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【おまけ : オーマの日常 】

 本編終了まで読んでいただき、ありがとうございました。


 こちら、おまけ1弾です。

「ミリア様、弟君にお会いしたくないですか?」

「会いたいわ!」

「明後日、エキディシオン様にトール国視察の予定(は未定)があるのですが」

「まあっ、そんなこと聞いてないわ! さっそく連れて行ってもらうわ。オーマ、教えてくれてありがとう」

 いえいえ、こちらこそ助かります。

 ミリア様の嬉しそうな後ろ姿を見て、少しだけ「都合のいいことばかり教えてすみません。ですが、視察を行わないと、神々の定例会で指摘されてしまうんです」と、言い訳させてもらう。

 こんな感情、エキディシオン様に仕えてすっかりなくしていましたのに。


 エキディシオン様がある日急に下界に興味を持ち、そして突然女性を連れて戻られ――三日部屋から出てこなかった。

 ある程度は黙認する予定だったが、三日目に女性が人間であると侍女が突き止めて報告してきたから話は別だ。

 人間は必要最低限のことをしないとすぐに弱るし、死ぬ。

 前回わたしが怒ったのは、神々の定例会で酔っぱらって火山に穴を開けた時だ。よその神の領地だったので、本当に首を捧げに行ったのだが、笑って許してくれた。

 エキディシオン様には禁酒を命じた。

 さすがのエキディシオン様も反省してくれたが、今回はもう暴走としか言いようがない!

 疲労困憊のミリア様を侍女総出で救出し、エキディシオン様にしばらく別室を提案したら未練がましく尻尾を絡ませている。


 ――死にますよ、彼女。


 トドメの言葉で泣く泣くエキディシオン様は諦めた。

 

 ミリア様の国には動けない王がいる。

 世が世なら戦王となり、野心に突き進んでいただろうが、生まれた時代が悪かったらしい。

 ミリア様を侮辱し、神をも恐れぬ狂王は自由が効かない体となって、やはり自分を狂ったように愛する女に世話されて生きている。

 いつ傀儡にされてもおかしくない王を表には出さず、先王がすべてに顔を出して公務を終える。公の秘密とされた狂王の国を、異母弟の十の子どもが必死に立て直そうとする。

 彼を支えるのは、ミリア様の実家メーデルトを始め、エキディシオン様がミリア様のお友達と認識した三人の令嬢の家。他にもいるが、主な柱はこの四家だ。


 婚約者を指名替えして宰相家に嫁いだマデリーン嬢。三人の中で一番穏やかで幸せな家庭を築いている。

 ちなみに捨てられた元婚約者は、家からも放り出されて騎士団の下っ端になっている。

 弟の妻にまだ愛を告げているらしく、近々遠方へ左遷予定らしい。


 外相家を掌握したモンティーユ嬢は、まだ婚約中。実家と外相家の伝手を使ってもうしばらく外交を勉強するらしい。

 心を入れ替えた婚約者は、とにかく結婚を焦っているらしく、既成事実を作ろうとしては鉄扇で貼り倒されており、いまだキス止まり。精進するといい。


 婚約者のいなかったアリネイル嬢は、いまだ争奪戦の渦中にある。

 王城に出仕することが三人の中で一番多いからか、婚約者選定のなかに異母弟王子が参戦する意向を示している。

 可能性はないかもしれないが、ミリア様は

「年下王子が求愛!? んっまぁああ、背伸びしちゃってかわいらしいわ。アリネイル様がOKなら、わたくしも祝福するわ!!」

 と、やや興奮気味だった。

 アリネイル嬢には四つ下の妹もいるようで、わたしは異母弟王子にはそちらをオススメしようと思う。アリネイル嬢は年上好きのようですよ、ミリア様。


 パテト国は神の怒りを受けた王がいる。

だが、神の花嫁と、宝を授かられし令嬢達がいる。

 これをどう解釈するべきか、と他の国々はおろか、自国民ですら悩んでいるという。

 とりあえず四家が治める領地への人口移動が相次いだ。とりあえず安全だと思ったのだろう。さすがに異国からの受け入れは黙認できなかったようだが、それでも商人は支店を作り、貴族は頻繁に観光と言う名の視察を欠かさない。

 別にエキディシオン様が肩入れしている節はないが、まあ、ミリア様の里帰りに毎回ついて行くからしかたない。

 だが、いつかその足も遠のくだろう。

 家族や友人が年老いていく中、ミリア様の時間は止まったままだ。もちろん、お子も授かることはない。

 最初ここに連れてこられた時に、お子のことを大変心配していたのできちんと説明はしている。神はその力で分身となる『子』を創る、と。

 ミリア様はなんと感じただろう。

 エキディシオン様の力でミリア様の時は止められている。つまり、エキディシオン様がもし気まぐれを起こせば、彼女は死んでしまう。死はまた別世界の神の管轄だ。

「それでもいいわ。わたくしは自分の意志でここにいるんですもの。愛する人のそばで自分らしく生きていくわ」

 笑顔でそう言ったミリア様。

 我々の持つ忠誠心とは違う何かをお持ちらしい。

 

 今日も広く閑散としたお屋敷の中をミリア様が動き回り、家人が仲睦まじいお二人を目にして目じりを下げて見守る。そんな日が永く続けばいい。

 ふと、ミリア様が向かっていった方向が騒がしくなる。


「エキディシオン様、ご視察は明後日でございますっ!」

「人のふりして下界の宿になど無理でございますっ!」


「……」


 ――暴走を止めに、わたしは今日も走る。




 読んでいただきありがとうございます!!


 おまけ、実はまだあります。

 ランダムに今日更新かけてます。

 

 また夜にでも確認していただくと、おまけが増えているかもしれません。

 リハビリ作品、皆様に読んでいただき、本当にありがとうございました。


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