児の魂と入れ替わる方式を採っていたようなんですが、まだるっこしいからということになって……」


 「まだるっこしいから……?」


 「あの、赤ちゃんが自立するのって早くても10年以上はかかりますよね。

 神様がそんなの待てるか、と。こっちも慈善事業じゃないんでねぇ、と。

 だったら、亡くなった人の中に魂を押し込んじゃえばイイじゃんと……」


 「イイじゃんと……? えーと、死体の再利用? みたいな?」


 「ええ、その、有り体に言えばそうです」


 イイじゃんじゃねーし、よくねーし。そんなリユースされる方にしたら堪らんわ。

 どんなヤバボディ引き当てるかって話ですよ。

 傷痍疾病どんと来いかよ。老若男女ウエルカムかよ。


 「ああ、でも亡くなった際の怪我とか持病とか呪いなんかはリセットされるみたいです。

 あと魂の年齢に近い身体にするとか」


 「あー、そうなんだ。じゃあ一安心できそうな……」


 アレがなかったり、コレがあったりすることは無さそうだ。

 予期せずTS令嬢婚約破棄モノにならなかったことはちょっとだけ残念。


 「あの、でも、ゴーストには気をつけるように、とのことです」


 「ゴ、ゴースト? 囁いちゃうやつ? それとも魂が馴染んでない肉体を狙って悪霊が乗っ取りを企てるとか? 俺の代わりにエロい亡霊がこの体でプリセラに迫るとか!? そ、そんなの許せん。その権利は俺んだ。

 プリセラの幼い身体を蹂躙しようとする、俺の逞しいボディを見ていることしか出来ない俺! ああっ、そんな! 止めて! 私には心に決めた人がっ! そんな寝取られ、神が許さなくても俺が許す――」


 「あのっ! ゴーストは悪霊もそうですけどっ! 身体に残った魂の残滓みたいなものだって聞きました! 身体が勝手に動いたりするかもと……」


 おう、魂の暴走が口からはみ出(じっきょう)したみたいだぜ!

 大声で俺の声を遮ったプリセラが身体を硬くしてちょっと居心地が悪そうだ。失敗、失敗。

 魂の残滓とか、今でさえ二人分の魂が暴走気味なのに、これ以上他人様を受け入れたらどうなってしまうんだ!

 勝手に動くってのはどうせあれだろ。”クソッ、鎮まれ俺の右腕よ!”みたいなやつだろ?

 俺の相棒(ソウルメイト)は『降臨せし魔天』なんだぜ? 

 右手にも魂にも邪気眼パワーが満タンなんだぜ!? 痛々しいな、おい。

 とにかく――、


 「俺自身の性格は今までとそれほど変わらないってことでいいのかな。ちなみに俺ってどんな顔をしてるの? この世界に鏡とかある?」


 「ええ、ありますよ、ちょっと待って下さいね」


 プリセラがベッドサイドチェストの引き出しから手鏡を取り出して渡してくれた。


 「今から探すん……、えっとそこに聖書とか入ったりしてるの?」


 「あの……聖書、ですか?」


 「あ、いや、なんでもない。ありがとう」


 手鏡を受け取り、意を決して覗き込む。果たしてそこには不細工な小太り黒髪青年……ではなく、ホワイトグレイヘアーの凛々しい白人青年が映り込んでいた。

 彫りが深く、顎のしっかりとした造りは西欧というより東欧のそれに近い。

 くすんだ灰色の瞳が眼光鋭く俺を睨み返している。

 『おめえ、誰にガンくれてんだ、こら?』『いやいや、全っ然見てませんよ!?』思わず自分の鏡像に謝ってしまいそうだぜ。


 「思ったよりカッコ良くない? これが俺の異世界(ここ)での姿か」


 「あの、ええ、とてもカッコイイですよ、シオン様。カリスマになるには恰好良くなければいけません」

 

 そうそう、カリスマになるには超絶美形じゃないとね……って? カリスマ? 何が!? 誰が? 俺がっ!!? 俺がッ!!!??


 「……何のこと?」


 「えーと、聞いてませんか? シオン様はこれからこの世界でカリスマになって頂きます。それがこの世界での使命です」


 ……おい、初めて聞いたぞ。そんなこと。

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