第七の話 香苗の家にて
は〜い、もう説明いらねぇと思いますけど、香苗の家の前で〜す。サブタイトル通りです。
・・・正直もうめんどくなってきた・・・。
「帰りてぇ・・・。」
とは言うものの、もう既に本人の家の前に来てるしなぁ・・・こいつん家はまぁ、どっちかってーと普通だ。俺の家と同じくらいの大きさで、木造住宅。まぁ一般的な家だな。普通普通。シンプル・イズ・ベスト。
「ま、約束しちまったしなぁ。」
約束破るのは後ろめたいしな。とは思いつつもめんどくさいオーラ全開な俺はインターホンを押す。
【ピンポーン♪】
『はーい。』
「よ、香苗。」
『あ、リュウちゃん!ちょっと待ってね。』
そう言うやいなやガチャリと受話器を置く音が聞こえた。
「ふ〜・・・。」
とりあえず待つことにする。
「あ、リュウお兄ちゃんだあ!」
「ん?」
背後から聞こえる声を聞いて振り返ってみると、駆け寄ってくる小さい女の子二人が見えた。香苗の双子の妹の美紀と美香だ。八歳だから、小学校三年生。二人揃ってそっくりそのまんま。まさに双子。違いがわかるところといやぁ、美紀がツインテールで、美香が三つ編み。そして美紀が活発で明るい性格に対し、美香が物静かで大人しい性格。香苗とこの子らの似てる部分は、やっぱ顔だな。香苗を幼くした感じ。んでもって小動物みたいにひっつくところは双子ともども同じだ。うん、可愛い。
「えい!」
「・・・。」
とまぁ可愛らしい声(美紀の声)で俺の腕にそれぞれしがみつく二人。
「よぉ、元気してたか二人とも?」
「うん!」
「・・・(コクリ)。」
「そうかそうか。まぁお前らに元気が無いっていうのはありえない話だろうがな。」
言うと、照れくさそうに「えへへ〜。」と笑う美紀と、相変わらず黙りながらもはにかむ美香。美香の性格・・・何か久美ん所のリリアンに似てらぁ・・・ま、いいべ。にしても、こいつらはなかなかおもしろい。この家にお邪魔すると決まって俺に引っ付いてきては遊びをせがむが、こいつらは軽いから多少振り回しても支障はないし、何より俺も楽しませてもらってっからここでの楽しみの一つとなっている。一時香苗が参加するーとか言って俺の腕にしがみついた時はブンブン振り回したけどな。マッハで。
【ガチャ】
「やっほーリュウちゃーん♪」
「おっと。」
いきなり扉が開くと同時に、俺に抱きつく香苗。両腕が塞がってなかったら巴投げかましてたんだがなぁ。
「あ〜!お姉ちゃん正面から抱きつくなんてずるい〜!」
「姉さん・・・ずるい。」
あ、美香喋った。
「あらら、二人とも帰ってたの?でもこの抱擁はお二人さんにはまだ早いから別に何言ってもいいよ〜だ♪」
「むゃ〜!ずるいずるい〜!」
「ずるい・・・。」
「・・・。」
えっとさぁ・・・この状況どう説明しようか?
まずさぁ、小さいのが二人俺の両腕塞いでるし〜・・・そんでもって真正面から香苗の奴が抱きついてるし〜・・・当の本人達が何か口喧嘩してるし〜・・・。
ハッキリ言おうか?
動けない上に暑苦しい・・・特に正面。
「よしわかった。とりあえずお前らどけ。」
「え〜もうちょっとだけいいでしょ〜?」
香苗が何か甘えた声で言う。
「・・・。」
『どけ。』
「「「は、はいぃっ!!」」」
ちょっと怒気を滲ませた声で言うと慌てて離れる三人。
「やれやれ・・・で?例の双子っつーのは?」
「うん、二人なら居間にいるよ。」
「あぁそうか。じゃお邪魔するぞ。」
そう言って家ん中に入る。つーか双子かぁ・・・アリスの仲間じゃないとしたら、こっちの側の奴か、あるいはクルルの・・・でも本人からそんな話聞いてねぇしな?
「あ、用事済んだらすぐ帰るからな。」
「「「え〜?」」」
三人揃って綺麗に口揃えての不満。さすが姉妹。
「何だ?」
「もうちょっといてもいいんじゃないの〜?」
「またこないだの続きやろうと思ったのに〜。」
「・・・帰るのダメ。」
美紀の言うこないだの続きっつーのはゲームのことだ。46戦23勝23敗で引き分け状態。うん、やりすぎた。
「まぁ今夕方だから。また今度遊びにきてやるよ。」
俺このセリフ何回言った?あ、三回か。約束多いな。
「ホント!?」
「絶対だよ!?」
「・・・。」
「はいはい。」
香苗には顔を近づけられ、美紀には至近距離から見上げられ、美香には俺の服の裾をぎゅっと掴んで見上げられ・・・どーゆー状況だこりゃ?
