第九十五の話 親の存在
ふ、二人に似つかわしくないシリアス!
〜クルル視点〜
「はぁ・・・いいお湯だったわぁ・・・。」
「あぁ、ハニー・・・君の湯上り姿はまさに僕の目の前に舞い降りた女神・・・美しい・・・。」
「そういうあなたのその逞しい上半身は、例えどのような攻撃さえも跳ね除けてしまう、まさに鋼鉄の鎧の如し・・・あぁ、眩しい・・・。」
・・・えっと・・・
さっきリュウくんのパパさんとママさんがお風呂から上がってきて、今は二人ともバスタオル一枚だけ。うん、ママさん確かにきれいだよ?お肌なんてピンク色に火照ってて、すっごくきれいだし。パパさんの上半身もほどよく黒く焼けてて、筋肉とか逞しいし。
「あぁ、ダーリン!!!」
「ハニー!!!」
【ガシィ!!】
・・・目の前で抱き合わないで欲しいです。切実に。
『龍閃弾』
【チュドーン!!】
「「ちぇけらーーーー!!!」」
台所から出てきたリュウくんが抱き合った二人を吹き飛ばした・・・だから何その悲鳴?
「教育上に悪い、アルス達がいないとこでやれ。」
「あ、あのリュウジさん。ボクらなら別に何とも思ってないですから・・・。」
「それも一つだが、一番重要なのは何か暑苦しいから。俺が。」
あ、リュウくんがね。
私達はとうの前にお風呂から上がってるから、パジャマ姿。テレビを観賞中♪
えっと内容は・・・犬の飼い主さんが犬に向かってしつけしてるシーン。
『HEYジョン!ハウス!ハウス!』
『断る。』
『!?Oh、NOOOOOOOOOOOOO!!!??』
・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・。」
「・・・。」
『・・・。』
【プツン】
アルス、フィフィ、エルに目配せしてから無言でテレビを消した。
「もう、龍ちゃん相変わらずひどいぞ☆」
「もう少し加減しなさい☆」
「よし、とりあえず頭から出た血ぃ拭け。」
「「は〜い♪」」
・・・リュウくん、よく冷静でいられるな〜・・・。
「気にしてたら負けだぞクルル。」
「あ、はーい。」
・・・あれ?さっき私口で言ってた?思っただけじゃなかったっけ?
・・・
ま、いいや♪
「じゃ俺風呂入ってくるな。」
「あ、はーい。」
リュウくんはさっきから洗い物してたから、お風呂は一番最後。
「さぁハニー!今宵は頑張るぞ!」
「ふふふ、そうね!夜中のファイティングバトルと行きましょうか!」
「「?」」
夜中の?
「!?ちょ、まさか二人とも・・・。」
「フィフィ?」
「ふふふ、そのまさかよ。」
「ははは、そのまさかさ。」
???
「ち、ちょっと待って!アルスとクルルがいるのにそんな・・・!」
「ねぇフィフィ?何の話?」
「よくわからないんですけど。」
「あ、アンタ達にはまだ早いわよ!」
???
「ははは、大丈夫さ!出来るだけ静かにやるからさ♪」
「うふふ、そうね、近所迷惑にもなるしね♪」
「そういう問題じゃないわよ!」
むぅ・・・わかんない・・・。
「・・・えっと、いきなりですけどすいません。」
「?何だいアルスちゃん?」
「あの、その・・・。」
?・・・・・・・・・あ、なるほど。
「・・・せめてパンツは履いてください。」
「ん?おぉ、ごめんごめん♪」
危うく見えるとこだった・・・/////////
「もぉ、あなたったらうっかり屋さんね☆」
「あの、あなたも着た方が・・・。」
「あら、そう?」
はい。
〜数分後〜
「いやいやまさかギリギリだったとは♪」
「うっかりかり♪」
「うっかりじゃないわよ・・・。」
それぞれ青とピンクのパジャマに着替えた二人。柄はハートだった。
「さて、と。」
突然、二人がコタツの前っていうか私達の前に座り込んだ。
「・・・ところで、君達。」
「?はい?」
「なぁに?」
「君達は、ここに来てどれくらい経つ?」
?
「えっと・・・数えてないですね・・・でも結構長いですよ?」
「うん。」
「何か慣れちゃったわね。最初は戸惑ってたけど。」
『私はついこの間来たばかりだがな。』
あ、エルはそうだっけ。
「でもどうしてそんなこと・・・?」
「はは、いや何。聞きたかっただけさ。」
「ふふ。」
???
「・・・しかしまぁ、あの子は全く変わらないな。」
「え、リュウジさんのことですか?」
「あぁ。あの子は昔っからお人好しでね。」
「ふふ、知らない人でさえも躊躇うことなく助けるのよ。」
「時々、余計なお節介とも捉えられることもするしね。」
へぇ・・・。
「素性の知らない君達をここに居させたのも、あの子の優しさだと思うよ?」
「一時はケガした子犬を家に連れて帰ってきて必死に治療してあげてたわ。」
・・・。
「・・・まぁ、あの子がここにいたら知った口で言うなって罵倒されるんだろうけどね。」
へ?
