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戦場の凪

メビリンより転載

 周辺を警戒する班の仲間を尻目に、若い陸軍兵士は石畳の地べたに尻をついた。

 あお向けに体を傾けると、多くのレンガの角を背中に感じた。それはバリケードにする為、路上を封鎖するように積み上げられた瓦礫の山だ。


「一分だけだ」


 上官は身を屈めながら、バリケードの向こうを見つめている。兵士は返事もせず、カーキ色の軍服のポケットを叩いて煙草の紙箱を探し当てた。最後の一本。口からため息が漏れる。それをかじって、ぐったりと瓦礫にもたれる。深緑の軍用ヘルメットがレンガにあたって軽い音を立てた。

 兵士は煙草に火をつけない。彼の目には、重苦しい曇天の空と赤茶色を基本色とした街並みが映った。荒れ果てた店の店頭、砕け散ったガラス、数日前の砲撃で所々捲れあがった石畳。彼がそれらの光景に感傷を覚えたことは確かであるにしろ、残り少ない煙草に対する心配の方が、胸中の多くを占めていたことも確かだった。


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