「どーでもいいが、居間に通せ。」
「あ、ごめん。」
言い忘れてたが、いまだに玄関でこんなやり取りしてました。さっさと中にいれろっつーの。
「とりあえず二人とも上に上がっといてくれる?」
「え〜!」
「・・・む。」
香苗が美紀と美香に上に上がるよう促すと明らかに不満の声が。
「・・・行きなさい。」
ちょっと声を低くして言う香苗。
「・・・は〜い。」
「・・・。」
ビビったのか、渋々二階へと階段を上がっていく二人。まぁ二人にはちとわからん話かもしれんしな。
「そんで?どーゆー状況?」
「うん、居間で大人しくしてるよ。」
「ほう、別に警戒してる訳じゃないのか。」
「そーともいえないんだよねぇ。」
?
「実はね・・・起きてから一言も喋ってないの。」
「・・・じゃやっぱ警戒中か。」
「そみたいね。」
にしてもまぁ、随分警戒心が強い奴らだな。向こうの世界はどんなんだ?やっぱ物騒なのか?そうなんだな?まぁ知らんがな。
「ま、とりあえず適当に話すっべ。」
俺は居間の扉を開けた。
【ビュン】
「!!」
「・・・。」
いきなり包丁が飛んできた。
指二本で挟んで受け止めたけどね♪
「で?何のまねだ。」
目の前にいる少年に向けて穏やかに話かける。
「・・・。」
無言・・・よく見てみると・・・あぁ、こりゃ香苗が言うのも無理ねぇわ。かっこいいというより可愛い。小動物みたいな子顔(小動物大好き♪)。んで短い銀髪。そして真っ黒な革製・・・レザージャケットっていうのか?みたいな服着て・・・きめてるみたいだけど、うん、かっこいいより可愛いの方に入るな。女装させりゃ美紀と美香と並ぶんじゃねぇの?
・・・ん?
「おい、香苗。確かこいつら双子・・・。」
「り、リュウちゃん・・・。」
あ・・・。
「見事に人質・・・だなぁ。」
うん、いきなりだね君達。え〜、只今、双子の片割れ・・・あ、そっくりよ、銀髪で黒い服着ててさ・・・で、その片割れどこ行ったんかなぁ、て思うてたら何や知らんが香苗の首に包丁当ててはったんやなこれが。いやぁ一本取られましたわ。失敗失敗♪
「り、リュウちゃん・・・恥ずかしそうに頭かいてないで助けて・・・。」
おっと、関西弁が頭の中で響いちまった。とりあえず状況打破だ。
「あ〜・・・大人しく武器を捨てて投降しなさい。」
警察官が立て篭りの犯人に告げるような感じで言ってみた。
「断る。」
さいでっか。
「いやさ、何でこんなことしてんのか気になるとこなんだが。つーか今お前が包丁突きつけてる奴ってお前らの恩人っしょ?いいんかそんなことして?」
あ、言い忘れてたが、俺の背後でナイフ突きつけてるのんもいるぞ。顔に似合わず凶暴だなこやつら。
「・・・目的は?」
「・・・は?」
「僕らを助けた目的は何だ。」
いきなり何言い出すん?