「・・・それ、どういう意味なんですか?」
「あ、あぁ・・・それは・・・。」
急に深刻な顔になったパパさんママさん。
「・・・さ、この話は終わろうか?」
「そうね♪」
えぇ!?
「聞きたいのに〜!」
「ははは、世の中には話せないこともあるのさ♪」
「そうよ、クルルちゃん♪」
む〜!
「ほらほら、後で龍ちゃんの子供の頃の写真見せてあげるから♪」
「やったぁ♪」
「物で釣られるなクルル!」
だって見たいもん♪
「ふぁ・・・何だか眠くなってきましたぁ・・・。」
「んみゅ・・・そういや私も〜。」
今何時かなぁ?・・・あぁ、十二時近いなぁ。寝ないと。
「うふふ、それじゃ僕らは・・・。」
「ダーリン、もう私我慢できそうにないわ・・・。」
?何が?
「!!!???ちょ、アンタ達ここで!?」
「よし、やろうかハニー!」
「やりましょうダーリン!」
へ?へ?へ?
「ちょっとストップーーーーー!!!」
「いっくぞーハニー!必殺!愛の右フック!」
「甘いわダーリン!愛の外受け!」
【バシィ!!】
・・・え?
「え?」
「え?」
『え?』
「んむぅ!ならばこの腕から繰り出されるスウィートメモリーラリアットを受けてみよ!」
【バキィ!】
「ぐは!やるわねダーリン!ならば私のセクシービーム真空飛び膝蹴りを受けてみなさい!」
【バゴォン!】
「おう!?見事だハニー!お返しにラブラブエルボーを食らえ!」
【ズドン!】
「はぐ!それじゃあこっちはラブリーサマーソルトキックよ!」
【バシュウ!】
「ぬごぉ!!ふふふ、さすがハニー!相変わらずそのキレイな足で繰り出される足技は見惚れるよ!」
「うふふ、ダーリンこそ鋭いパンチが私を興奮させるわ〜♪」
「よぉし!今日は夜通しファイティングバトルだあああああ!!!」
「望むところよダーリーーーーーーーーーーン!!!」
え、えええええええええ!!!???
『龍閃転牙』
【チュドオオオオオオオン!!!】
「「ヒュドラアアアアアアアアア!!!」」
あ、リュウくんお風呂から上がったんだ。
「外でやれバカども。」
・・・二人ともベランダまで吹っ飛んじゃったけど・・・いいのかなぁ?
「さ、寝るぞお前ら。歯磨きしてこい。」
「あ、は〜い♪」
「えっと・・・はい。」
「はいは〜い。」
『口がないから無理だ。』
エルには言ってないよ?
〜深夜〜
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・みゅ。」
ん〜・・・トイレ行きたい・・・。
「んしょ・・・。」
【ゴソ】
「スー・・・スー・・・。」
「むにゃ・・・。」
アルスとフィフィを起こさないように、ゆっくりと起き上がる・・・。
「トイレ〜トイレ〜・・・。」
眠い〜・・・。
「・・・・・・・・・・?」
ありぇ?何だろ。リビングから光が漏れてるような・・・。
誰か起きてるのかな?
「・・・。」
・・・うぅ、何だか恐いなぁ・・・。
でもトイレ行きたいし・・・どうしよ・・・。
「・・・。」
・・・誰がいるのか確認してからトイレ行こうっと。
【スッ】
襖をちょこっと開けて、リビングを覗きこんだ。
「ねぇあなた、ホントにいいのかしら?」
「・・・仕方ないさ、こうするしか。」
あれぇ?パパさんとママさんだ。こんな時間に何してるんだろ?
「あの子のことだ。このことを話したら自分も付いていくと言って聞かないだろう。」
「でも・・・息子に隠し事は・・・。」
「・・・確かに僕だってきついさ。確かにあの子は尋常じゃないほど強い。それでも、子供を危険な目には合わす親なんていないよ。」
「・・・。」
?何のことなんだろ・・・。
「だから、黙っていよう。
僕らは旅行じゃなくて、国際ボランティアチームの一員として海外で働いているということは。」
・・・?ぼらんてぃあ?チーム?
「・・・でも、まさかこんなことになるなんてね。」
「ああ・・・最初は小さな紛争だったのに・・・すぐ帰れると思ったのに・・・。」
「・・・爆破テロのせいで・・・ね。」
?爆破てろ?
