第七十三の話 買い物付き合い?
〜龍二視点〜
「【ペロペロペロ】・・・んま。」
ども〜龍二ですっと。只今例の棒付きキャンディー舐めながら公園をのんべんだらりと昼飯後の散歩中。あ、因みにイチゴ味。
こう、のんべんだらり〜っと散歩するのも久しいような気がする・・・たまらん。
空の雲はゆったり流れてるし、
日光も強すぎず柔らかい光を放ってるし、
鳥も楽しそうに飛んでるし、
・・・・・・・・・・・・・・。
「これは何か起きるな。」
大体コメディーってのはジャンルにほのぼのが加わっていたとしてもこんな『一日のんびり散歩しましたチャンチャン♪』な感じで話が終わるはずがない。絶対何かしょーもないことが起きるはずだ。
「あ、リュウちゃーん!」
「・・・。」
ほれ見ろ。
「ジャーンプ!!」
「ん。」
【ズゴン!】
「はぶっ!」
何か背後から飛び掛ってきたバ香苗を後ろ回し蹴りで撃退。キリモミ回転しながら地面に激突した。サーカス団行け。
「んむぅ〜、相変わらずリュウちゃん素直じゃないな〜。」
ムクリと起き上がった香苗の顔はちょっと泥で汚れていた。顔洗えバカ。
「んしょっと。」
立ち上がってパンパンと体の汚れを払って顔をタオルで拭き取っていく香苗。でそれをとりあえず鼻ほじりながら待ってる俺。
「やっほーリュウちゃん!」
「おっす香苗。じゃ。」
回れ右して歩きだす。
「・・・ってちょっとちょっと!?私出てきて蹴り飛ばされただけじゃない!」
「なんなら星になるか?」
「もっと嫌です!」
わがままな奴だ。
「でぇ?何か用?」
「あぁ、うん・・・・・・・ちょっと待って。」
「?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よし!」
周囲見回して何がしたいんだこいつ?
「ねぇリュウちゃん。ちょっと付き合って欲しいんだけど・・・。」
「?何に?」
「お買い物。」
「一人で行けばいいじゃん。」
「ちょっとだけ。リュウちゃんに聞きたいこととかあるし。」
聞きたいこと?
「ね?いいでしょ?」
「・・・ふむ。」
聞きたいこと、ねぇ・・・。
「・・・今すぐ聞くことじゃないのか?」
「うん、ちょっと買い物に関しての相談。」
な〜る・・・まぁ散歩なら晴れの日ならいつでもできるし、別に忙しくもねぇからな。
「・・・しゃーねぇか。」
「やったぁ!じゃ行こう!今すぐ行こう!」
「はいはい。」
ぐいぐいと俺の腕を引っ張っていく香苗。
・・・
あ、これ何か自分の力で歩かなくていいから楽だな♪
〜デパート内〜
ところ変わって近場のデパート。こないだ花鈴と一緒に来たとこ・・・正式にはアルス達“も”だけど。
まぁ休日だけに人が多いな。子連れとか。
「リュウちゃん、ちょっと来てー。」
「ほにゃ?」
何か呼ばれた。
あそうそう。俺らの現在地はデパートの中にあるアクセサリーショップ。女用だけじゃなく男用のもあるんだってよ。で、俺は商品を品定め中の香苗から離れた場所で待機中。
つーかこんなところで何がしたいんだ香苗の奴?こいつ特にアクセサリーとかにこだわる奴じゃないはずなんだが。
「どしたぁ?」
「ね、ちょっと見て。」
差し出されてきたのは・・・金メッキを施された派手なダイヤ型のイヤリングに、同じダイヤの形だが全体的に黒くてシンプルなイヤリング。それが香苗の両の掌に乗っかっていた。
「これがどうした?」
「どっちがいいと思う?」
「うにゃ?」
・・・こいつイヤリングなんかするっけ?
「・・・あ、実はね・・・まぁリュウちゃんは詳しくは知らないだろうけど、カルマとケルマ、最近ホント家の中で助けてもらってるのよ。だから日頃の感謝のつもりに・・・。」
・・・・・・・・・・。
「なるへそ、ね。」
そういやぁこいつは高一の頃からこんな性格だったなぁ。一見ふざけてるが、ホントは周囲の奴の方を最優先に考えられる奴なんだよなぁこいつ。
「・・・ふむ、あいつらの好みは知らんし、両方買ったらどうだ?」
「う〜ん・・・そうしよっかな。余分にお金持ってきたし。」
「そうしろそうしろ。」
下手な鉄砲数撃ちゃ当る・・・ん?何か違うか。
「・・・・・・。」
にしても・・・
感謝、ねぇ。
・・・・・・・・・・・・・・。
「お待たせリュウちゃ〜んってあれ?どしたの?」
「・・・んにゃ、何でもねえさ。」
ま、いいか別に。過去のことだ。
〜外〜
「リュウちゃん、今日はありがとね!」
「大して何にもしとらんがな。」
歩きながら帰路に着く俺達。今香苗の手にはアクセサリーの入った袋が握られている。俺ただ両方買えば?って言っただけだべ?来た意味あったんか?
「だってリュウちゃんがいなかったら私今でも悩んでたと思うの。」
「ふ〜ん、そ。」
「だからありがと!」
「はいはい。」
・・・何かこいつがクルルに見えてきた。
「・・・ねえリュウちゃん。」
「?」
いきなり立ち止まったかと思うとしんみりした顔になったな・・・何だ?
「リュウちゃんってさぁ・・・二人のこと、どう思ってる?」
二人・・・?
「・・・あぁ、アルスとクルルのことか?」
「うん、どう思ってる?」
いや、そんな真剣な顔でどうと言われてもねぇ・・・ふむ・・・。
「家族だな。妹できたみたいだと思ってる。」
これは紛れもない事実であるっと。
「・・・それだけ?」
「ああ、それだけ。」
それ以外に何もない。
「・・・そっか・・・・・・・・・よかった♪」
「ほにょ?」
何がよかったんだ?
「今日はホントありがと!バイバイリュウちゃん!」
疑問を言う前に香苗は走り出した。
「・・・何なんだ?」
途中、香苗が満面の笑顔で振り返って手を振ったんで、まぁこの疑問はいいかと思いつつ手を振り返した。
〜帰宅〜
「ただいまー。」
「リュウくーん!」
【シュバッ!ズゴン!】
例によって例の如くクルルが飛びついてきたんで勢いを利用して巴投げしてやった。見事に玄関の扉に激突した。
・・・。
「・・・お前ホント香苗みたいだな。」
「ふみゅ〜・・・。」
頭の上に何かヒヨコみたいなの数匹回しながら(想像だけど)気絶してるクルルに言ってやった。聞こえてないだろうがな。
さて、リビング行っておやつ食うか♪
今回は香苗にスポットを。自分で書いてて香苗とクルルって似てるなぁって思った俺でした。
まぁこれはこれでいっかぁ♪