第八十七の話 寝れんからって夢の中に出てくるな
今日はあいつの意外な姿の話。
〜エル視点〜
・・・む、私視点か・・・初めてだな。
「・・・スピー・・・ムニャ。」
・・・今は深夜一時、すでに家の人間は全員眠っている時間・・・現にリュウジは私の目の前でベッドに潜り込んで静かな寝息をたてている。
そういえばガッコウで聞いたが、リュウジの寝顔は名物となっているというらしい・・・見てみたいが、生憎当の本人は壁の方を向いて眠っているからまったく顔が見えない。
・・・しかし、眠れん・・・基本私は、暗い部屋だとすぐに眠れる体質(?)なのだが・・・っておい、何だ(?)←これは。私は元は人間だ。剣が体質と言って何が悪い。
・・・しかし・・・まぁ、眠れん。目が冴えてしまっている。いや、目なんて今は無いが・・・。
「・・・くゅ〜・・・。」
・・・・・・・・・・・・。
「・・・きゅ〜・・・。」
・・・・・・・・・・・・。
「・・・みゅ〜・・・。」
・・・・・・・・・・・・
暇だ、暇すぎる。
・・・
あ、そうだ。
「・・・ぴー・・・。」
・・・こうなったら私の特殊能力を使って少し暇を潰すか。
〜龍二視点〜
・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・むにゃ?」
・・・何だここ?・・・えらい真っ暗なとこだなおい。
つーか今の状態何さ。俺逆さま向いてね?上下逆。でも不思議と不快感が無い。まぁ浮遊感はあるけど。
・・・まぁ、とにかく俺以外誰もいないし、な〜んにもない。
あ、これ夢か。なるほど。じゃなかったら責任者呼び出して嬲り殺しにしてやる。
「・・・何かなぁ・・・。」
でもまぁ・・・なんちゅーつまんねぇ夢だ。せめてラーメン食べ歩きの夢とかにして欲しかった。
「・・・リュウジ。」
?
「んにゃ?」
体を巧みに動かして方向転換。うん、何か慣れたぞこの浮遊感。
で、振り返ってみれば・・・まぁえらい変わった服装した姉ちゃんが立っていた。
真っ白くて裾が黒いギザギザ模様が縫いつけられてるコート羽織って、その下にまた真っ白なワンピースを着ているという、シンプル?な出立ち。顔はまぁ何つーか端整な顔立ちっちゅうんかな?キレイって言った方がいいな。うん。
で、コバルトブルーのロン毛に銀色のヘアピンが付いてる。それくらいしか飾り気ねぇな。
・・・まぁ、服装と髪と同色の鋭い瞳だけでも十分目立つがな。あ、因みにそれに対して俺パジャマね。青パジャマ。
「・・・やけに落ち着いているな。」
「ん。まぁな。慣れた。」
「早っ。」
つーかこんなことぐらいで慌てる奴じゃねぇし俺。
「・・・で?何の用だ?」
「・・・貴様、私が誰か聞かないのか?」
・・・・・はぁ?
「お前バカか。最初に声聞いただけでもう分かったわい。
で?何の用だ“エル”」
もうね、声に聞き覚えありすぎてねぇ。最初に名前呼ばれた瞬間分かったね。うん。
でも女だったとはちょっと意外・・・喋り方からして男かなぁとは思ってたし。声高かったけど。
「・・・なるほど、貴様の耳は飾りじゃない、というわけだな。」
「それ侮辱してる?」
「ふ、私が何を言おうと貴様はどうすることもできんだろう。この空間は私が作りだしたのだからな。」
?
「じゃこれ夢じゃないってことか?」
「いや、お前の夢の中で空間を作りだしたのだ。だから正式にはお前の夢の中だ。」
?????
「難しい話はようわからん。」
「まぁ、そのようなちゃちい脳みそではな。」
む、失礼な。
「だから怒ったところで無駄だと言った。この空間は私が管理しているから貴様は動けな【バキィ!】あべし!?」
龍閃だーん♪
「・・・な、なぜ・・・。」
鼻を抑えながら起き上がる人型エル。さっきいい感じに吹っ飛んだからなぁ。
あ、体動くわ。よっしゃよっしゃ。
「あのなぁ、俺にそんな常識通用しねぇっつの。」
哲学嫌いなんだよ俺。
「ま、常識求めたお前の負け。」
「くっ・・・やはり貴様は化け物か・・・。」
失礼なパート2。
「・・・で?何で俺の夢の中に出てきたんだ?」
「・・・・・・。」
あ?何か黙り込んだぞおい。
「・・・じ、実はな・・・。」
「おう。」
「眠れんのだ。」
「死ね。」
「がふ!?」
この愚かもんが。俺の至福の時間の邪魔をしやがって。
「け、蹴ることないではないか!」
「気ニシナーイ。」
「・・・じゃせめて顔面は勘弁してくれないか。」
「俺の夢の中干渉してきた理由は?」
「眠れんから暇潰しに」
「ジャッジメント!」
「ぐふ!!」
もっかい顔面キック。あ?女の顔蹴るな?HAHAHA、そんな事俺には関係ナーイ気ニシナーイ♪
ムカつく奴は男でも女でも全員蹴る。これ俺の常識。
「いつつ・・・よ、容赦ないな貴様は・・・。」
「今に始まったことじゃねえだろ?」
「まぁそうだが・・・女性をいたわるという事を知らんのか貴様は。」
「はっ。」
「鼻で笑うかそこ!?」
俺がいたわるのは選ばれた人間だけだ。こう言ったらかっちょいいが、ようは何でそんなことせにゃならんのだというわけで。
「どーでもいいけどさぁ、俺の安眠邪魔すんなよな。さっさと寝かせろ。」
「・・・わかった。そろそろ私も寝たくなってきたからな。」
「今さらか。散々ひっかき回しておいて今さらか。」
「いや、私の方がひっかき回されたような気が」
「ジャッジメント!」
「ぐほ!!」
顔面キックパート3。
「ぐふ・・・痛い・・・。」
「痛くした。さ、とにかくさっさと戻せ。」
「わ、わかった。」
エルが右手を上げると、俺の体が上昇していった。
「・・・で?エル。お前ホントにただ単に暇つぶしだけで俺の頭ん中に侵入してきたのか?」
何故にあえて人型になって俺の頭の中に入ってきたか、さっぱりだ。それなりの理由ってのがあるんじゃねえかね?
「・・・・・・・。」
?何だ?黙りこくりやがって。
「・・・それは・・・。」
「おう。」
・・・。
「では、おやすみ。」
「おいコラ待てや。」
そして俺の意識は途絶えた。
〜朝〜
【チュン、チュン、チチチチチ・・・】
「・・・む?」
ああ、朝か・・・ふぁ〜あ・・・。
『おぉ、起きたかリュウジ。』
「・・・。」
ふと振り向くとそこにはクローゼットに立てかけられている鞘に入ったエルが。
「・・・。」
特に何も考えず、寝ぼけ眼のまま手近にあった目覚まし時計を思いっくそバカ剣に投げつけてやった。
実はエルは女だった!!
・・・って、名前ですでに分かってたって人いるかも・・・。
今日はただ単にエルの前の姿を書きたかったんで。それだけ。