「・・・今思い出すだけでも腸が煮え繰りかえるよ・・・でも、目の前で苦しんでる人達がいるのに、僕らだけがおめおめと帰れるわけがないしな。」
「でも、そのおかげで龍ちゃんは今までずっと・・・。」
「いや、一人じゃないさ。」
「?」
「あの子には、学校に友達が大勢いる。それに、今家にはあの子だけじゃなくて、アルスちゃん達もいる。素性はよくわからないけど、いい子達だからその点は心配いらないよ。」
「・・・そうね。」
「・・・でも、僕らは親としては失格だな。子供の成長を見守るはずの親が、子供をほっぽり出して・・・。」
「あなた・・・。」
「あの子は・・・僕らを怨んでいるのかもな・・・。」
・・・・・・・・・・・・・。
「・・・それはわからない。けど、思い悩み過ぎたら体に毒よ?」
「でも・・・。」
「・・・だから、今は頑張りましょう。あっちの仕事が片付いたら、すぐにここに帰ってこれるように。元の生活に戻れるように。」
「真帆・・・。」
「・・・でも、笑っちゃうわね。世界一周旅行と見せかけて、ホントは世界各地の支部での用事のために世界回ってるんだから。」
「ははは、ある意味世界一周だけどね・・・旅行ではないな。」
「・・・まぁ、ハワイ旅行の帰りみたいに見えたかしらね?」
「あのアロハシャツは完璧だろう。」
「そうかしら?」
「む、どういう意味だいそれ?」
「気ニシナーイよ、あ・な・た♪」
「・・・ははは♪・・・それじゃ、そろそろ寝ようか。明日のフライトは早いぞ。」
「そうね。」
・・・・・・・・・・。
【パタン】
「・・・パパさん・・・ママさん・・・。」
二人が立ち上がったと同時に、襖を閉めた。
“ぼらんてぃあ”とか、“てろ”とかよくわかんない・・・でも・・・。
「やっぱりホントは、一緒に暮らしたいんだ・・・。」
・・・
“親として失格”・・・
「・・・リュウくん・・・。」
リュウくんは・・・ホントに寂しくないの?パパさんとママさんと一緒に暮らしたくないの?二人のこと、怨んでるの?
どうなの?・・・リュウくん。
〜翌朝〜
【チュンチュン・・・チチチチ】
「・・・ん〜・・・。」
・・・あ、朝だぁ・・・。
【ゴソ】
「ん・・・くぁ〜・・・。」
布団から上半身を起こして伸び〜・・・っと。
「・・・。」
・・・そういえば、あれからそんな寝てない気がするなぁ・・・
「・・・パパさんとママさん、どうしたんだろ?」
・・・ちょっと気になってきちゃった。
【スッ】
「お?起きたかクルル。」
「あ・・・リュウくん。」
襖を開けてまず目に入ってきたのは、ヒヨコのマークが付いたエプロンを着たリュウくんが台所で朝食の準備をしていた。
「珍しいな、オメェが一番たぁ。」
「・・・パパさんとママさんは?」
「あぁ、もう出てったぞ。」
え?
「ほら。」
【ピラ】
?メモ?
『龍ちゃんとアルスちゃんとクルルちゃんとフィフィちゃんとエルちゃんへ。
私達は、朝一のフライトに乗らないといけないからもう出ます。いつ帰ってこれるかわからないけど、それまで元気にしててっちょ☆それじゃグッバイサヨナラまた会う日まで〜♪
by 父さんと母さん』
・・・・・・・・・・行っちゃったんだ・・・。
「まったく、挨拶もなしかって話だ。」
・・・。
「・・・ねぇ、リュウくん?」
「んあ?」
・・・多分、余計なお世話かもしれないけど・・・聞いておきたいな。
「リュウくん、パパさんとママさんと一緒に・・・住みたい?」
「・・・。」
あぅ・・・怒らせちゃったかなぁ・・・?
「・・・知りたいか?」
「・・・う、うん・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
【クシャ】
「?」
「そりゃ聞くだけ野暮ってもんだ。」
頭を撫でられて誤魔化された。
「・・・まぁ、しょうがねぇさ。」
「ふぇ?」
「あの二人も、なんだかんだで傷ついた人間放っておける性格じゃないしな。」
・・・・・・・え・・・・・・・。
「リュウくん・・・もしかして知って・・・」
「んあ?」
「・・・ううん、何でもない。」
「そうか。よし、そんじゃそろそろ連中起こすか。」
・・・・・・・・・。
「あ、そうそうクルル。」
「え?」
「ひと〜つ言わせてもらうけどな。
親父もお袋もお前らもひっくるめて、家族を怨んだことはないぞ?」
!!!
「さ、起こすぞ。」
「ね、ねぇリュウくん!今のもっかい!もっかい言って」
「は?」
「ねぇねぇ言って言って〜!」
「お〜いお前ら起きろ〜。」
「無視ぃ!?」
シリアスです。あの二人がシリアスだと思うと何だかおかしいと思った方、いるかも・・・?