「も、目的って、倒れてたから助けなきゃって・・・。」
「嘘を言うな。」
香苗の言うこと即否定かよ。
「だ、だって・・・。」
「まぁまぁ香苗。それ以上言ったってダメだって。」
ヒラヒラと手を振る俺。
「・・・お前、何故そこまで落ち着いている?今の状況がわかってるのか?」
ちょっと顔色を変えた俺の背後の坊主。
「いや、まぁここは慌てた方が負けってことで。」
「「・・・。」」
無言ですか。そうですか。
「さて、人質ごっこも飽きたところで・・・。」
「人質ごっこ!?」
香苗のツッコミはスルー。
それでは・・・。
「武力行使、スタート♪」
【バビュン!】
素早く香苗に近づき、突きつけられていた包丁を叩き落し、相手が動揺する前にそのほっそい腕を引っつかみ、ブンと背後に投げつける。
【ゴン】
見事に頭と頭がごっつんこ。二人仲良く気絶した。因みに俺が動き出して三秒も経っておりませんハイ。
「はい終わり。」
「・・・。」
香苗が一瞬何が起きたかわからないかのような顔している。
「さて、お茶もらおうかな。」
「は、はい!」
香苗、何故にそんな慌てる?あ、考えてみりゃこいつら寝ちまってる(気絶の間違い)から話できんな・・・待つか。
熱いお茶を啜りながら待つこと十分・・・。
「うぅ・・・。」
「いたた・・・。」
俺と香苗が『叩いて被ってジャンケンポン』してたら呻き声が聞こえてきて双子が起き上がった。因みに香苗は俺に47回殴られて頭フラフラ状態になっている。
「!お、お前・・・!」
「はいはい、いいからさっさと座れ。」
とりあえずテーブルの反対側に座らせるよう促す。
「な、何を・・・。」
「まぁ座れって。何もせんから。」
「信じられるか!」
「座れって。」
「断る!」
「座れ・・・。」
「いやだ!」
「すわ・・・。」
「「しつこいぞ!!」」
・・・。
カッチーン。
【ドン!!!】
「「「!!??」」」
怒ったからテーブルの上に包丁を突きたてた(中ほどまで刺さった)。
「「「・・・。」」」
冷や汗を流す双子と香苗。あ、復活したのか香苗。
『座れや。』
「「・・・はい・・・。」」
脅し口調で言うと大人しく座った双子くん達。とりあえず気分を落ち着けるためにお茶をズズっと啜る。うむ、やはりほうじ茶はうめぇな。
「さて・・・今回俺がこの家に来た理由はだな。」
「「・・・。」」
「あ、言っとくがな。」
「「(ビクリ)」」
「途中から口挟むなよ。早く帰りたいんだからな俺は。疲れた。」
マジで。
「「・・・はい。」」
うむ、いい子じゃ(誰だお前は。by作者)。
「で、話ってのは・・・お前ら魔王知ってる?」
「「!」」
お、手応えアリ。
「魔王って小っこい女の子だな?」
「「!!」」
また手応えアリ。
「名前はクルルだな?」
「「!!!」」
またまたアリ。
「あいつ実はバカ?」
「「・・・。」」
手応え・・・。
「「はい。」」
あった。
「あ、やっぱバカかあいつは。」
「ええっと・・・言いにくいんですがそうなんです。」
「魔王としての素質は十分なんですがね・・・。」
「で?どこがどうバカなんだ?」
「計算ができないんです。」
「それと方向音痴。」
「なるほど。そういやこないだ、家に来るのに鎧取ればしんどい思いせんでも済んだのに、家に着いてから鎧取って『やっぱ鎧は嫌い』とか言ってたな(第三の話参照)。」
「ああ、いっつも一人でいる時は下着で過ごして・・・あ。」
「「「・・・。」」」
双子の片割れ、思わず失言・・・。
「え、いやあの・・・。」
「「サイテー。」」
香苗ともう片方が同時に言う。
「そんなの覗いて何の得がある。」
「ツッコむべき所はそこではないでしょう。」
香苗に言われた。
「とゆーより、何故おま・・・あなたが魔王様を知ってるんですか!?」
あ、言うの忘れてた。
「家で保護してるから。」
あっさり言う俺。
「ほ、保護って・・・人間であるおま・・・あなたが?」
「そ。」
「え、リュウちゃんとこもそうなの?」
「そ。」
「そ。の一言で済まそうとしないでよ。」
うっせーもう何かめんどいんだよほっとけ。
あぁ、にしてもクルルの奴、自分にも仲間がいたなら言えってんだよ全く。
「さて、クルルの事は伝えたし俺はもう行くぞ。」
立ち上がる俺。
「え、もう行くの?」
「ああ、また今度な。」
あ・・・。
「聞くの忘れてた。お前ら名前は?」
めんどくさいの方が優先させられてたから名前聞くの忘れてた。
「あ、はい!カルマ・ロウです。」
「僕がケルマ・ロウ。」
やっぱ見た目も似てたら名前も似てるな。
「あ、それと・・・。」
「「?」」
「香苗に謝っとけよ。」
「へ?」
突然名前出してびっくりしたのか、素っ頓狂な声を上げる香苗。
「助けてもらったってのに、包丁投げつけた上に包丁突きつけたんだからな。警戒してたとはいえ、恩を仇で返したことに変わりねぇ。謝んのが道理だろが。」
「「・・・。」」
「じゃ、後は任したぞ香苗。」
「あ、うん・・・帰りは気をつけてね。」
何に気をつけろってんだ?まぁ口に出して言うことでもないだろうから適当に手ぇ振って香苗の家を出た。
「やれやれ、日が沈みかけてんな。」
遠いお空で日が消えかけ、周りは今は薄暗い。随分遅くまでかかっちまった。
「さて、帰ってあいつらに報告せにゃあな。」
腹もすかしてるだろうし。
龍 更新遅かったな。
作 まぁ受験シーズンだからな。更新は気分転換っつーことで。
龍 さいで。
作 おうよ。